レトロな本 | 晴れ時々ぼやき

レトロな本

この頃レトロな本にハマっています。大体今読んでいるのは昭和50~60年代の本が中心なんですが、その中でも一番印象に残った本を紹介しようと思います。

まず、その本の題名は「生命かがやく日のために」で、「ルポタージュ 日本の幸福」というシリーズの一部なんですね。昭和60年に発行されたこともあって、ブックオフでは100円で売ってたんですが、値段の割りに内容は濃かったですね。

っと、その肝心の内容なんですが、ざっと要約すると「自分の子供に障害児が生まれて人生観が激変した」という内容なんですよ。ルポタージュなんで、取材側とそれに答える側の対話があるんですが、大体プラスとマイナスの意見が3:7ぐらいですね。まあ、私も含めて大抵の人はマイナス側の考えを持っているとは思うんですが、プラス側の意見もなかなか説得力があるんですよね。

例えば、「ダウン症の息子は物欲とか、邪悪な考え、余分な知識を持っていない分、人間が本来持っている純真無垢な心を持っています。息子を見てると尽きることの無い物欲の深さとか、人生に対する傲慢さがストーンと消えていくんですよね。それにつれて世の中を見る目が変わりまして、そういう意味では、彼は人間本来の幸せを考えさせてくれるモデル人間だと言えるわけです。」

こういう考えを知って、私自身も非常に考えさせられました。今までは障害児といえば、「欠陥商品」だとか「劣等人種」などと、酷い言葉で差別していた私なんですが、この本を読んで少しは考え方が変わったように思います。

でもこんな風に偽善者ぶったって結局はダメなんですけどね。この障害者の親の気持ちは、実際自分がその立場にならない限り、絶対分かりませんし、いくら建前でキレイ事を言ったって説得力がないんですよ。

実際マイナス論を唱える親の中には「新聞記者は第三者だから、所詮は傍観者なんだよ。アンタたちのやっているのは、はたの者のお節介なんだよ。」と言っている人もいますし、失意の余り自殺してしまった人もいるぐらいです(この人は東大法学部卒のエリート銀行員で支店長。順風満帆だった人生が一瞬にして暗転したらしいです)

なんかこの生々しい現実を見ると、軽々しい善意なんて全く無力になってしまうことが窺えます。でも、解決するのは無理でも、こうした現実を知るだけマシですよね。

それにしても、なかなか内容の濃い本でした。「古臭い本は時代とマッチしていないから、あんま価値がない」と思っていた私の偏見を見事に打ち砕いてくれましたし、食わず嫌いは損をするということを痛感させてくれましたもん。宜しければ、皆さんも是非、ご一読あれ。

斎藤 茂男
生命(イノチ)かがやく日のために―ルポルタージュ 日本の幸福