その日、仲良しの澄夫と私は山腹の池を目指していた。何のために?

それは、甲羅が30センチを優に超える大亀を見るためだった。

真夏になると、決まって大亀は池の周りで甲羅干しをしているのだ。

二人が池に近づくとそこには先客がいた。それは年長の悪ガキどもだった。

彼らの手には綱(つな)が握られていた。

その綱の先には、首を縛られてずぶ濡れになった野良犬があえいでいた。

悪ガキたちは、その哀れな犬の頭を棒で押して何度も水中に沈めていたのだ。

すでに犬は、鳴き声もろくに出せないほど弱り果てていた。

それを見た二人は、大亀を見損なった悔しさで舌打ちをしてその場を離れた。

この時の二人に、犬に対する同情心などさらさらなかった。

彼らもまたそれまでに、猫や野良犬に石をぶつけるなどは日常茶飯事の年少の悪ガキであったから。

この頃のことを思い返すと、子供って本当に残酷な生きものだと思わざるを得ない。