そう、前夫は調理師でした。
何せ近くに大学なんてない田舎だからね、高校を卒業したら働くか専門学校というのが普通。
彼のご両親も「手に職をつければ、どこでも食っていける」という考えだったし、そこで、小学生の頃から料理やお菓子作りが好きだった彼は、ごく自然に調理師の道へ進んだわけです。
その割に・・・
プライベートじゃ料理なんてめったにしません。
カップラーメンのお湯さえ面倒臭がる。
そんなもんですかねぇ。
でもね、
年に1回くらいは作ってくれる。
にしても・・・
別においしくな〜い
なんつーかね、まずくはないけど、調理師が作ったという特別なおいしさも独創性もない。そこらへんの主婦が作ったのと同じ。
しかも、メニューはいつも『煮込みハンバーグ』。
本当に・・・調理師ですか??
っていうかね、実は本人も気づいていたことだし、それゆえ、早々に調理師としての限界を感じちゃったわけですよ。
包丁の使い方には自信がある。正確にきれいに切ることができる。
そして、レシピ通りに正確に調理することができる。
でも、レシピがなくちゃ作れない。
自分で味を作れない。
独自のレシピも作れない。
これじゃ、永遠に言われた通りに作るだけの下働き調理人だ。
そこで彼は思いつきました。
「そうだ。料理だけでなくお酒を扱える調理人ってどうだろう? これなら活躍の場が広がるぞ!」
ということで、バーテンダーの資格を取るべく、お酒の勉強のために上京したところで私と知り合ったわけですが・・・
発想力・独創性がないっていうのは、料理がお酒に変わったって一緒よね。
ってか、何やっても同じよね。
しかも、バーテンダーっていうのは、カクテルを作るだけじゃダメで、接客こそ命。
完全に不得意分野じゃね?
あのね、『コワイお兄さんたちに囲まれたカラテカ矢部』的な挙動不審な男ですよ。
顔は海老蔵さんですけど、接客能力ゼロですよ。
ニコニコ笑って「そうですね」を繰り返すのは得意ですが、それだけじゃ・・・ねぇ
なんつーかね、嫌われることはないけど、「名前や顔を覚えられる」「気に入られる」「ファンがつく」ことはない。
でもまぁ、『誰でもいい存在』っていうのはある意味重宝だし、すごいことだわ。
彼と結婚したのは、彼が銀座7丁目の小さなバーで働いていたときでした。
そのバーのオーナーのお姉さんが占い師だそうで、その鑑定の結果、「入籍最適日は1月20日だって」と言われたのが12月初旬。
ま、これがプロポーズ代わりですね。
ちなみに、「結婚しよう」っていうベタなプロポーズに憧れますが、なぜか1度目の結婚も、2度目の結婚も、プロポーズってなかったのよね。なのに入籍してる私もどうかと思うけど
さて・・・
この後、前夫は諸事情が重なってバーテンダーを辞めることになります。
それにしても、前夫は有り得ないほど仕事運に恵まれない人でした。こんなに偶然って重なるもんなのね〜、と。
それはそれで、ネタになるのでその話を次回にしましょうかね。