惨めに濡れた負け犬のような玉環を見た母親は、 

 

 

「この子は変わったことばかりしてぇ!

根性がひん曲がっちょるき!

 近所の男の子をたぶらかす、玉環には、狐が憑いちょるんやろかねぇ⁈」

 

「この汚れは、死にそこないの小便女やぁー‼︎」

 

ボロボロの四女に向かって、母親と長女は玉環を馬鹿にして呆れた顔で

怒鳴りました。 

 

姉たちは、薄ら笑いを浮かべて、 

 

 

「この薄ら寒~い朝に、どっかの誰かさんと、びしょ濡れになるほど遊び惚ける玉環は、

色キチがいの変人やぁ〜!」

 

「お母さん。

玉環は、気が狂っちょるよ!」

 

長女は、これ見よがしに、玉環を叱る母親を煽り立てるように

 

玉環を、母親の前でせせら笑いながら罵倒しました。 

 

 

「仕事を増やさしてぇ!

本当に手間のかかる子やっ」

 

玉環のすることなすこと、我慢ならなくなった母親は、ついに… 

 

思案していたあることを実行するのでした。 

 

 

それは…… 

 

玉環の母親は、夫とのスレ違いの悩みや、世間体の不平不満の悩みを、なんとか良い方向に持っていこうと 

 

巷で流行っている祈祷師を家に呼ぶことにして、神頼みしてみる事にしました。 

 

 

美しい顔とスタイルをした、四姉妹の母親である女性に信じてもらい、頼られた霊能者は、機嫌の良い顔付きで、楊邸の門に入ってきて、 

出迎えた母親と挨拶を交わし 

 

家に上がると、四姉妹とも挨拶を交わしました。 

 

母親は、 

楊の家運が良くなるような助言をしてくれるようにと願い、財布をはたいて、立派なお供え物を準備万端整えてから、 

霊能者を家に招き入れたのでした。 

 

 

そんな、気合いの入った母親は、末っ子の玉環に向かって 

 

 

「あんたに憑いちょる狐を取っちゃる‼︎」

 

等と言って 

 

まだ、男も、酒の味も知らない、美少女四姉妹を並ばせて座らせました。 

 

男と女の霊能者が、御払いを始め出すと、霊的な玉環は霊能者の唱える呪文に反応して、急に 

 

 

「ワァーン」

 

と、声をあげて泣き出しました。 

 

 

「憑いちょる悪霊が暴れだしとるんや。泣きたいだけ泣きなはれ。」 

 

女の霊能者は、冷静な様子で、心配する母親と泣き出した玉環に 

アドバイスしました。 

 

 

姉たちはビックリして顔を見合わせて、長女は 

 

「フンッ。やっぱり、玉環は、先祖の因縁を背負った狐憑きだったね!」

 

顎を上げて鼻を鳴らしました。 

 

「ざまぁみろっベーダッ」 

 

姉たちは長女と目配せしながらヒソヒソと意地悪な顔つきで、憎まれ口を叩いています。 

 

呪文を唱え出した、びっこを引く足の悪い中年男と、気性の激しそうな小さい中年夫婦の霊能者の声と

後ろ姿と 

 

 

横で、陶酔したように泣いている玉環を見ている幼い姉たちは、 

プルプル身体を震わせて、笑いを堪えて面白がっています。 

 

呪文を唱え終わった女の霊能者は、容赦なく合掌している母親と 

4姉妹に向かって、呪文の杖を美女と美少女の肩に軽くあてていき、 

 

「あなたにも悪霊が憑いちょる。あなたにも…」 

 

と、霊能者が告げると、母親は 

 

「なぜ、悪霊が憑いたのですか?」

 

という原因は問わずに 

 

 

「どうしたら悪霊がとれますか?」

 

と、霊能者を信じきっている他力任せで霊能者にすがりました。 

 

 

姉たちは、悪霊が憑いてると言われた恥ずかしさと、真実が分からない苛立ちを我慢し、顔を真っ赤にしています。

 

 

しかし、長女だけは、ムッとした顔付きになり 

 

「ププッ」

 

と小笑いして、怒りで顔を真っ赤にしてしていました。 

 

 

『醜い身なりのオジサンと、ブスのオバサンが、金儲けのために 

デタラメ言うちょるんや‼︎』

 

長女の玉枝は、心の中で怒鳴りました。 

 

 

霊能者は、 

 

泣いている玉環に、もう一度近寄り、玉環の顔を覗き込みました。 

 

すると 

 

女の霊能者は、男の霊能者と顔を見合わせると、超美少女の玉環を、マジマジと見つめました。 

 

 

涙で濡れた、玉環の愛くるしい顔を再度、覗き込んだ女の霊能者の 

 

玉環を見る目は

 

まるで 

宝物

を見つけ当てたような表情に変わりました

 

 

そして 

 

驚いた様子になり、

 

ハッとした震える声で、 

 

 

「この子は、光が強いっ!」

 この子は

将来、大富大貴になる数奇な運命の子じゃ‼︎」

 

女の霊能者は、そう予言すると、夫婦の霊能者は興奮した様子になりました。 

 

 

そして、 

 

「水神様が怒っておられる。

穢れ祓いたまえ、清めたまえ。

邪気を祓いたまえ~清めたまえ~」 

 

そう告げてから 

 

 

「水を使う炊事場はどこか?」

 

母親に炊事場の水の出る場所に案内された霊能者は 

 

お清めの塩を、呪文を唱えながら撒いて穢れと邪気を祓いました。 

 

 

そして、呪文を書いた御札を、母親に渡すと、部屋の入り口に貼り付けるように指示をしました。 

 

 

母親は 

 

夫婦の霊能者に、お金とお供え物の貢ぎ物を頭を下げて渡すと、 

霊能者は上機嫌な顔になり、貢ぎ物を抱えて楊邸宅の門を出ていきました。 

 

 

その数日後

 

 

末っ子の玉環は

 

 

身内で一番に成功している叔父さんの家に引き取られることになるのでした。

 

 

 

 

 

つづく 

 

 

 

〜絶世の美女と言わせ続ける妖魔伝説〜