結婚してまだ間もない頃、なんの話のはずみだったかモラ夫は言いました。
「オレ、人をコントロールする能力があるんだ。人に、『おまえはこうしたほうがいいよ』と言うと、そいつは大抵本当にそうするんだ。」
今こうやって書いても、それがどうして私にそのような印象を与えたのか、リアルに感じることはできませんが、私は怖くなってぞっとしました。
実は私は、モラ夫と付き合っているときも、モラ夫には怖いような悪魔的な魅力があるなあと思っていたのですが、これはそれと同じような感覚を私に与えながらも、もっと本当に怖かったのでした。
今思えば、それこそがモラ夫の魔法にかかっていたということなのですけどね。
まあとにかく、そのときの言葉を続けますね。
「他人をコントロールするなんてよくない、というヤツがいるけど、そいつは自分ができないからそう言っているだけだね。他人をコントロールすることほど面白いことはないよ。できるなら本当は誰だって絶対にやりたいはずだ。」
興奮して声が上ずっていました。
そこに魅力なんて感じませんでした。ただ怖かったです。
私は人をコントロールなんて、本当にしたくないけどな、と思いましたが、その場では言えませんでした。
でも、日をあらためて私は言いました。その頃はまだ、モラ夫にものを言えなくはなかったのです。
「この前、誰だって人をコントロールしたいはずだって言ってたけどさ、それは違うと思うな。少なくとも私は、本当に人をコントロールなんてしたくないよ」
モラ夫は黙っていました。
そしてそれきり、この手のことは2度と口にしていません。
私は思うのですが、モラ夫はきっと、このことは私にとって非常に重要なことだということを、察知したのに違いありません。これ以上そんなことを言ったらまずいのだと感じたのでしょう。
私は、モラ夫は実は自分に対して抑制のきいた人だと思っています。いけないと思ってもついついやってしまう、ということはなく、本当にまずいと察知したら、それきり2度とやらないということができる人だと思います。
なので、2度と口にはしませんが、人を支配するという考え方は彼のとても本質的な傾向なので、中身は変わっていないと感じています。