・文化史観------19世紀、シュペングラー、トインビーによって説かれた歴史観。
第一次世界大戦前まで、世界の中心はヨーロッパであり、歴史の進歩
・発展もヨーロッパから始まると信じられていたが、それらを粉砕した
のがO.シュペングラー(1880~1936)が唱えた「文化史観」です。
シュペングラーは“歴史の基礎は文化であり、文化は有機体であるから、生ま
れるとともに成長し、滅びる。文化の死滅は不可避的な運命である“と
考えたのです。
そして、かつてギリシア=ローマが没落したように、西洋文明も没落
することを予言しました。シュペングラーの歴史観は決定論(決定した未来)
であり、ニーチェとの強い繋がりがあります。
シュペングラーの影響を受けながら、独自の文化史観を打ち立てたのが
Aトインビー(1839~1975)です。
「世界史を構成する単位は、民族や国家ではなく、個々の文明であり、
誕生・成長・挫折・解体・消滅の段階を経る。
文明発生の原因は、自然環境や社会環境からの挑戦(チャレンジ)に
対する人間の応戦(レスポンス)にある。創造的少数者が大衆を導きな
がら文明を成長させてゆくが、やがて創造性を失い、支配的少数者にな
り、文明は挫折する。--------
(そこから、宗教的文化を内包した新しい文明が生まれる)
世界史の中で熟成した文明は21あったが、現存する文明はすべて3
代目であって、キリスト教文明・回教文明・ヒンズー教文明・極東文明
の4つの系譜に分かれている。そして、人類の未来は決定しておらず、
挑戦に対して、いかに応戦するか。人間の自由意思にかかっている。 」
トインビーの歴史観の特徴は、非決定論・自由意志論を主張したことと、
神の意思が歴史にある。という点です。それは、摂理史観のように決定
した未来ではなく、“人類歴史の未来は「神の国」か「闇の国」か、
その選択は人類の自由意思にかかっている“としています。
「神自身の『存在』の法である愛の法のもとで、神の自己犠牲は、人類
の前に霊的な完成という理想を据えることで、人類に挑戦している。
そして人類には、この挑戦を受け入れるか、拒否するかの完全な自由が
ある。愛の法は、人類が罪人になるか、聖者になるかを人類の自由に任せ
ている。つまり、愛の法は、人類の個人的および社会的生活を『神の国』
への前進たらしめるか、闇の国への前進たらしめるかの選択を、人類の
自由に任せているのである。」
― アーノルド.J.トインビー著『歴史の研究』より―