月山青春音楽祭 | 寺岡呼人 オフィシャルブログ 「LONG GOOD-BYE」 Powered by Ameba

月山青春音楽祭

「月山」を「がっさん」と読むことも知らなかった。
山形もそんなに馴染みはなかった。

そんな僕が4月から毎週のように山形に通い、山形芸術工科大の生徒と、小山薫堂さん、軽部政治さんとイベントを企画し、7ヶ月が過ぎる頃にはもうすっかり山形は馴染みの街になり、生徒への愛着もわいた。

何もなかったところから、モノを作る。
これは芸術の根幹だと思うけど、僕らは気づけば音楽を作ってきたから、そんな大仰な箏は普段思わない。

でもこの日、廃校の何もなかった体育館のステージのバックに生徒達が考案した月山青春音楽祭のマーク(手作りで紙で作った花を貼り付けてデコレーションしてる)を見たとき、今年の4月にはマークどころかタイトルも場所も何も決まってなかったのに、マーク、タイトル、アーティスト、そして、西川町という小さな町の廃校に700人のお客さん。
「これこそ芸術」だと思った。

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廃校、つまりもう命の宿ってない学校が、この日だけ命が宿り、そこに灯がともり、その学校の卒業生、先生、地元の人達、そして遠く県外から興味を持って来てくれた人達(僕のライブにもよく来てくれる人達の顔も発見!)、芸工大の生徒、薫堂さん、軽部さん、GIPのスタッフ、そして佐藤竹善さん、KANさん、ジュンスカのメンバーという、このすべてのキャストがいたからこそ、この西山小学校は一日だけ魔法がかかった夢の場所になった。

生徒達がどんな想いで、この日を迎えたのか。
思えば、親と子ぐらい離れてる僕の思いつきで、馴染みのない世代のアーティストや、アナログレコードの部屋、ディスコなど、押しつけられて、嫌々やってるのかなとも思ってた。
特に僕は前期までの担当だったので、10月からは1度しか学校に行けてなかった。だから、半分押しつけて後は逃げてしまったような罪悪感も心の何処かにあった。更にイベント前日、下見に行った時の生徒のやつれた顔(笑)!
申し訳ないという気持ちと、うしろめたさを更に感じた。
でも、「みんな大変だったけど、終わると思うと寂しいと言ってます」と生徒のリーダー小山優さんが言ってくれて、少し安心した。


最後の校内放送が終わって控え室に戻ろうとしたら、軽部さんに呼ばれて教室に入った。真っ暗な中、教室を「月山青春音楽祭」のTシャツを着た生徒達がグルッと囲んでる。「ここに座ってください」と椅子に座ると、プロジェクターからVTRが映し出された。

それは4月の初授業から、今日までの軌跡の映像、そして生徒からメッセージ、薫堂さん、軽部さんからのメッセージが、黒板やホワイトボードに書かれ、その前でそれぞれがポーズをして、こっちを見てる映像。そして、みんながこの廃校のグランドの草むしり、校内の飾り付けなどをしてる映像、そして「寺岡先生ありがとう」という文字の映像だった。

それが終わるとおもむろにギターが鳴り出した。
振り返ると、佐藤竹善さんがギターを弾いてる。そして生徒達が歌を歌い出した。後で聞いたらその直前に即席で作った歌をみんなで練習していたらしい。
「ありがとう」と「Thank you」をみんなで繰り返し歌ってくれた。

映像を流してる間も、周りから生徒達のすすり泣く声が聞こえ、映像だけでも胸がいっぱいだったのに、歌が始まったらもう堪えられなかった。


何でもない会話から学校に呼ばれ、何もないところからこんな素敵な7ヶ月が生まれた。人生は素晴らしいと思った。
一生忘れられない一日になった。


僕は「このイベントは町おこしじゃない」と言ってきた。
音楽界も色んなプロモーションがある、テレビ、ラジオ、雑誌がその主戦場だし、それはゆるぎないかもしれない。
でも、原点に戻るとエンタメはもっと地に足がついたものなんじゃないだろうか。例えばこの日来てくれた700人が全員気に入ってCDを買ってくれる、次の山形公演にも来てくれたら、どんなプロモーションよりも強力だと思う。

これからの時代、このミニマムの中からこそ、大きなマーケットに勝負できるものが生まれてくるんじゃないかと、そんな意味合いも込めたイベントだった。

その「新しい挑戦」に協力してくれたジュンスカのメンバーには本当に感謝してる(打ち上げでKANさんが「ロックの資格」をメチャ褒めてたよ)。

そして、佐藤竹善さん、KANさん。
忙しい中をぬって駆けつけてくださって、本当にありがとうございました。
新しい出会いに感謝です。

そして、GIPの菅さんの協力なしでは絶対に出来ませんでした。
菅さんの「アラバキロックフェス」のノウハウを惜しみなく、生徒に伝授して頂き、更に僕が行けない日も毎週のように山形に足を運んでくれ、生徒からのひっきりなしの電話にも快く対応してもらい、本当に感謝しています。

楽器の原田君や小谷君も、わざわざ体育館を下見にいってくれました。
最高の楽器チームです。ありがとう!
バース豊田君、アブちゃんもいつもありがとう。

そして、生徒のみんな改めてお疲れ様でした!
あのVTRを見たときに、うしろめたさは消え、途中からこの企画は僕の手を離れ、君たちのものになったんだと思いました。この経験はきっと今後の人生の宝物になると信じています。お互いこれからも頑張りましょう。

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最後に、薫堂さん、軽部さん。
こんな出会いをもらって、本当にありがとうございました。
2年前のゴールデンサークルで「規模と価値」という話を僕はしました。
価値の中から、本当の規模が生まれる。
お二人の仕事のやり方、純粋さ、精神性、こだわり、すべてが勉強になりましたし、その価値観だからこそ、規模の大きな仕事をやれて、みんなから引く手あまたなんだという事がよく分かりました。
これからもよろしくお願いいたします。


そして、最後に。
地元はもちろん、県外からお越し下さったみなさん。
みなさんがいなければ、このイベントは成立しませんでした。
イベントを楽しんでもらえたなら幸いです。

またこのイベントがある際には是非お越し下さい!
ありがとうございました。

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