「イヤな事」というのは、本当に仲良しだ。

ひとつが訪れると、どんどん仲間を呼び込んでくる。
それはもちろん、僕をとても憂鬱な気分にさせる。

彼らの友人でも恋人でも、知り合いですらないのに、机にかじりついてもがいている僕を気にして、いつまでも離れてくれない。

そのうち僕の周りで手をつないで、オクラホマ・ミキサーを踊り始めた。
僕の元にいるのが、本当に楽しくて仕方がないらしい。
だけど、こっちは憂鬱な事この上ない。

「早く、どこかに行ってくれないかな?」
「いやいや、僕達は君が気に入ったよ。しばらく君のそばにいさせてくれないかな?」

「悪いが僕は君達と仲良くなんてしたくないんだ。早くどこでもいいから行ってくれよ。それに、僕はフォークダンスが好きじゃないんだ。」

「そんな、ツレないことを言うもんじゃない、ブラザー。昔から言うだろう?苦労は金を出しても買えって。それに僕らはタダで君に付き合っているんだぜ。ああ、そうか。気に入らないなら曲を変えようか?ポルカかい?マイムマイムがいいかな?」

意見の相違は果てしなく続きそうなので、僕はもう説得する事を諦める。

こうなったら、腹を据えて問題をひとつひとつ解決していくしかない。
僕はひとつずつ不器用に、問題の芽を見つけては摘み取りはじめる。
彼らにダンスをやめさせるには、やり通すしかないのだ。

何時間か集中して糾った課題・問題を解いていく。気が付くと次第にダンスの輪から抜け出す連中が出てきた。彼らはお祭り好きだが、基本的に協調性はないらしい。

「ねぇ、僕は君達とは、本当に友達になんかになりたくないんだ。だけど、あの憂鬱なダンスを見ないで済むのなら、時には君が一人で訪れるくらいはいいと思っているのだけれど。」

妥協案を僕が勧めると、彼は人差し指を前に差し出して、それを横に振りながら舌打ちして言った。

「いやいや、僕達の好奇心は僕達でさえ抑えるコトができないんだ。だから僕と妥協を諮ったって無駄なんだよ。済まないけれど、みんなでまた会いに来るよ。それは明日かも知れないよ。じゃあな、ブラザー。」

そう言って、彼は一瞥をして背を向けた。

当たり前だけど、世の中にはどんな努力さえも無効化してしまい、何が何でもうまくはつきあえないものがある。しかし、僕が生きている限り、数限りなく『彼ら』は僕を訪れるのだ。

とにかく、イヤな事は放置しないことと早く忘れること。

またいつか、楽しそうに彼らが訪れるにしても・・・。