雑な人のドーパミン

ドーパミン(= Dopamine [dóupəmìːn])。英語ではドパミンと聞こえます。
快感に伴う分泌ホルモンで、うれしいことがあったりするとたくさん出てきます。
なんで出てくるかって言うと、これは生きるのに必要なことだから。
人間の体が自動的に行ってることはすべてこのためですよね。
危ない所を助かったり、そういう目に会わないように学習する動機や意欲は大切です。
それを起こさせてくれるのがドーパミンと言うご褒美ホルモン。
うれしかった記憶があるとますますがんばってしまう人間には、
これが出ると出ないでは成長に大きな違いが出ます。
よく子供は褒めて伸ばせ、とか、ポジティブに生きることが大事ってのも、
言ってみれば、次回のタスクをうまくやりこなすため。
「テストで100点取ったよ」「あら、偉いわね~今日はハンバーグにしちゃおかな」「わ~い」ドパッ。
「ダイエットで3kg減量成功!」「そういえばなんかキレイになったみたい」「わ~い」ドピュッ。
キラキラ、ジ~ンと、ドーパミンが脳内を駆け巡り、次回もこの気持ちを味わいたい、と記憶されます。
こうすれば楽しくなる、うれしくなる、幸せになる…
そんな気持ちがなければ、実はオトナはベッドから起きる気にもならないでしょう。
さてこんな風に体はいつドーパミンを出すか、パターンで覚えていきます。
外界の刺激がインプットされ、こまかく記録。
しかし、このインプットの時点で、あまり好ましくないパターンを入力してしまうと、どうでしょうか?
最近は「自分にご褒美」も女子の間で盛ん。
人知れず頑張ってる自分に、外界からドーパミン因子注入です。
落ち込んでるときもプレゼント。おニューのバッグでしばらくはハッピー。
うまくすればそれが元ですべてがうまく行くようになる可能性に賭けてみます。
これがうまくいかなければ、それは中毒です。
典型的な例が麻薬常習者。
ひと時の快楽で、今のつらい状況をやり過ごす。
けど落ち込む原因がなくなってないのでまた麻薬に頼ってしまいます。
このときもドーパミンはちゃんと出ますからね。
ここまでシビアな例でなくても、たくさんの例があります。
俗におっちょこちょい、と言う人がそれです。
間違いを犯しても、なんとかその場をしのいで、エヘッと笑って済ませます。
とても人間的で魅力的な人が多いと思います。
でもそうした人の中には、間違わないようにする努力を、学ばない人がいます。
あいかわらずおっちょこちょいを繰り返し、間に合うか間に合わないかの瀬戸際を切り抜けて
ホッと一息。ああよかった。ドーパミンドバ~ッ。
このパターンが長く続けば続くほど、やることなすこと考えなしで、勉強や仕事がうまくいかず、
ついには人にも迷惑をかけるようになります。
こうした人はアドレナリンとその後のドーパミンの出し方が
実は生きていくためになるどころか、だんだん本人を追い込んでいく結果になります。
追い詰められているときに出るアドレナリンと、問題をうまく処理できたドーパミン効果。
このドラマティックなパターンで癖をつけてしまった人は、同じ失敗、同じ怠惰を
自然に繰り返そうとするのです。本人はそんな意識はまったくありませんが、
結局はこれが自分で選んだ問題解決法になっています。
それで済んでれば文句なしなんですが…。
しかし、前には可愛く舌を出して済んでいたところが、それが通用しなくなる。
何とか間に合っていたのが偶然のせいで間に合わなくなる。
そこから「次回からは気をつけよう、努力しよう」となればいいんですが、
落ち込んで終わってしまう人もいます。
もっとヒドイのは人のせいや周りの状況、環境のせいにすることです。
『よく失敗は成功のもと』と言われますが、この場合、自分が失敗したという自覚がないので、
反省や学習がなくなります。それがなければ、成功への種もなくなるわけです。
でも落ち込んだからご褒美をあげていれば、脳は失敗→人のせい→慰め→ドーパミン
このパターンを覚えるかもしれません。
しかしこれは人生がうまくいかなくなる悪循環の始まりになることがあります。
どこかでスパッとこの鎖を断ち切りたいものです。
失敗したら深く落ち込み、反省し、対策を練る。
この対策がうまく行ったときこそ、ドーパミンの本来の役目=生きる力を与えることになるんでは?
最近、なんとなくやることがうまくいかない、とか周りとうまく合わない、と感じる時。
それは自分の明るい性格のせいではないでしょう。
暗いとかおとなしいせいでも必ずしもないでしょう。
ワシのやってる雑な部分にホッとする人もいるし、ムカッと来る人もいます。
でもそんな周りのリアクションよりも、自分が進みたい方向へいってるかどうかがやはり大事。
失敗を生かすというのは、失敗したように見せないことではありません。
失敗から何かを学び、そこからスタートし、しなかった時より大きな成功を収めることです。
号泣するもよし、大恥をかくもよし、人間だったら間違いや失敗は必ずあります。
前にミジメさを愛するでも触れましたが、失敗を見ない振りせず、認めて眺めてみる。
どうしてやってしまったか、自分には他に何ができたか、これからできる対策は何か?
これに正面から向き合うことで、ドーパミンはワシらの味方になると思います。
小さなことにはこだわらない、大きな目で眺めよう。
これは楽しく生きてゆくのに大事なモットー。
でもたまに、その大きな絵も事細かな色のディテイルが集まってることも思い出して。
雑なままで済むことと、やはり緻密さが大事なこと、振り分けてみるのもいいかもしれません。
