陽は西に傾き、峠道には横殴りの風が吹いていた。ふと気づけば、後ろから何かが追ってくる。

振り返ると、そこには犬がいた。いや、犬ではない。それは小さな狼だった。

男は小さな道連れに語りかけた。

「送ってくれてありがとうよ。この先、わしが死んだらこの体をやるからな」

狼は方向を変え姿を消した。

それから数年後、男がなくなり山上の墓に埋葬しようと峠道に差し掛かったとき、棺が突然軽くなった。

棺の中を見ると、既に男の遺体は消え失せていた。