ここ数年学力テストスコアーが不自然な上昇をしていると指摘されていたニューヨーク市が、学力テストの監査方法を強化するシステムを導入することに決めた、というニュース。


City to Toughen Auditing of School Test Scores

http://www.nytimes.com/2011/02/19/nyregion/19schools.html?_r=1&ref=education


以前にも取り上げた、ニューヨーク市、並びニューヨーク州の不自然な学力テストスコアーの伸びと、学校関係者によるテストスコアー改ざん問題(私のブログ・2010年8月4日http://ameblo.jp/terada1963/entry-10609556453.html を参照して下さい)。遂に、ニューヨーク市・州政府側が新たな監査システムの導入を決定となりました。


<監査方法強化の背景>


In at least the past two years, an unusually large number of students have obtained exactly the minimum score needed to pass state Regents exams, which are often graded by their regular teachers


少なくとも過去2年間、不自然な程の数の学生が、州の学力テストをパスする最低合格点を取得しており、その学力テストの多くは、担当教員によって採点をつけられていた


記事によると、この不自然な学力テスト結果は、2003年以前から起こっていた・・・とのこと。


各地元学校関係者としては、一人でも多くの生徒が、学力テストで合格点を取らせなければいけない・・・ということか、先生による採点後のテスト結果があまりにも不自然である、という指摘が度々されてきました。


<新たな監査方法>


今回導入された監査方法では、


auditors would look at how schools awarded course credits, graded Regents exams and tallied graduation figures in determining which schools to audit


監査役人は、監査すべき学校を決定するために、各学校がどのようにして単位を出したのか、学力テストをどのように採点したのか、卒業生徒数をどのように計算したのかをチェックする


今回は、学力テスト結果が不自然な上昇をしていたデータを示す学校・約60校の学校を選び、新たな監査方法に関する助言、アドバイスを提供することにフォーカスするとのこと。


<カンニング行為はあったのか?>


とはいえ、今回の新たな監査方法導入の最大要因は、


テストスコアーの不自然な上昇が、学校関係者によるカンニング行為によるものではないか?


という疑惑であることは間違いありません。


今回のニューヨークタイムスの記事は、(少々有り難いことに)多少のデータを掲載しているので、それを見てみると、



日米の教育産業比較論 -子供の頭脳開発の研究を通して-NY_Test

(上のグラフは代数、世界史、生物学、英語、そしてアメリカ史のテスト結果を集計したものです)


上の数値は、ニューヨークの学力テスト結果。見ての通り、65点の所に数多くの学生が集中しています。


この65点。図にあるように、これがいわゆる最低合格点。つまり、64点以下は不合格の判定となるテストなので、65点以上かどうかが最も重要な数値


on the English and history Regents exams in the past two years, students in the city’s public high schools were roughly five times as likely to score 65, the passing grade


過去2年間において、ニューヨーク市の公立学校の生徒は、合格最低点である65点を取る確立が約5倍くらい高かった


ということで、早い話、統計学上、あり得ない確立でこの65点を取る生徒が多かった、というわけです。実際、代数のテストでは、


最低合格点である65点をとった生徒・・・8451人


61,62,63、又は64点を取った生徒数・・・7145人


というわけで、明らかに違和感を感じざるを得ない程不自然な結果です。


記事にも指摘されていますが、テスト結果を分析し、その結果をグラフに表すと、正規分布(Normal Distribution)といわれるような結果になります。下記のグラフが正規分布(Normal Distribution)と呼ばれるものです。



日米の教育産業比較論 -子供の頭脳開発の研究を通して-Normal

(上のグラフは今回のテスト結果と関係なく、単にGoogleで見つけただけなので、X軸、Y軸は何の意味もありません)


専門的な話は極力避けますが、通常州規模の学力結果をグラフにすると、上のような丁度平均の所が一番高くなる(山みたいな形になる)分布をします。


リンク先の記事にある、ニューヨーク市のテスト結果のグラフは(正規分布と呼ばれる)分布に近い形ですが、最も人数が集まる部分が異様に高く(つまりそこに生徒数が異様に集中している)、統計学上不自然だ、という結果が出ています。


とはいえ、これはあくまで統計上の結果で、カンニングしたという確固たる証拠にはなりませんが・・・。


<総評>


州規模の学力テストを分析したことがある立場から言うと、やはりニューヨークのテスト結果は不自然です。


いくら学校関係者が適切にテストを採点した・・・といっても、統計学上分析すれば、65点なる点数に不自然な程多くの生徒が集中する可能性は、限りなくゼロに近いと思います。


(もちろん、実際にデータを分析してみないと分かりませんが、経験上言うと、生のデータを分析すると、違和感はもっと感じると思いますが・・・)。


いずれにせよ、今回の新たな監査方法がうまくいき、本当の学力結果が分かることを切に祈ります。