センスとテイスト | 英語は度胸とニューヨーク流!

センスとテイスト

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前回アップしたジョブズ氏の言葉の中に「センスがない」という訳を織り込みました。

英語を読んだ人はもちろん気付いたでしょうが、
この対訳は taste です。
一般的に「味覚」として使われる言葉。
最近こそ、「アメリカンなテイストを盛り込んだ作品」
などと表現され、使用されることが多い言葉ですが、
この場合は「風味」「雰囲気」という意味ですね。
「趣味がいい」ということにはいまだに「センスがいい」という人が多いです。

ではなぜ英語では sense という単語があるのに taste を使うのか。
英英辞書でこの表現に近い説明を見てみましょう

sense :
3.
a. An intuitive or acquired perception or ability to estimate:

判断を下すための直感的、または後天的な認識や能力
a sense of diplomatic timing.(外交的な機会をつかむ直感力)
b. A capacity to appreciate or understand:
正しく評価、または理解するための才能
a keen sense of humor.(ユーモアへの鋭い才能)
c. A vague feeling or presentiment:
あいまいな感じ、予感
a sense of impending doom.(差し迫った破滅への予感)
d. Recognition or perception either through the senses or through the intellect:
五感や知性を通して得られる認識や概念
has no sense of shame.(恥っていう意識がない)

taste :
6.
A personal preference or liking:

個人的な優先順位や好み
a taste for adventure.(冒険好み)
7.
a. The faculty of discerning what is aesthetically excellent or appropriate.

何が審美的に優れているか、または適正であるかを目利きする能力
b. A manner indicative of the quality of such discernment:
卓越した質を示すような様子、表現
a room furnished with superb taste.(素晴らしい趣味でしつらえられた部屋)
8.
a. The sense of what is proper, seemly, or least likely to give offense
in a given social situation.

何が適切か、上品か、または一般の人から反感を買わないか、を感じ取る能力
b. A manner indicative of the quality of this sense.
またはこの感覚の才能を表すような流儀

通常、前についている数字は、一般的に使用され、認識される意義の頻度順になっています。
taste の第1の意味はもちろん「味」、それから「味見」、「お試し」という意味が続きます。
日本人が使う「センス」的な意味あいでは下の方。

じゃあやっぱり sense を「センスがいい」という時に使うんじゃ、と思うかもしれませんが、
こちらの第1の意味は物理的で、五感による「知覚」、「認識」です。
日本語でセンスがいい、という時、自分の印象では、その人の常識・判断力・好みというものが
その評価の中に反映されています。
これらはもちろん、その人の五感がもとになって出るものでしょうが、
その知覚能力を誉めているのではなく、
そこから引き出された結論としての行動や表現を誉めています。
それが taste です。いわば sense は taste の土台となる条件。
「キレイな字を書くわね」という代わりに「視覚バランスがよくて手指が器用ね」
とは、あまりに厳密で言いませんよね。

だから日本語訳的には、
sense = 知覚、外界からの要素の認識
taste = 好み、『いいもの』を見分ける能力

というようにシンプルに分別すると、すっきりするかもしれません。

なぜカギカッコをいいものにつけたか。それは価値観、判断が様々だから。
通常いいものとされるのは、多数の人に支持されたものを言います。
それが当人にとって本当にいいものかどうかは定かでありません。

形容詞も見ておきましょう。
sensible = 良識にかなった、実用的な、目的にかなった
tasteful = 上品な、趣味のいい、審美眼に溢れた


ちなみに sensual は性的な興奮をそそる、官能的という意味。
間違えないようにね:p

今回、この「センス」という言葉を取り上げたのは、
今朝読んだいくつかのブログの中で感じた、言葉へのセンスを思い浮かべたからです。

(good) taste, bad taste というのは英語でよく聞く言葉です。
マニュアルどおりにやればうまく行くものもあれば、足りないものもあります。
文を書くことや、言葉を話すことがこれにあたると思います。
多数の人が認知できるものかどうか、つまり一般受けするかどうかが、
結局はセンス(= taste)の良し悪しを決めます。
生まれつきの才能や、育った環境、性格、好き嫌いなどでも、表現力は変ります。
だとしたらやはり根幹となる五感をまず鋭くすることが求められるような気がします。
それが本来の「センスを磨く」という言葉の所以でしょう。

そして何より(そうするために)必要なのは、対象とする人たちの気持ちを理解し、
能力を見分け、好みや方向性を把握し、さらにはそれを一歩先んじて表現できること。
それが「センスがいい」ということなのかな、と思ってみたりしました。

じゃ、ワシはどうなのかって?
今んとこ、「一部ウケ」のセンスで満足しておりますチョキ