The innocent fruit

The innocent fruit

ナマモノ。百合NGの方は回れ右してください。そのほかにも擬男化置いてます。
387メイン、時々3836。他CPも気が向いたらぼちぼち。

百合垢ありますのでよかったら宜しくお願いします(小ネタなど)
@s_teppen

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※擬男化あり(彩、愛菜)

☆asamiyaさんリクエスト



--Sayaka side--


「ただいま~」
「おかえり、もうちょっとでできるから着替えて待っててな」




玄関のドアを開けると、電気がついていていい匂いがする。

俺はそんな金曜日が大好きだ。




金曜日は次の日がお休みやから、って俺は山田家に帰ることにしてる。本当は俺の家の予定やってんけど、調味料が無い!って山田が騒いだからルート変更。

でも"ただいま""おかえり"の何てことないやり取りが、こんなにも心をあっためてくれるなんて思ってもいなかった。



今日の夜ご飯は何やろ。この匂いからして和食やな。

今まで食に興味はなかったけど、こうして山田と食べるようになってからは楽しみでしゃーない。





ワクワクしながらソファーに腰掛けてると、テレビの下に真っ白い紙を見つけた。
もともと汚い山田の部屋やけど最近は綺麗にしてて。でも散らかってる部屋であっても、こんなに不自然に1枚だけ置いてあるものは見たことがない。



「…っ」


「あ、」
「ん、ごめん勝手に見て」
「こ、これは何でもないから、」

俺が紙だと思って手に取ったものは、2年前に撮られた写真で。
その写真には、幸せそうに笑う山田と愛菜の姿が映っていた。







俺達が付き合ったのは、8ヶ月前のこと。

俺が好きやった山田は、もともと彼氏持ちで。そんな俺にチャンスが回ってきたのは1年前の、突然の山田と愛菜の別れやった。
人生でこんなに必死になったのって、これが最初で最後かもしれへん。

どうにでもなれって思いで口から出した、
『俺なら山田にそんな思いさせへん』なんていうくっさい台詞に、山田は控えめに頷いてくれた。







嫉妬ってわけじゃない。
どこかで愛菜に勝てないことくらい分かってた。

けど、なんかなぁ。
改めて現実を突き出されると、結構クるなぁ。


わかっていたはずやのに、俺はまだ山田の1番になりたいと思い続けてるんや。



「彩、ごめん。やっぱりこれ捨てるな?」
「なんで謝んの?てか捨てる必要なくね」
「これで彩を不安にさせるくらいなら捨てた方が「もう十分不安やし不安とか通り越してるから」
「え?」
「はぁ…なんもない、トイレ」



謝られても困る。
山田は悪いことはしていないし、元はといえば勝手に見た俺が悪いんやし。

でもこれ以上山田の顔を見てると八つ当たりしてしまいそうだ。



ふぅ。これは俺が悪いんやから落ち着かなあかん。



「スッキリした!
よし、飯食べよ!俺お腹空いた!今日のご飯何?」
「…煮物と魚」
「うぉー!めっちゃうまそ!これ持ってくで~」



いつもは食卓に出てくるのが楽しみで、絶対に食事の献立を聞いたりしなかったけど。今回ばかりはしゃーない。このままでは会話自体が無くなってしまう。


「よし、いただきます!」
「…いただきます」



こうしてどうにか空元気でやってたものの、会話はやっぱり続かない。


「今日めっちゃいい天気やったなぁ!」
「…うん」
「秋晴れって言うん、あれ。夕陽もめっちゃ綺麗やったしな」
「………」

「今日は何してたん?」
「…仕事」
「そうやもんなぁ、大変そうやもんな」



山田の方から話を振ってくれることはやっぱり無い。

それにしても、天気の会話するなんて俺は会社の上司か。





その後は無言のまま食事を終えた。
やっぱりいろんなことを考えながら食べた夜ご飯は、味が全然わからんかった。

「…彩、お茶」


ソファーに座ってお笑い番組を見る俺に、いつも通り麦茶を差し出してくれた山田。
隣に座った山田にはっとして、会話の内容を探す。


「お、さんきゅ。山田ー、この芸人さんめっちゃおもろい」


気まづくならないように、必死に話しかける。それでも山田から返事はない。
あぁどうしよう、と次の会話を探しているところで、テレビの画面が暗くなった。



「おい、なんで消すねん」
「…彩この前この芸人さんおもんないって言うてた」
「…そうやった?」
「…さっきから彩おかしい。言いたいことあるならちゃんと言ってや、彩の考えてること、全然わからへ、んっ…ぐすっ」




そんな風に言われたら、逃げるわけにはいかない。



この8ヶ月間で俺は山田と付き合って変わったこと。
でもまだ半信半疑やったこと。
困らせてると思って遠慮してたこと。
山田を今もこれからも大切にしたいと思ってること。




それを話したら、山田は顔をぐっしゃぐしゃにしてブッサイクな顔で泣いていた。

「ごめん、そんな泣くと思ってなかった」
「ばか、あほ」
「そうやな、とんだ山田バカやな」
「ほんっまにあほ。あたし、愛菜への未練が残ったまんま彩と付き合えるような軽い女ちゃうもん…」
「そうやな、俺が好きな女はそういうことせえへんもんな」



俺の胸に顔を押し付けて泣いてる山田の顔を上げると、もう涙は止まっていた。

「あはは、ブッサイクや」
「嫌?」
「んーん、めっちゃ好き」



たまには『好き』って言葉にするのもええなぁ。
いや、今度はもっと甘くてくっさい愛の言葉を囁いてやろう。

胸のうちでそんな企みをしながら、上目遣いの彼女の目尻に唇を合わせた。








《あとがき》
リクエストありがとうございます!
さや♂ななの社会人パロ+過去はあいなな設定、とのリクエストでした!

長くなってしまいごめんなさい!
まだリクエストは募集していますので、よろしくお願いします。