お菓子国のアリス  | てりぱぱろのブログ

てりぱぱろのブログ

視線のさき

その時 生まれるもの

あるいは

それにまつわる連想 

 


 

 

ファンタジー大国イギリスが生んだ

近年のベストセラーは「ハリーポッター」だが

以前読み始めた時

「これは お母さんが書いた

<安全な>ファンタジーだ」

私は そう思い

途中で本を閉じてしまった

 

まあ

途中でやめてしまったのだから

正当な判断かどうかはわからないが

 

 


 

 

 

でも

「不思議の国のアリス」は

少女の肉体こそがファンタジーという

まぎれもなく危険な物語だ

 

(たしか発刊当時

有害図書に指定されたし

 

言葉は意味を失い

既成概念はひっくり返る

こんなナンセンスで不道徳な物語は

「首をちょん切れ」 「死刑!」

ハートの女王みたいに

真剣に読んだら

いまでもそう言い出す人がいるかもしれない)

 

だいたい

危険でない物語に

なんの魅力があろうか

 



 

 

 

「不思議の国のアリス」は

もともとテムズ川の小舟のうえで

オールを握る三人の少女へ語られたお話

 

だから

物語はこんなふうに始まる


 

金色にきらめく昼さがりを

ゆるゆるのんびりとわたしたちは滑りゆく

わたしたちの櫓はどちらもぶきっちょに

小さな腕にあやつられて

小さな手がさも自信ありげに

わたしたちのさまよう先を案内して

       (柳瀬尚紀訳 ちくま文庫)

 

 




 

 

 

金色の夏の日ざしの ゆるやかな歩みのままに

  ただのんびりと ただようぼくら

オールは二本とも 小さい腕に占領されて

  水をかこうにも かけないありさま

水先案内の手も これまた小さく

  だから舟は ふらふらとただようばかり

         (脇明子訳 岩波少年文庫)

 

 



 

 

 

ときまさに 黄金の 昼さがり

 水の面ゆく 舟足は のたりのたりと

オール持つ 頼りなげな

 四本の 小さな手

加うるに 水先を 案内する

 手が二本 これも幼く

         (高橋康也訳 河出文庫)

 

 


 

 

 

ものみな金色にかがやく午下がり

ぼくらの舟ときたらのんびりもいいところ

オール二本はまだへたくそな

おさない腕にゆだねられて

水先案内人だって小さな手では

なかなか思うにまかせやしない

         (矢川澄子訳 新潮文庫)

 


 

じつに様々な翻訳がある

これは言葉の多義性豊かさ

そんな証明にも見えるが

 

私には

岩波少年文庫が馴染みやすい

 


 



 

 

 

ウサギは走りながら

「たいへんだ!どうしよう!間に合いそうもないぞ!」

とひとりごとを言っていましたが・・・

 


 


 

 

 

 

「なんだか、あたし、

世界一大きい望遠鏡みたいに伸びていってるみたいな気がする!

さよなら、あたしの足さん!」

 

 


 

 

 

 

「女の子なら、ずいぶんたくさん見たことがあるがね

そんな首をしたのなんか、

一人だっていやしなかったよ!」

 

 

 

 


 

 

 

「ワインでもどう」と、三月ウサギが元気づけるように言いました。

アリスはテーブルの上を見渡しましたが、

お茶以外のものはどこにも見えませんでした。

そこで、「ワインなんか見えないけど」と言いました

「ないもの」と、三月ウサギが言いました。

 

 

 


 

 

 

 

ところで

 

「不思議な国のアリス」

「鏡の国のアリス」

 

どっちが好き?

というのも

なかなか楽しい選択で

 

 


 

 

 

 

わたしは「鏡の国」が好きで

気難しい世界かもしれないが


 

大好きなのは

鏡の国に出てくるハンプティダンプティの

「非誕生日のプレゼント」

 

 


 

 

 

 

アリス

「誕生しない日のプレゼントって、なんのことですか?」

 

ダンプティ

「もちろん誕生日でないときのプレゼントさ」

 

 


 

 

 

 

「おまえは馬鹿だな

非誕生日のプレゼントなら

もらえるのは364日ということだ」

 



 

写真撮影は

渡辺おさむ 「Sweets Sentiment」にて

 

(これは過去の記事の一部改稿再録です)