50代半ばになっていた私たち

あきは大病してから5年以上が経ち

ここ数年のもっぱらの気掛かりは

退院した貴子さんのことだった。

 

貴子さんがベッドで

過ごす時間が長くなると

テレビが唯一の娯楽になるからと

目に優しい大型テレビに買い換え

手元集音器を買い

 

シーツなど毎日の洗濯が大変なので

ドラム式の洗濯機に買い替え

 

掃除機、炊飯器、加湿器に至るまで

貴子さんのために

全て最新のハイグレード機種に

買い替えた。

 

 

家電量販店と付き合いのある

私たちの仕事上の知り合いに頼んで

かなり値引きしてもらったものの

80万近い買い物だった。

 

それだけのものを搬入すると

必然的に模様替えすることになり

力仕事も発生することから

牧さんと、私と夫のタクちゃんとで

駆けつけて手伝った。

 

あきのうちに行ったのは

すごい久しぶりだった。

 

あきのうちに行くときは

気を使わせては申し訳ないので

ご飯の時間は避けるようにしていたし

手土産は持っていくようにしていた。

 

あきが好きなもの

貴子さんが食べれるようなものを。

 

それでもあきは必ず

私たちが用意したもの以上のものを

出してくるのだ。

 

ランチ用のちょっといいお弁当と

あきの好きなケーキを

持っていたとすると

 

あきは、高価な日本酒とお菓子

出前でお寿司を取って

くれたこともある。

 

借りを作りたくなかった

のかもしれないし

何かをしてもらったら

これくらいのお返しは当たり前と

思っていたのかもしれない。