「Anniversary For Yuming」 | 寺岡呼人 オフィシャルブログ 「LONG GOOD-BYE」 Powered by Ameba

「Anniversary For Yuming」

「Anniversary For Yuming」

コンサートのラスト、ユーミンにサプライズで出演者、ミュージシャンによる“おめでとうメッセージ”の映像を流した。
映像が終わった後、ユーミンに一言言ってもらおうとマイクを預けた。
すると、ユーミンは「みんなもまだ旅の途中でしょ?」と言った。
それは松任谷正隆さんのメッセージ「40周年おめでとう。でもまだ旅は続く、だろ?」に引っ掛けたものだと思う。
でも、その「みんなもまだ旅の途中でしょ?」という言葉に、12000人の観客はみんな勇気をもらったと思う。「明日から頑張ろう」と。

僕らはその「場所」や「時間」を提供することはできる。
でも、それを120%や150%にするのはアーティストの感性以外にない。
この、瞬時に12000人に勇気を与える事ができる事こそが、本物の「表現者」なんだと思うし、だからこそいつも一線でやってきた証なんだと思った。


今回はこちらが“ユーミンを祝う”イベント。
だから、祝われる側のユーミンを出ずっぱりにする訳にはいかない。でも観客はユーミンを見に来る。そのバランスが少し悩み所だった。
でも、結果的にはいいバランスになったと思う!
頭はユーミンのメドレー。GCバンドだけでの演奏。
僕が最初にラフに作って、その後磯貝サイモン君が微妙にテンポを調整してくれたり、Keyを変えて繋がりをよくしてくれた。

トップバッターのBase Ball Bearの二人は「Night Walker」。
ナイス選曲。僕も大好きな曲。
普段はバンドなのに、慣れない形での出演だったけど、素晴らしかった。

2番目は僕。
どうしても「何もなかったように」を歌いたかった。
音程の幅が広くて、難しかったけど、本チャンが一番うまくいったかも!

そして、薬師丸ひろ子さん。
ユーミンが提供した「Wの悲劇」、そして「卒業写真」を歌ってくれた。
僕は彼女が主演した「ねらわれた学園」の「守ってあげたい」からユーミンに入っていった世代だから、そういう意味でも感慨深かった。

そして、大貫妙子さん。
ご自身でもカバーされた「私のフランソワーズ」。
そして僕の希望で「雨の街を」を歌って頂いた。
今回はヴィジョンに歌詞を出させてもらったのだが、よく知ってるはずの曲達も、歌詞を見せることによって、更に歌詞の深さを観客に感じてもらえたと思ってる。「雨の街を」は特にそう思ってもらえたんじゃないだろうか。


そしていよいよキャラメルママの登場。
ここは、最高に格好いい演出をしたかった。
1曲目が「コバルトアワー」だったので、その冒頭に出てくるセスナの音を登場シーンに使いたかった。そこで、BGMにのせて空を飛んでる映像、そしてセスナの音が響き、アルバム「コバルトアワー」のジャケットが映し出されて、林立夫さんのドラムが鳴り響き、斉藤ノブさんもパーカッションで煽り、その中で鈴木茂さん、細野晴臣さん、松任谷正隆さんが登場し、そして最後にユーミンの登場!

リハでもずっと聴いていたけど、本番の演奏は更に凄かった。
そして、当時とは楽器も違うはずなのに、このバンドでしか出ない“グルーヴ”と“アンサンブル”は圧巻。唯一無二!
観客も、まずはこのメンバーがステージの上にいるだけで感涙モノだったのではないだろうか。更に、この演奏でこのイベントのハイライトを体感してもらったと思う。

本編ラストは出演者全員で「DESTINY」。

アンコール1曲目はライムスターが登場して、武道館をメチャメチャ盛り上げてくれ、最後にユーミンを呼び込んで「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」。
この日一番の盛り上がり。
そして、ユーミンの提案で急遽ダンサーを呼び、ユーミンも全員と一緒に踊りながら熱唱!この振り切れ方も凄い。観客もユーミンの持つキャパシティーに改めて感動したのではないだろうか?
本来なら、ライムスターを本編の中に入れたいところだけど、いきなり彼らが出てアウェーになるのもどうかと思ったのと、今回のイベントの僕の中の「裏テーマ」が「現在進行系のユーミンを見せる」だったので、アンコール1曲目にさせてもらった。

そう、この日の真のテーマは「現在進行系のユーミン」。
“芸能生活○○周年”的な、同窓会的なものではなく、ユーミンは今も新境地を開拓し続けてる、現在進行系のアーティスト。という風にしたかった。
だから、ライムスターとの共演は正に、そのテーマにピッタリで、しかも全く違和感なく踊ってる!本当に凄い。

アンコール2曲目はムッシュかまやつさん。
ライムスターとは打って変わって、ユーミンが中学の頃からつきあいのある、ムッシュとの「中央フリーウェイ」。この振り幅も凄い!

