改めまして、障がい福祉サービス「就労継続支援」を行っている「NEXT SPACE」を運営しております、寺嶋秀彰です。
▼白か、黒か
特に最近の世の中の空気として、あることに対し、何かと「白か黒か」を付けたがる印象があります。
「成功か失敗か」「正しいか間違えているか」「良いか悪いか」
多くの物事には「良い面」もあれば「良くない面」が混在していると思うのですが、何がなんでも「0か100か」ということを決めつけるということには、個人的に危うさがあると思っています。
「気持ちはわかるけど、それはダメだよね」というニュアンスの判断も最近あまり耳にすることがなく、とにかく「ダメなことをする人の気持ちは理解できない!」という言葉が多い印象があります。
そういう「白か黒か」というジャッジばかりしていると、自分も生きにくくなるんじゃないかなぁと思います。
例えば昨今、新型コロナウイルスの影響で世間が目まぐるしいスピードで変化しています。
そこで、「営業自粛」という言葉がありますが、そうは言っても判断が難しい場面が多々あるかと思います。
非常事態宣言の最中、当事業所は、通常通りの開所をしておりました。
もちろん、感染予防、感染拡大には十分に気を配って、です。
あれは世間がゴールデンウィークの頃。
当事業所の利用者の方々から、「こんなに連休があっても、家にいるだけで、逆に精神的におかしくなる!それだったら仕事がしたい!」という声があり、実際に僕自身も「そうなるリスクが高いな」と感じる利用者さんも何名かいました。
僕のいる釧路市では、「日中活動系以外の、休日(余暇)の支援がほとんど発展していない」という地域の課題もあります。
そこで、僕が出した決断は「祝日3日間のうち、2日間を開所日とする」でした。
特に何事もなくゴールデンウィークの開所を終え、間も無くのことでした。
とある同業者の人たちの中で、「あそこの事業所は、非常事態宣言が出ているにもかかわらず、ゴールデンウィークに開所をしていた、とんでもない事業所だ」ということを囁かれていることを知りました。
確かに難しい判断ではありました。「新型コロナウイルスのことだけ」を考えると、確かにそのことが正しかったかどうかはわかりません。
しかし、だからといって「5日間一人で家にいる」ということのストレスで、精神的に崩壊してしまう可能性が高い利用者さんがいたことを考えると、僕はその選択をひとえに「間違いだった」とは思いません。
気持ちはわかるんです。
「自分たちが閉めているんだから、お前も閉めろ」と言いたい気持ちは。
事業所を閉めて、利用者さんの利用がなければサービスを提供できません。
サービスを提供できなければ、事業所にお金は入ってきません。
お前のところだけ汚いぞ!的な。
しかし、僕は何も「お金のため」に事業所を開けたわけではなく、「5連休にした場合と、そのうちの2日間を開所した場合の、利用者さんの身体面と精神面へのリスク」ということを、ひたすら考え、ひたすら悩み、決断したことです。
結果的に、心身ともに、何事もなく乗り切ることができました。
幸いにも、その判断を理解してくださる方々もいましたが、やはり否定的な意見もありました。
僕たちの「悩みや葛藤」を知る由もなく、「非常事態宣言の最中に、祝日を開所日にしたあそこの事業所はとんでもない」と一定数の方々に批判されていました。
彼らからすると、僕の判断は「黒」で、「理解できない」と判断されたのです。
▼「黒」としてしまったことを、自分は2度とできなくなる
例えば、僕のその判断を「とんでもない」と「黒だ!」と批判してしまった人たちは、僕と同じ状況になっても、つまり「休みが続くと精神状態が悪化する可能性が高く、命に関わる危険性がある」という状況でも、「だったら開所しよう」という選択ができないんです。
だって、その判断を自分たちで「黒だ!」と叫んでしまったんだから。
多くの物事には、「メリット、デメリット」や「良い面、悪い面」が存在し、その状況によって「何を選択すべきか」ということを解いていかなければなりません。
僕たち支援員は、もちろん「新型コロナウイルスの感染」ということも考えなくはなりませんが、精神面を含め、様々なことを総合的に考え、判断していかなくてはいけません。
「確かにこの側面をみるとAかもしれないけれど、こういう側面を含めて考えるとBかもしれない」
ということの連続です。
いちがいに「白黒」を決めつけるには難しさがあります。
▼まとめ
例えば「この人はこういうダメな部分があるけど、こんな良いところがある」というふうに、人間にも色々なことが混在しています。
どこか一部分だけを切り取り、それを「白だ!黒だ!」と決めつけてしまうのは、どうなのかな?と思うことがあります。
物事も、「Aだ」「Bだ」というだけでなく、「AでありながらBでもある」「Aという部分もあるが、Bという面もある」というふうに、色々なことが混在していると思います。
10年前、僕が障がい支援において多大なる影響を受けた人が言っていた言葉が印象的でした。
支援の方法や考え方は色々とあるのですが、その当時、代表的だった手法や考え方として、「TEACCH」と「ABA」というものがありました。
それがどんなものなのかはここでは割愛させていただきますが、多くの支援者は「TECCHの方が優れている」「いやいや、ABAの方が有効だ」というように、「一方を支持し、一方を否定的に捉える」という傾向が強くありました。
しかし、その僕が大きく影響を受けていた師匠が
「何が良い悪いは研究者に任せて、現場ではいいとこ取りすれば良いんじゃない?と思うんだけどね」
とポロッと言った言葉が、今でも強烈に胸に残っています。
「なるほど、どちらが正しい、間違っているではなく、いいとこ取りすれば良いんだよな」と、やけにしっくりきたのを覚えています。
ちなみに、その師匠は、現在、「国立リハビリセンター」で「発達障がい推進官(だったかな?)」という強烈な肩書きでご活躍されています。
そんな風に、物事はなんでもかんでも「白か黒」だけで判断するだけではなく、「混在」を認めて「いいとこ取り」しちゃえば良いんじゃないかな?
もちろん、「いいとこ取りしてしまったがために、中途半端になってしまった」ということが起こらないとも限らないので、この話も「白か黒」ではなく、「そういうこともあるよねー」くらいで思っていただけると良いかなと思いますー!