季節は春の兆しがみえていた。


息子は毎日私を責めた。


主人には「この家から出ていけ」と言った。


私には「死ね」と毎日言った。

ある週末の夜、仕事を終えて帰宅するなり、また同じことが繰り返されていた。


主人は出ていく準備をし始めた。

私は不安になった。

このまま息子と二人にされたら、きっと死んでしまうだろうと思った。


食事もできず、ずっと正座をさせられていた。

監禁された人が洗脳されることがわかる気がした。

主人は息子の目を盗んで、私にそっと耳うちした。

「もう家を出るしかない、出よう」と。


主人は車で出ていった。

私は怖くてたまらなかった。

最後に仏壇に手を合わさせてくれと息子に言った。


仏壇に行ったふりして、部屋の窓から裸足で逃げた。

無我夢中で、真っ暗な道をひたすら走った。

後ろから追いかけられたら、、殺されるかもしれないと。

主人が途中まで迎えに来ていた。

必死で走って車に乗った。