同じ組織の中で、一方の部署は残業が続き、別の部署には仕事が落ち着く時期があるなんていうのは、よくあること。
所属という境界が、仕事量の偏りは当然出てくるもの。
和歌山市は2026年8月から、職員が所属部署以外の仕事を手伝う「庁内副業」を制度化するのだそうで、外部企業で働く一般的な副業ではなく、市役所内で繁忙部署と参加希望者を結び付ける仕組みのようで、名称自体は「副業」なのですが、中心にあるのは収入源を増やす話ではなく、部署ごとに分断されていた勤務時間や能力を、市役所全体でどう使うかという効率化の話にもなっています。
なんでも、和歌山市では2026年4~6月、月60時間以上の時間外勤務をした職員が17人もいたのだそうで、同じ期間に、所属職員の平均残業時間が月40時間を超えた部署もあるのだとか。
繁忙期や突発的な業務は、年度を通じて均等には発生することはありませんし、仕事が集中する部署へ常に人員を多く配置すれば、落ち着いた時期には余剰が出てしまいます。
しかし、反対に平時の業務量だけで配置すれば、繁忙期に残業が膨らんでしまう。
庁内副業では、人手が必要な部署が応援業務を募集し、それに対し経験や技能を生かしたい職員が応募するというもので、対象は管理職を除く正規職員と再任用職員で、副業を実施する月の時間外勤務が45時間を超えないことが条件となっているようです。
実施時間は定時後のほか、通常の勤務時間の20%以内も想定されているようで、単に残業できる人を探すのではなく、所属部署の業務と調整しながら人手を移す設計となっているのがいいですね。
この制度の面白さは、余っている「時間」だけでなく、埋もれている「能力」も移せる点にあり、資料作成、データ処理、イベント運営など、特定の技能を持つ職員が必ずしもその技能を使う部署に所属しているとは限りませんし、他部署の仕事へ参加できれば、繁忙部署は人手を得られ、本人は新しい経験を積めるという、かなりプラス材料の多い制度ですよね。
ただし、名称だけが副業になり、元の仕事へ応援業務が上乗せされるなら、負担の偏りは解消しませんし、参加者の所属部署が実際に仕事を減らせるか、応援先で担当範囲を明確にできるかが重要になってきそう。
勤務時間の20%を他部署へ振り向けるなら、その時間に本人が担っていた仕事を誰が引き受けるのかも決めなければなりませんし、「意欲のある人が空いた時間に助ける」という善意だけへ依存すると、動ける人へ仕事が集まる別の偏りを生んでしまいそう。
庁内副業の成果は、参加人数だけでは判断しにくいですし、応援を受けた部署の残業が減ったか、参加者の総労働時間が増えていないか、翌年度以降も繰り返せる業務になったかを振り返って見る必要がありますね。
さらに、毎年同じ部署が応援を募集するなら、一時的な繁忙ではなく恒常的な人員不足である可能性もあり、その場合は副業で補い続けるより、定員や業務手順を見直すべきことに繋がりそうですね。
和歌山市の試みが示すのは、忙しい職員へ努力を求めるだけでは残業問題を解けないということで、組織内に余力があっても、部署を越えて動かせなければ存在しないのと同じになります。
直すべきなのは個人の働き方だけでなく、仕事と人を結び付ける境界なのかもしれません。


