ライター柳村睦子による、『独立猿人ツアー最終日』レポート
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寺岡呼人ってどんな人なんだろう。
あのGolden Circle Vol.15から2か月半。完売となった「独立猿人」ツアー・ファイナルのSHIBUYA BOXXには、GCをきっかけに訪れた人も多かった。若い男の子の姿も数多く目にした。彼らの目に寺岡呼人はどう映ったのだろう。その音楽はどう響いたのだろう。それは、たぶん、きっと…。
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彼は意外とあっさり現れた。悲鳴のような歓声まで上がったのに。そして開口一番「あけおめ~! ことよろ~!」。Twitterでライヴ初体験の人が多いことを知って、どんな時でも盛り上がるイメージをつけてほしいと注文をつけ、すかさず「素敵!」と叫んだ人には「それそれ!」、その後が続かない会場には「続けよ!!」と突っ込み、場内は爆笑。これで肩の力がふっと抜けた人も多かっただろう。
そして心弾むリズムと手拍子に乗せて♪1999年8月1日~と日付から始まる「さよならノストラダムス」や、事務所独立の挨拶を連ねた「有限会社モンキービジネス」、病名を羅列した歌詞を美しい曲に乗せた「病気になる天才」など、40代の情けない現実をありのままに歌った曲に、ちょっと驚いたと思う。
様子が変わったのは「橋」という曲から。君は誰かを裏切ったことがあるか。たとえ無意識だとしても、運命を変えてくれた人を忘れたら、それは裏切りと呼べるんじゃないか。寺岡呼人は自らの罪を告白する。ドラマチックな構成で、これでもかと叩きつける。その覚悟に会場は圧倒される。大人というのはここまでさらけ出すものなのか。
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表情豊かな語り口と、鮮やかな場面転換で、それぞれの涙腺を決壊させた「父ちゃんの鼻唄」。
アンニュイな歌に、毒のある皮肉と、熱い決意を忍ばせた「泥船」。
底知れない寺岡呼人。その音楽を完璧に再現して、時には嵐のようなセッションを展開した林久悦、林由恭、磯貝サイモンが、ただ者ではないことも伝わったはずだ。彼らと会場が飛び跳ねた「スーパースター」で寺岡が叫ぶ。
「夢を! 夢を! 諦めない曲です!」
1999年、ノストラダムスの予言が外れて、大人へと歩き出した40代は、ただ夢と守るべき人と音楽だけを乗せて、最新型2000年代のJET MOBILEへと乗り込んだ。マフラー・タオルが振られる中、「JET MOBILE 2000」で上がった歓声に、寺岡呼人を夜空のオリオン座のように見守り続けたファンが数多くいることに、気づいた人もいるだろう。
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GCの感動を再現した「ハローグッバイ」。スキマスイッチ、堂島孝平、小田和正のパートをバンドで再現した「ウタガデキタヨ」。楽しい時間の終わりが近づく。
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最後に呼ばれたのは山田ひろし。「トイレの神様」の作詞者(植村花菜と共作)であり、それが縁で『独立猿人』を練り上げた相棒である。
毎日、人身事故で電車が止まる。居場所を失った30代、40代。今の東京の現実を知る寺岡と山田はある曲を作り上げた。それが『独立猿人』の出発点となった。ホームに立つ誰かに向けて男達は歌う。死なないで家に帰ろう。
寺岡呼人ってどんな人なんだろう。
気さくで、自分をさらけ出して、毒もあって、不意に泣かせて、音楽を愛して、夢を信じている。そして、もしも君が途方に暮れた時は、そっと寄り添い「さぁ、家に帰ろう」と明日へと背中を押す男である。
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PHOTO BY タカハシアキラ