昨日秋葉原で、ミーティングの前に少しだけ時間があったので、ヨドバシカメラに寄って、CMでもおなじみのSONYのポケットサイズPCを見てきました。


経済アナリスト/木下晃伸オフィシャルブログ『テルノブログ』powered by アメブロ-ポケットスタイルPC
@秋葉原ヨドバシカメラにて


ノートPCは私も「VAIO」を使っていますし、テレビも「BRAVIA」です。


学生時代に、SONY創業者、盛田昭夫さんの「Made in Japan」を読み、感動してそれ以来ずっとSONYファンです。


でも、このポケットスタイルPCは、いただけない。こういった商品を発売しているところに、今、SONYが苦境に立たされている姿が凝縮されているように思います。


2月3日付けの日本経済新聞で、「ソニー製だからと言って十万円近いパソコンを買う時代ではない」という私のコメントが掲載されましたが、これは、まさにSONYが迷走している証拠だと思っているのです。


というのは、そもそもSONYは、米国でトランジスタラジオを出し、大きくなった会社。トランジスタラジオは、安かろう悪かろうというものでしたが、それがウケ、大ヒット。


その後、ウォークマンなど、画期的な商品を発売していったわけです。と同時に、品質を良くし、より高額な商品を作り上位顧客を攻めていったことで、日本の製造業発展モデルを作り上げていきました。


つまり、お客さまが何を欲していて、さらに、それを安価に作り儲ける、というモノづくりの会社、というのがSONYのDNAのはず。


実際、SONYの前身である東京通信工業の設立趣意書には、「真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」がうたわれています。


SONY設立趣意書


しかし、今のSONYには、こうしたDNAをあまり感じることができません。


昔のSONYであれば、台湾勢がシェア7割を誇るいわゆる「5万円PC」のニーズをいち早く察知し、真っ先に市場に投入する、ということで話題を独占していたはず。


それが、5万円PCの市場が拡大し、さらに日本勢も参入してから進出、さらには、10万円という値段設定をして高価格路線を攻める、というのは、明らかにSONYの歴史から考えると、脇道にそれていると思います。


10万円という値段設定にしなければ儲からないのでしょう。1000万台以上、シェア1位を獲得しても一向に黒字化しないテレビ事業と構図は同じです。SONYはモノづくりで稼ぐ、というDNAを忘れてしまったとしか思えません。


なぜ、SONYがこうなってしまったのか、というと、それはやはりプレイステーションが爆発的にヒットしたため。


あの成功で、ハード(プレイステーション本体)で儲けるより、ソフト(ゲーム)で儲けた方が利益が大きいし、ラクだ、ということを知ってしまった。そのゲームも、任天堂のようにマリオやポケモンといった自社コンテンツを作る訳ではなく、あくまでもコナミ等のサードパーティーからのコンテンツ提供を受けている仕組み。


ハードで儲けるというのは、モノづくりで儲ける、という意味。ハッキリ言って泥臭いものです。本来、泥臭い会社であるSONYのDNAがPSの成功で十数年に渡って失われてしまったことに、いまのSONYの苦境があるように思います。


さらに、ここから、ブラウン管が薄型になるとか、デジカメやカメラ付き携帯といった新しい商品も、実は生まれない時代がやってきます。


DVDがブルーレイになるような技術進化が起こっても、これはライフスタイルを変えるような大きな変化ではないので、SONYの規模を支える商品にはなりえません。


SONYがかつての輝きを取り戻すのは、相当先になる、と思います。取り戻せないかもしれない。それでも、私は、盛田昭夫さんや井深大さんという日本を世界の大国にまで押し上げた偉大な経営者が作ったSONYを、応援する気持ちがずっとあります。アナリストとしては別の感覚として。


期待して見ているのですが、、、。