短編:ポッキーゲーム? | よりみち小部屋。(倉庫)

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『よりみち小部屋。』の作品(一部)倉庫。

動物園に行きたかったのだけれど、断念した今日。
普段行けない金融機関を回り中の待ち時間が長かったので、普段はしないガラケー様でお話ぽちぽち。
ポッキーの日らしいので、小ネタ。

勢いついでにフリー小説にしちゃうぞー。期間は11月末まで?
どうせべこるなら、この際調子に乗ってやるぜー。

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ポッキーゲーム?


「敦賀さん、ポッキーゲームしませんか?」
「え?」

最上さんからそう持ちかけられて、俺は固まる。

ポッキーゲームと言えばバラエティー番組や質の悪い打ち上げなんかで使われるあれだろう?
ポッキーの両端を2人で咥えて食べ進めて、最後は……キス。

それを歩く純情さんの最上さんから俺に提案してくるなんて、あり得ない!
でももしそれを本当に最上さんが望んでくれているなら……期待してもいいのだろうか?

「今、何て?」
ごくりと唾を飲み込みながら尋ねる俺に、最上さんはきょとんとして首を傾げる。
「ですから、ポッキーゲームです。今日はポッキーの日で、親しい人とポッキーを使ってゲームをしなきゃいけないみたいですね?」
だからちゃんと買って来たんですよポッキー!と楽しそうにポッキーの箱を差し出して笑う最上さん。
一体情報源はどこだと問いたくなる内容に俺はアタマを抱える。

「本当はモー子さんや天宮さんとすべきなのかもしれませんが……生憎2人ともロケで今日は会えなくて……」

いやいやいやいや!
それはそれである意味気なるが問題があるだろう!

内心の焦りを笑顔で包み、平静を装う。
「それは残念だったね……でも、相手が俺でもいいの?」
「はいっ!むしろこんなことに付き合って頂くのが申し訳ないくらいで……」
そう言いながら頬を染めて上目遣いでこちらを見る。これは……っ。
やばいと感じた瞬間、表情が固まる。
それを俺が気分を害したと思ったのか、最上さんはびくびくと震える小動物のような眼差し(+耳としっぽの幻が見える)でこちらを見てくる。

「あの……やっぱり……ご迷惑ですよね?」
「いや……本当に俺でいいのかな?」
ぶち切れそうな理性の紐をなんとかつなぎ止めて尋ねると、やはり頬を染めてこくりと小さく頷いた。
「敦賀さんにお相手頂けるなら……嬉しいです」

全 く ど う し て く れ よ う か こ の 娘 は !
まさか最上さんからこんな言葉が聞ける日が来るとは思わなかった。
俺は緩む口元を引き締めながら最上さんに話しかける。
「じゃあ……準備してくれる?」
「はい……」

最上さんはポッキーの箱を開けて中のビニルを開ける。
そしてポッキーを1本取りだして……
チョコがついていない端を右手で、ついている方を左手で持って胸の前で縦に構えた。
「準備OKです!さ、敦賀さんも!」
「え……?」

最上さんの行動が理解できず目を点にしていると、最上さんはポッキーを片手に持ち直し、袋を差し出す。
「ほら敦賀さんも早く用意してください!」
「え…?何で?」
「何で、ってポッキーゲームのためには必要じゃないですか!」

ポッキーゲームに必要なのは1本だけだろう?と呆然とする俺に、最上さんは無理矢理ポッキーを1本持たせる。
「ほら、敦賀さんも両方の端っこを持ってください!」
状況を理解できないまま、最上さんが言うままにポッキーを持つと……
最上さんは自分のポッキーを俺の持つポッキーに引っかけて、ちょうど2本のポッキーで十字を作る形にすると……
「えいっ!」
と両手で持った自分のポッキーを自分の方へ思い切り引っ張った。

当然のことながら……最上さんのポッキーがポキンと2つに折れる。
「あー。やっぱり負けちゃいましたー」
最上さんは半分になったポッキーを見つめた後、それをぽりぽりと食べ始める。
食べ終わったかと思うと、また新しいポッキーを取りだした。
「次は負けませんからね!」
「……最上さん、君、一体何をやってるのかな?」
「何、って。ポッキーゲームじゃないですか、敦賀さん」

小さい頃、道ばたに生えているオオバコなんかで同じ事をしましたよね。
草を引っかけて引っ張って切れた方が負け、っていうのです。
ああ、「オオバコの相撲」って私たちは呼んでましたけれど。
それと同じ事をポッキーでやるなんて私、初めて知りました!

……俺も初めて知ったよ、最上さん。
にこにこと笑いながら説明してくれる最上さんを、どこか遠い目で見つめる俺。
というか、一体誰が君にそんなおかしな知識を植え込んだんだろうね?
俺は思わず溜息をついた。

「溜息をついたってダメですからね!勝負は勝負です!さあ!あ、折れたときに落ちるともったいないので、しっかり持っておいて下さいね!」
元気いっぱい新たなポッキーを手に意気込む君に。

本当のポッキーゲームがどんなものかを教えるべきか否か、俺は1人頭を抱えた。

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きっと余計なことを吹き込んだのは社長だと思われます。
がんばれ敦賀さん。

こんなのでもお持ち帰りしてやるよ、という方がいらっしゃいましたらどうぞ!
ご一報頂けると嬉しいです-。