二人がいるときは少し元気だった。

二人が帰ると、またしんどいばかり。


いつの間にか左手にナースコールを、右手に痛み止めのスイッチを握らせられていた。

痛みは思ったほどではないように思える。

しかし根源的なところで、と手も足を動かせる状況でないことだけがわかる。なぜだろう。

ずきんとくるとスイッチを押した。夜中の12時まで10回くらい押したか…。


ナースコールで呼んで膀胱が苦しいというと担当ナースが導尿管を動かす。膀胱がつつかれ実にいやな感じ。

「出ました、出てますよ」というとやっと少し楽になる感じがする。それを繰り返しているうちにだんだん膀胱の切迫した膨満感はなくなってきた。

しかし、この間欠的に来る膨満感のたびに

「おしっこしたい!」とナースコール押して訴えねばならない。

するとナースが導尿管を動かして「出ました、出てます」

「どのくらい出ました?」

「180ccです」

これの繰り返し…。


ボケた頭で考えた。昔導尿管入れられていた時。こんな毎回ナースに動かしてもらわなかったよな?? 入れっぱなしで勝手に出るもんじゃなかったっけ??

「毎回、こうして導尿してもらうのですか?」

「そうですよ、そうしないとなかなかうまく出ないときがあるんです」

(じゃなくて、これからもそうなのかって、聞きたいの)

「部屋も戻ってからも、そうするのですか?」

「いつでも呼んでいいですよ」

(じゃなくって!…)

全然疑問が解けない、のであった。


むかむか感はずっと。そして吐き気は間欠的に劇的に来る。これが本当にきつい。

「うゲッ!うゲッ!」いいながら3回胃液をもどす。涙がこぼれる。

「この気持ち悪さ何とかなりませんか?」

「もう少し様子見ましょう」ガーゼで口の周りを拭きながらナースはこういう。

若い担当ナースだ、22歳くらい。

美人で、美しい瞳。鼻筋も整っている。

しかし、言葉にもまなざしにも「愛」がない。優しさ、思いやり感が感じられないのだ。作業なのだ。まるで何か物体を見ているようだ。彼女にとって私は、患者という物体か。

昔、わたしがそれなりに想いを寄せていた女性が、実は何も私に興味がないということがわかる時のまなざしに似ている。


彼女若葉マークが付いている。新人か。大丈夫か?


しかし、彼女は仕事できる。新人のレベルではないな。

うちの社員に比べて、はるかに上なのはわかるのだ。この子が経験積むとすごい看護師になるのだろうということがその後の動きなどを見ていて分かった。



吐き終わってぜいぜいしながら上目づかいにモニターを覗くと、血圧が180から190、脈拍が126を売っている。

落ち着いてくると血圧146の86、脈拍86に。


むかむか感は変わらず、吐き気は12時までに都合三回来た。

担当看護師と上司看護師が相談し麻薬科の先生の判断で一定量が流されている痛み止め(麻薬)の流れを止めることになったのが夜半の12時。後はスイッチだけで対応してくれという話だ。なるほどやっと仕組みがわかった。このスイッチの麻薬の痛み止めは一定量が常に流れ痛みを制御している、さらに本人もスイッチでプラス量出ことができるという優れたシステムなのだ。この麻薬聞く代わり副作用がある。それがこの吐き気らしい。


2時ごろむかむか感はやや軽減。結果的にはもう吐くまでにはいかなくなった。

しかし寝れない。膨満感とむかむかと痛みとでまんじりともできないのである。

脈はほぼ100から104.血圧は145から150をキープ。


やっと朝。

担当ナースが歯磨きを持ってくるので左手でやっと。

「麻薬の痛み止めの使い量、多いほうですか?」と聞くが、

「人それぞれですから」と要領を得ない。

私は多すぎないかと気にしてるんだ。吐き気が止まらないのは、押しすぎたのじゃないかって、ね。

またむかむかしてくる。

しんどい。

このままじゃ9時の免疫剤吐いてしまいそうだ。

そう訴えると、ベテラン看護師が点滴の痛み止めに変えてくれる。もうスイッチ押すな、と。しかし、朝から押してないんだがなー。


9時の免疫剤死に物狂いで飲む。油汗が出る感じ。20分我慢、30分我慢。これで一安心。50分過ぎた。もう大丈夫。

部屋への移送が10時45分となった。

10時20分ごろからまたガチャガチャと点滴のコードのセリとかが始まる、と同時に吐き気。10時30分すぎに吐くが、あとはぬれタオル渡せるだけでドンドン片づけ。患者の体調なんて無視で作業は進む。これはこれでいいのだろう。

部屋のベットに移され、一気に移送されるに任せるばかりだった。