自分のお店を持ちたいと思っている方はたくさんおられると思いますが、具体的に何から手をつけたらいいのでしょうか?

 

たいていの場合、最初に「売りたいモノ」、商品がまずあって、そこからどうしようか迷うところだと思います。

次は「売る場所」でしょうか?ネットショップ?店舗を建てる?

 

私の妻の場合は、商品の次は「お客様づくり」でした。

焼き菓子をビジネスとしてやろう、と思った直接のきっかけは、幼稚園のママ友の方に(この方もご自身で事業をされています)お菓子を気に入っていただいて、「ぜひ事業化を」というお言葉を頂いたことでした。

 

すっかりその気になった妻は、お菓子そのものの研究を続けつつ、家族や友人に焼き菓子を試食してもらうだけでなく、産婦人科が主催している教室や子育てサロンを回り、お茶菓子として使っていただくよう「営業」していました。

当時は古い小さなオーブンが一台あったきりでしたが、かなりの数のお菓子を配っていたと思います。材料代だけでも10〜20万円ではきかなかったはずで、私は当時から応援はしていましたが、内心家計についてはヒヤヒヤしていたのも事実です。

 

小さな子(=自分の子)にも安心して食べさせられるお菓子を提供したい、ということがコンセプトの一つだったので、メインのお客様として想定していた妊娠中や子育て期のお母さんにお試しいただける場所を求めて、色々な施設や団体にアプローチしていました。

 

この時期からプレゼントやご家庭のイベント時に妻の焼き菓子を使って(正式な事業ではないので、若干のお礼をいただく形で)いただいた方で、今もお客様としてご利用いただいている方はたくさんおられます。

準備期間のうちにファンになっていただいたお客様の支えがあればこそ、開業当初の苦しい時期を乗り越えることができたのだと思います。

 

まず商品があって、次にお客様ができて、ようやくお店づくりに取りかかれる状態になりました。

 

(ここから数回は、自分の妻を賛美する記事が続きます。あしからず。)

 

こう言っちゃなんですが、妻の作る焼き菓子は美味しいのです。

 

焼き菓子といっても和・洋・中、いろんなジャンル、いろんな品目があるわけですが、あまり具体的には書きません。「洋」の焼き菓子のどれか、です。

 

私は30歳前後で結婚するまでは都内で生活していまして、その気があればそれこそこだわりの、極上な、それはそれは良い焼き菓子に触れられる環境にあったはずなのですが、よく考えてみればいわゆる焼き菓子のお店に足を運び、自分のために購入して味わう、なんていう行為をしたことはありませんでした。

 

贈り物とか、おつきあいのためにちょっといいお菓子を駅やデパートで買ったりというのはありましたけれど。

 

だって子供の頃からスナック菓子で育ってきたし。

パンといえばヤマザキパン。

セブンのシュークリームでかなり満足。

カントリーマアムは高級洋菓子。

という程度の価値観で生きてきた人間です。

せいぜいスーパーとか、コンビニで大量に陳列されているお菓子を買い食いする程度。

 

そんな私ですが、妻が主力商品にしようと考えているお菓子(まだ試作段階)を食べさせてもらった時に天地がひっくり返りました。

 

粉の銘柄や組み合わせで味や香りがこんなに違うんだ。。

バターにもこんなに風味の違いがあるんだ。。

噛み心地が少し変わるだけで全体の味わいが全く変わってしまうんだ。。

甘くはないけれど、いや、甘くないからこそ、素材同士の味がうまく調和するんだ。。

・・・などなど、それまで焼き菓子を食べても感じたことがないような感想が次から次へと湧いてきます。

 

そして「あ、これならお金出して買うわ」と納得。

 

だけでなく、会社帰りや休日に、近隣で美味しいと言われているお店のお菓子を食べ比べてみるなんてこともするようになりました。

妻の焼き菓子を基準にしてみると、それぞれのお店の違いが感じられるようになります。

こんなことは独身の時には想像もしませんでした。

 

お菓子の国とは別の星に住んでいた自分の価値観や行動にこれほど影響を与えたモノであれば、商売としてイケるのではないか。

妻の開業に賛成した理由は、これに尽きます。

 

「だって美味しいんだもん。売れるよきっと」

と、当時思いましたし、今もそう信じています。

 

 

ある日の夕食後、珍しく難しい顔をした妻が切り出してきました。

「相談があるんだけど、いい?」

「・・・いいけど、なに?」

「焼き菓子のお店を開きたいんだけど、・・どう思う?」

 

これが、全ての始まりでした。

当時、自分たち夫婦は30代半ば。

上の子(娘)は4歳、下の子(やはり娘)は1歳。

自分は会社勤めで、事務方の仕事をしていました。

 

私たちは北関東の田舎で親族の家を借りて生活しており、

そんなに余裕のある暮らしではありません(それは今も同じ)。

 

学生時代に出会った妻とは、大学卒業後しばらくのインターバルを経て再会し結婚

私はマスオさんのような感じで今の場所に移って来ました。

 

学生時代から自分探しを続けて来た妻が、ようやく何かを掴んだようでした。

 

結局、妻はお菓子屋さんを開業し、なんとか現在まで営業を続けています。

 

このブログでは、そんな個人経営のお菓子屋さんの生い立ちと日常を

「お菓子屋さんのダンナ」の目線で綴っていこうと思います。