惨めさを愛する 『ハドソン川のモスコー』より | 英語は度胸とニューヨーク流!

惨めさを愛する 『ハドソン川のモスコー』より

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Learning to Love Your Misery
~惨めさを愛することを覚える

「ハドソン川のモスコー」という映画をご存知ですか?

コメディアン・俳優のロビン・ウィリアムスが主演した、1984年の映画です。
監督はあの、ポール・マザースキー監督。
ワシはこれをNYにいる時にビデオで観ました。

ある理由でソ連時代のロシアから亡命することになったサーカスの演奏家が
ニューヨークで経験するちょっとおかしくてみじめな生活。
アメリカでの夢と希望を裏切られ、ケチョンケチョンに落ちる主人公を
彼がちょっとおかしく、ちょっと物悲しく、抑え目に演じていて、
サキソフォンの音色とともに心に染みる映画でした。

その中のセリフのひとつが彼の演技と共に特に胸に残ったのですが、
先日それに関するコメントを見つけ、なるほど、と感心したので、
ここで紹介したいと思います。
(明らかに間違いと思われる箇所はいくつか訂正してあります)

In the film Moscow on the Hudson,
there is a line that may be one of the deepest philosophical insights I have heard,
the line is;
“When I was in Russia, I did not love my life but I loved my misery.
You know why? Because it was my misery. I could hold it. I could caress it.“


映画『ハドソン川のモスコー』の中には、
自分が今まで聞いた中でも哲学的に最も深いセリフがある。
「ロシアにいる頃は、自分の生活は嫌いだったが惨めさは愛していた。
なんでかわかるか?それはオレのだったからさ。抱きしめたり、撫でたり自由にできた」

Is there not something quite welcoming about the concept of misery?
I may not deserve happiness but I certainly deserve misery.
Happiness rejects many while misery welcomes all.
Happiness is fleeting and relies on
a succession of outside things and people to sustain it.
Misery is free and abundant.
It gives birth to itself and compounds thereafter.
It is the ultimate constant.
It is the only thing you can truly own and have no fear of loosing,
your misery is always truly yours, even though all share in it.

Like bitter coffee, it is an acquired taste but once you learn to love it
you will find that its a flavor much more complex than any sweet drink.
So friends, learn to enjoy your misery because nothing else is yours like it is.


惨めさのコンセプトには、何かとても受け入れやすいものがないだろうか?
幸せに値する人間ではないかもしれないが、惨めさなら当然。
幸せってのは多くの人を拒むが、惨めさはすべての人を受け入れてくれる。
幸せはあっと今に過ぎ去り、また、連続して起こる外界のいろんな条件や
そのもとになる人間にに左右されるのに比べて、惨めさは自由で、余るほどある。
それはひとりでに生まれ、そこから発展していく。究極の不変だ。
自分だけで所有できるたったひとつのもので、なくす怖れもない。
自分の惨めさはいつも真の友。それに見合う負担もすべて詰まっているとしても。

苦いコーヒーと同じように、その味には慣れが必要だけれど、
1度好きになれば、どんな甘い飲み物より複雑な味と香りを見出すもの。
だから皆さん、自分の惨めさを愛することを学んでみませんか。
他には何も、これほど自分だけのものだと思えるものはありません。


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ミザリーは「惨めな気分」「不幸な気分」どちらでも構いません。
自分の中にある、暗い部分。それを否定したりなくそうと努力するのではなく、
共に生きる。その影があって、初めて自分の人間性に深みが増す。
そう言われているような気がします。

どこか痛い痛いと言いながらも、なかなか医者に行かず、
何年も我慢しながら放っておく人がいます。
その人は否定するでしょうが、それはどこかで、長年共に生きてきたその痛みに
安らぎにも似た親近感を持っているからかもしれません。
医者に行かないのは、通ったり治療がめんどくさいだけでなく、
なんとなく親しんできた自分独自のモノに執着が出てきたからかも?

ワシもこの数年腱鞘炎を抱えていますが、これは手を使わないのが1番の治療。
休みもせず、手術にも踏み切れない自分も、このタイプかもしれません。
暗闇に目が慣れてくるような「闇順応」― そんなこともふと、頭をよぎります。


ところで、これと似た表現はすでにシェイクスピアが「お気に召すまま(As You Like It)」で
道化のタッチストーンに「誰も好まぬじゃじゃ馬だが、それでもオレの物」と言わせています。

ソ連時代はすべて国の物。
ロシア人である映画の主人公が求めたのは、身分や行動の自由より前に
自分の物だと感じられる何か、だったのかもしれません。

ロビンがこのセリフを言う時、左手のひらを上に向け、
そこに何かを乗せる仕草をし、右手でそれを撫でる演技をします。
その姿が、本当に愛おしそうで、惨めささえも愛さずにいられない、
自由への叫びを体現していたように思えます。


用語の説明

insight 智慧、教え
caress 撫でる、愛撫する
deserve ~に値する、~を当然だと思う
fleet 流れ去る、パッと消えてゆく
rely on 頼る、~次第である 
succession 連続して起こる事柄
sustain 支える、持続させる
abundant 有り余るほどの、豊富に湧き出す 
compound 形成する、混合する、度合いを増す
thereafter それ以来、そこから先
constant 不変の、一定の
an acquired 後天的に得た、免疫性の
share 取り分、分担、負担
complex 複合した、複雑な

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