夜の散歩に出た僕を、月が訪ねてきた。
「何できみは、歩いているの?」
「気持ちのイイ、夜だからさ。」
「一人で散歩してて楽しい?」
「楽しいよ。」
「一人がスキなのかい?」
「そんな人間、いないよ。」
「70億人も、きみの同胞はいるんだぜ。」
「46億年も、きみは一人だったんだろう?」
月はムっとして、僕から離れて行った。
僕は、少し後悔した。
そんな皮肉を、僕は言うべきではなかった。
暗い夜道を一人歩く時にこそ、誰かの眼差しの暖かさを欲するモノなのだ・・・。
気がつくと、僕は草原の道を一人歩いていた。
その道は、満天の星空に向かって開け放たれたカタパルトのように、丸い月へと続いていた。