そして、いよいよフィナーレ。
出演者全員で「やさしさに包まれたなら」。
その前には、なんと宮崎駿さんからのコメント!
GCバンド、そしてキャラメルママもみんなで演奏は圧巻だった。

演奏が終わって、全員でステージの上に並んで挨拶。
そして、GCバンド以外を送り出して、一番最後に「Anniversary」。
この日だけは、この歌が「ファンとユーミン」の「Anniversary」になったと思う。ユーミンもそんな風に歌っていた気がする。
特に“青春を渡って あなたとここにいる”の場面は後ろの観客の方を向いて、語るように歌っていた。
僕は後ろから、歌ってるユーミンを目に焼き付けたくて、ずっとずっと見つめながら演奏していた。忘れがたいシーンだった。
このシーンは泡沫で、永遠には続かない。
そんな事はわかってるんだけど、ここにずっといたい。1秒でも長く、、、。
僕にとっても一生忘れられない「Anniversary」だった。

そして最後の“おめでとうメッセージ”の映像になる。
ユーミンの普段のコンサートのような、演出もできないし、リハーサルも十分にできない。ちゃんとお客さんに喜んでもらえるだろうか?そんな不安も少しあった。でもそれは間違いだった。
ユーミンという、アーティストとしてのエネルギー、その放出量がすべてを作り上げてくれた。そう、ユーミンが自分を演出したのだ。
それは、どんな環境でも関係ないということを教えてくれた。
きっとそれは、ユーミンが休みなく続けて、積み上げたものだと思う。

僕はC・イーストウッドが大好きなんだけど、彼の年表をみると本当に1年も休まず映画を作り続けてきた事に驚く。音楽よりももっとハードルが高いはず。
アクションスター的な登場から、今や芸術家の域に達した作品を作り、アカデミー賞の常連。高倉健さんの言葉じゃないけど、「最後は生き様」、なのかもしれない。

ユーミンの「生き様」がこの日の武道館の12000人に焼き付いたと思う。


ドラムの宮田さん、さすがユーミンのバンドのドラマー。それ以上に安定感ある、ドラムは少ないリハーサルでどれだけ助かったことか、ありがとうございました。

ベースの松原秀樹さん、相変わらず最高のプレイ。演奏してるこっちが盛り上がるグルーブ、ありがとうございました。

キーボード磯貝サイモン君、GCの常連になりつつ(させつつ?)あるけど、今回も譜面書き、メドレーの微調整。そして何よりメドレーの音源作りで、朝10時まで徹夜で作業してくれたね。お疲れ様!どうもありがとう!

キーボードの本間昭光さん、絶対に無理だろうと思って電話したら「絶対にやりたい!スケジュールは別にして」と(笑)、言ってくれたあの日から、この日が実現しましたね。リハーサル中も的確にアドバイスしてくれ、しかもいつも笑顔でプレイしてる姿にリラックスできました。ありがとうございました。

ギターの松原正樹さん、僕が夢中で聴いてたユーミンのレコードは、ほぼ松原さんのギターのサウンドでした。そしてリハーサルの時に弾くフレーズや音は僕や本間さんを盛り上げてくれました。やはり松原さんのギターは素晴らしい!そして、改めて唯一無二でした! ありがとうございました。

そして、武部聡志さん、ユーミンのバンドのバンマスに演奏をお願いするって、気が引けたのですが、「寺岡君がバンマスなんだから、僕は何でもするから好きにやって」と言って頂いて、どれだけ心強かったことか。
そして、案の定いっぱい弾いてもらい、難しい所は全部頼ってしまいました(笑)。
プレイもそうですが、本番ギリギリまで、細かい所をチェックし、修正していく姿は勉強になりました。ありがとうございました。

斉藤ノヴさん、ノヴさんがリハでコンガを叩いた瞬間から、世界が変わりました。ノヴさんもやはり唯一無二のパーカッショニストでした。ありがとうございました。


鈴木茂さん、リハーサルの時イヤーモニターから聞こえるギターがCDからのサンプリングかと思うぐらい、“あの”音でした。
ユーミンも「特許とったら、この音に」っていうぐらい。
「雨のステイション」のワウを踏んだ瞬間にキャラメルママの世界が変わり、何とも言えない色彩になりました。そしてスライドギターの素晴らしさ。
本当に感動ものでした。ありがとうございました。

林立夫さん、プレイするごとに叩き方が違い、そのどれもがグッとくる。
僕らの世代には、こんなプレイができるドラマーはいないと思います。
そして、サウンド。
控えめなようでいて、瞬時にアグレッシブになり、歌が盛り上がるフィルを叩き、正に曲を「構築」するプレイは芸術でした。ありがとうございました。

細野晴臣さん、今回唯一初めてお仕事するミュージシャンが細野さんで、僕はリハーサル前日からかなり緊張していました。
リハーサル当日も細野さんがくる17時まではずっとドキドキしていました。
そして、リハーサルが始まりキャラメルママの演奏が始まった瞬間、その呪縛から解放され「武道館絶対成功する!」と確信しました。
独特のグルーブ、音の乗せ方、間、どれもが感動の連続でした。
夢にみた、この日の共演は一生の想い出です。ありがとうございました。


そして松任谷正隆さん、ユーミンのすべてをプロデュースしてる松任谷さんに最初に企画書を見せにお伺いした時、さっと目を通すだけで「これは寺岡君がプロデューサーなんだから、俺は何でもやるよ。とにかく楽しもうぜ」と言ってくれ、凄い勇気をもらいました。昔から感じていたプロデュース力もそうですが、「楽しもうぜ」という器の大きさに今回も感動しました。
コンサート終了後に「もっとライブをやろうという気にさせてくれたよ」と言ってもらったことも嬉しかったです。
20数年前にプロデュースしてもらった時から、このプロデューサーとしての「空気」を追いかけて、僕も色んなプロデュースをやってきましたが、全然追いついてないって事も同時に思い知らされました(笑)。
これからも、ずっと追いかけさせてください!ありがとうございました。



時間のない中、最後の映像の編集や、準備をしてくたスタッフの皆さん、演出の林君、お疲れ様でした!最高の仕事ありがとうございました。

そしてそして、この日に集まってくれたユーミンファンの皆さん。
楽しんでもらえたでしょうか?
本当にありがとうございました。


僕も今日から現実の日々にかえる。
でも、きっと旅はまだ続く。
その旅を、誠実に続けていれば、また素敵な再会があることを信じて。