40代のあきは、母貴子さんが作った

借金の返済に追われていた。

 

牧さんに相談があり

いよいよ追い詰められた時は

牧さんに借金もしたようだ。

 

みやには言わないでほしい」

と言われていたようで

私が牧さんから聞いたのは、

大分後になってからだと思う。

 

あきの口からは最後まで聞かなかった。

 

あきの住む瀟洒な

デザイナーズマンションを借りるのも

ブランド物の家具も洋服も

貴子さんが借金して揃えたものだった。

 

あきの継父で貴子さんの現夫も

だいぶ歳で、リタイヤしており

病気もしているのに

貴子にしてもらうことに

慣れて借金していたことに

気がつかなかった、というより

気がつかないふりをしていた」

と自分を責めて泣いていたらしい。

 

貴子さんは、70を過ぎており

返済能力はない。

 

それからは、あきが家計を管理して

時には副業をしながら

借金を返していった。

 

全部返すのに10年くらいかかったらしい。

40代をほぼ借金返済に費やした格好だ。

 

もちろん、牧さんが貸したお金も

きちんと返済された。

利子をつけて返してきたので

利子は受け取らなかったと言っていた。

 

あきも派遣社員の身、

かなり大変だったと思うが、

意地でも自己破産せず完済した。

 

あのブランド大好きなあき

貴子さんを恨むでもなく

楽な道に走ることもなく

地道に完済したことに驚いた。

 

あきのメンツをたてて

私はずっと知らないふりをしていた。

時々、会った時には

たわいのない話をして笑い合った。

 

それでもあきは借金を抱えていること前提の

話をすることもあったから

私が知っていることは、

うすうす気がついていたとは思う。

 

やっと借金を完済してそれと同時に

長いこと派遣社員だったあき

正社員登用試験に合格!

 

50歳さあ、これからという時に

さらなる不幸があきを襲う。