ニューヨークの学力テストの基準が低すぎる・・・という批判から、その基準を高くした結果、スコアーが大きく変動し、合格者率が大きく変化した・・・というお話し。


When 81% Passing Suddently Becomes 18%

http://www.nytimes.com/2010/08/01/education/01schools.html?_r=1&ref=education


実はここ最近ずーとこの種の記事が話題になってて、いつかブログで紹介しようって思い、遂にその時に至った、そんな記事(慌てて紹介する程の内容でもないけれど、まあ一度くらいは・・・という感じです)。


元々、ニューヨーク州の学力テストは、その基準が低すぎて、一定の合格点に達する生徒が多すぎるのでは?という懸念を州政府の教育省関係者が持っていたのですが、それでこの基準を変更したら、これまでとは大違いの学力テスト結果が発表され、(いつもながら)学校関係者は大変です。


で、その分析した学力テスト結果をグラフにしたのが、下のサイト(テスト会社のリサーチャーは、サイトにあるようなグラフを作成するのが仕事の一つで、私もサイトにあるようなグラフ作成はよくしました)。


The Achievement Gap Gets Wider

http://www.nytimes.com/imagepages/2010/08/01/education/01schoools-graphic2.html?ref=education


リンク先のサイトの下側、Percentage of students passing...のグラフでは、3年生から8年生(中学2年)まで、英語、数学ともに一定の基準をパスした割合、全部下がってます。


グラフにあるように、元々英語のテストなんて、合格者が80%を越えてましたから、データ分析の専門家の視点から言うと、あまりにも簡単なテスト、又は基準が低いテストって思ってしまいます。


サイト上側には、8年生と3年生の英語、数学の過去のPassing Score(基準を満たす、合格点)の2009年と2010年が掲載されています。


グラフを注意深く見ると、基準点を少し上げただけの感じがします・・・・・・・・・が、これ学校によっては、えらい影響が及んだみたいです。


実際、一番極端なケースでは、


At Public School 85 in the Bronx, known as the Great Expectations School, there was a literal reversal in fortune, with proficiency on the third-grade math test flipping from 81 percent to 18 percent.


上にある紹介された学校、合格点を満たした生徒・81%あったのが、18%まで落ち込んでしまいました。


他にも記事では、下がりまくった例を数多く紹介していますが、ではなぜ上のように多く下がったのか?


記事には説明されていませんが、答えは簡単。合格点すれすれの点数であった生徒が沢山いた学校は、基準が少し変わっただけで、合格者率が下がるのは当然です。


この記事では、基準を変えて下回った合格者率の話しだけに終止して、その背景を全く説明されていませんが、少し専門的に言うと、


基準を少し上げた・・・といっても、それは単に総合得点を5点や10点、単純に引き上げた・・・というわけではない


ということ。ここが、データ分析に携わる人と、それ以外の人の発想、又はデータの見方の違いです。


記事にもあるように、学校関係者の中には、「基準が少し上がっただけで、なぜこんなにも合格者率が下がるんだ?」とクレームのような意見がありますが、その訳は総合得点を単に上げた、と勘違いしているからです。


何度かこのブログでお伝えしているように、学力テストのデータ分析に携わるPsychometricianなる専門家は、データを細かく分析し、極力不公平のないように、データをいじって公表します。


言い換えれば、基準点を上乗せするのであれば、その上乗せした結果も、全ての生徒にとって公平な上乗せでなくてはなりません。


実際、リンク先に掲載されている4年生&8年生も、


英語のテスト

4年生・・・650→668点(18点アップ)、8年生・・・650→658点(8点アップ)


数学のテスト

4年生・・・650→676点(26点アップ)、8年生・・・650→673点(23点アップ)


つまり、上乗せ点もバラバラ。公表された結果を見ると、2009年は全て650点で、ニューヨーク州は、合格基準を650点に共通して設定していた事が分かります


しかし、それをいじって合格点が異なってしまったのは、その不公平をなくす、専門家による数値の"いじくり”があったため。


650点のような基準となる点数をCutting Scoreと以前お伝えしましたが、このCutting Scoreを分析して、不公平のないようにはじき出すのって結構手間暇かかります(**テスト会社で働き始めた一年目、私は携わって頭ひねりつぶしました・・・)。


というわけで、合格点をいじったため、ニューヨーク州内の学校は、上級クラスにいけるはずたった生徒がいけなくなって、保護者から問い合わせが殺到しているやら、トップランクだったチャータースクールの合格率100%が56%に急落し、学校の評価に影響が・・・やら、学校関係者は、新年度が始まる9月までに大仕事が舞い込んだ感じだと思います。


いずれにせよ、こういったテストスコアーのデータ分析作業、又は数値変更作業は今後まだまだ出てくるだろう・・・、それが専門家である私の予想ですが、まあ専門家には興味深いが、それ以外にとっては厄介なお話しですね、これ・・・。