“半径5km”の芸術。 | 寺岡呼人 オフィシャルブログ 「LONG GOOD-BYE」 Powered by Ameba

“半径5km”の芸術。

最近、iTunesの映画のダウンロードにすっかりはまってる。
「映画はスクリーンでみないと」と、こういう類いのものには興味なかった。
ましてや、パソコンやiPadのような画面で観るなんて!
しかし、この便利さと移動中の暇つぶしに「やめられまへん」(笑)。

そしてC・イーストウッドの「グラン・トリノ」を観た。
これはイーストウッドの遺書、遺言の作品だ。
素晴らし過ぎて、その感動で、しばらく余韻を引きずってしまった。

『ガンマン』で世に出てきて、アクションスターとして一世を風靡した男のとった最後の行動に目頭が熱くなった。
ガンマンとして人を撃ちまくってきた男が最後は丸腰で、けじめをつける。

これは、芸人として世に出てくる、パンクロッカーとして世に出てくる等々、、、スタートは何でもいい、でもそのけじめのつけ方をイーストウッドが示してくれてる気がする。


そして、この作品の行動範囲はせいぜい10km圏内だ。
西部でも、宇宙でも、雪山でもない、アメリカのごく普通の街の、ごく普通の家の、ごく普通の男の話。そして、イーストウッドが「古きアメリカ」を体現してる男で、周りはありとあらゆる人種が住みついてる。これが「現代のアメリカ」。
かといって、あからさまに人種問題を描いてる訳ではない。
あくまでも、現代のアメリカを淡々と映し出してるに過ぎない。


僕は、音楽は「半径5kmの芸術」だと思ってる。
主に歌詞の世界のことだけど、、、。
この自分の身のまわり、身の丈の範囲にすべてが詰まってると思うし、その中で描かないと、嘘っぽくなる気がするのだ。

イーストウッドもスターになって、潤沢な予算で好きな事をやってきたと思う。
でも、最後「作家」として「半径5km」を描いたように思う。
あのヒーローが、年老いてこんな世界を示してくれるなんて、、、。
アメリカの歴代のスターの中で、こんな役者はみたことない。
彼は、役者の前に「作家」なんだ。
そして、役者としてすべてを晒して僕等に見せてくれてるのだろう。

男の優しさ、孤独、格好良さ、、、。
この「グラン・トリノ」にすべて詰まってます!


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