英語で読むタオのプーさん第3章
第3章 Spelling Tuesday
この章を書くにあたっては、わしが顔を出す英語関係のぐるっぽを思い出して笑ってしまいました。
なんとたくさんのプーやピグレット、ラビットやイーヨ、そしてフクロウさん達がいるんだろうと。
そう今回はそのフクロウさんの話です。
賢いフクロウは勉強の神様にもたとえられ、西洋ではとても敬われている存在です。
プーの物語でもその博識振りを発揮して、困ったときのフクロウ頼みを引き受けているのですが。
ラオツィー(老子)は言います。
" The wise are not learned ; the learned are not wise. "
賢いものは学べず、学んだだけの者は賢いとはいえない。
タオの観点から言えば、知性というのは何か特定のものを分析したりするのには役立つけれども、
それより深かったり広い意味を持つものに関しては限度がある。
チュァンツェー(荘子)が言うには、
" A well-frog cannot imagine the ocean, nor can a summer insect conceive of ice.
How then can a scholar understand the Tao? He is restricted by his own learning. "
井の中の蛙、大海を知らず、夏虫が氷を知らざるが如し。
どうして学者がタオを理解できよう。自分の学問だけにとらわれているのに。
物事のすべてを細分化して整理してしまう能力の裏で、
意外にも自分の周りはだらしなかったりするタイプ。
タオや自然から直に学ぶなんてとんでもない、
すべて間接的に本から学ぶ西洋の儒教者のよう。
書くことといったらユーモアどころか、蝋人形のように乾いて味気ない文体。
それがこのフクロウさんの象徴する賢さなのです。
" By the way, Pooh, how do you spell Tuesday? "
" Spell what ? " asked Pooh.
"My dear Pooh, " said Owl, "everybody knows that it's spelled with a Two."
" Is it ? " asked Pooh.
" Of course, " said Owl, " After all, it's the second day of the week. "
" Oh, is that the way it works ? " asked Pooh.
" Al right Owl, " I said. " Then what comes after Twosday ? "
" Thirdsday. " said Owl.
" Owl, you're just confusing things. " I said.
" Then what is it ? " asked Owl.
" It's Today ! " squeaked Piglet.
" My favorite day. " said Pooh.
訳
「ところでプー、チューズデイってどうスペる?」
「スペるって何を?」プーが訊く
「おやおやプーや」フクロウが言います。「誰だってトゥーって書くくらい知ってますよ」
「ほんと?」と、プー。
「もちろん」ト、フクロウ。「何といっても週の2日目ですからね」
「あ、そういう仕組みなんだ」プーは訊きます。
「ちょっと待ってフクロウさん」作者が口を出します。「じゃあ、トゥーズデイの後は?」
「サードデイでしょう」とフクロウ。
「フクロウさん、あなたは物事を混ぜこぜにしてるよ」と作者。
「では何なんです?」とフクロウが訊くと、
「それはトゥデイ(今日)だ!」ピグレットがかん高く言いました。
「ボクの大好きな日だ」プーも言いました。
プーに出てくるフクロウさんは、こんな風にちょっとぼやっとした
教授みたいなキャラで救いがあるんですが…。
彼らはとにかく難しい言葉(Big Words)が大好き。
知識のための知識を愛し、すべてを難しく書き換える。
それを自分の中だけにしまっておいて、えらそうに見せるため以外は、
世の中のために広めようなんて気づきもしもない。
しかもその知識は、実際の経験からくる知識とは一致しないことが多いのです。
木や花にに名前をつけることに忙しくて、それを育てたりしたらすぐだめにしてしまったり。
そんな風に作者はフクロウ族をこき下ろしています。
でも賢さにあこがれるラビットはこう言います。
"you can't help respecting anybody who can spell Tuesday, even if you can't spell it right; There are days when spelling simply doesn't count. "
そして、小枝を使ってAという文字を作ったイーヨーの場合は…
The Rabbit came along. " ...I wanted to ask you, Eeyore "
" What's this that I'm looking at ? " said Eeyore, still looking at it.
" Three sticks. " said Rabbit promptly.
" You see ?" said Eeyore to Piglet. He turned to Rabbit
" I will now answer your question. " said Eeyore solemnly
.でもイーヨーはモソモソしていっこうにラチのあかない答えをします。
"An A.! " said Rabbit. " but not a very good one. I must get back...."
"He know ? You mean this A thing is a thing Rabbit knew ?"
" Yes Eeyore. He's clever. Rabbit is. " said Piglet.
"Clever !"
Aと書いた小枝を踏み潰してしまいました。
訳
「やっぱりチューズデイってスペれる人は尊敬しちゃうよ。たとえそれが少し間違ってたって。
スペルなんてどうでもいいと思う日だってあるさ」
訳
ラビットが来て言いました。「ああ、あなたに聞きたいことがあったんだ」
「わしが見てるこれは何だと思う?」下を見たままイーヨが訊きます。
「3本の棒」ラビットが即座にいいます。
「どうだい?」イーヨはピグレットにそう言って、ラビットに向かって、
「じゃあ、質問にお答えしようか」ともったいぶって言いました。
訳
「Aだよ」ラビットは一言いうと、「だけどあんまりうまくないね。さ、行かなくちゃ」
「知ってたんだ。 このAってやつはラビットでも知ってるもんなのか」
「うんイーヨー、賢いんだ、ラビットって人は」
「賢いだって!フン」
知識にあこがれる者、知識を愛する者、知識を人を見下す手段にする者。
そういった彼らの前に、知識はなくても実践する者や一喜一憂する者がいたり。
実際には、1人につきひとつの癖ではなく、こうした面すべてを誰もが多かれ少なかれ持っているもの。
自分の中のフクロウやラビットやイーヨやピグレット、そしてプー。なるべくうまく付き合っていきたいもんです。
わしは今でもたまにクレヨンしんちゃんを観るんですが、それぞれがこのプーの仲間の誰かに似ているような気がします。プーはボーちゃん、フクロウは風間くん、ラビットはねねちゃん、ピグレットはまさおくん、イーヨだけ見つかりません。一般的過ぎてアニメには向かないのかもしれませんね。そしてしんちゃんは…、
まだ出てきてない人騒がせな人気者、ティガーみたいです。 次回はこのティガーが登場します。
用語のポイント
conceive (動)思いつく (形)conceivable 思いつく限りの
restricted (形)限られた、制限された、立ち入り禁止 (動)restrict 制限する
confuse (-ing) (動)混乱させる、惑わせる (形)confused 当惑した
squeak(ed) (動)きいきい鳴く 塩ビのオモチャで押すとピィピィ言う人形などもこれ
promptly (副)すぐに、即刻 (形) prompt すばやい、即座の
solemnly (副)厳かに、もったいぶって (形) solemn 真面目ぶった、神聖な、荘厳な
表現のポイント
can't help ~ing ~しないわけにはいかない、つい~する
I can't help falling in love with you 君を好きにならずにいられない。
After all 結局、何といっても、いろいろあるけど
After all, tomorrow is another day
何はともあれ、明日はまた違う日になるんだから
There are days when~ ~な日もあるさ
There are days when the sun doesn't rise for you.
(皮肉って)まあ、あなたのために陽が昇らない日だってあるわよ
=いつもあなた中心に世界が回ってるわけじゃないから