カンパイ・ソング 11/4 アンコール!翔 | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



「翔ちゃん、眠かったらホテル帰ってもいいよ?

 俺、一人でも全然平気だよ?」

竿をチョイチョイ動かしながら、智が困った顔で笑う。

ホテルの近くの岩場は、少し寒いけど、朝の陽ざしが気持ちいい。

「いや、大丈夫。」

俺も智に倣って竿をチョイと動かす。

そんな俺を心配そうに見ながら、智が竿をグイッとやる。

せっかくの二人っきりの旅行なのに、俺はなんで智にあんな顔させてんだ!

はぁと溜め息と同時に睡魔が襲ってくる。

グワンと頭が揺れ、ハッとして小刻みに顔を振る。

そう、俺は昨日、一睡もできなかった。

いつ言う?

今か、もう少し様子を見るか?

メシの最中に言うのもな。

男同士でもムードって大事じゃね?

なんて思っていたら、夕飯を食べ終え、シャワーを浴びて、

お互いベッドの上でスマホを弄っていた。

全くタイミングがわからない。

こんな家にいるのと変わらないダラダラした雰囲気で、どう言えばいいって言うんだよ!

と思ったら、隣から智の寝息が聞こえて来た。

苦節10年。

ずっと固い鍵を掛け、誰にも知られず大事に大事にしてきた俺の気持ちに終止符を打つ!

その覚悟で来たのに。

気持ち良さげな寝息を聞きながら、俺も目をつぶってみたけど……。

瞼に浮かぶのは柔らかい寝息を吐く智の唇だとか、

無防備に腕を上げて寝る智の白い二の腕だとか……。

シーツの音がする度に隣を見ると、ふしだらなくらい足を広げた智とか、

筋肉質なふくらはぎを掻く智の指だとか、捲れ上がったTシャツから覗く腹筋だとか。

見慣れているはずなのに、二人っきりでホテルだと思うと、気になって寝られない。

子供の頃は一緒の部屋で寝ていた。

でも、智が中学校に上がる頃、別々の部屋になって以来、

智の寝姿をこんなに間近で見ることはなくなった。

こっそり……いや、正確にはこっそりではなく、用事があって……、

もとい、用事を作って智の部屋に入って行ったことはあるけど、

見ちゃいけないような気がしてすぐに部屋から出て行った。

兄の部屋に行って寝姿を眺めるなんて変態かストーカー!

もちろん、智のことを兄だなんて思ったことはない。

初めて保育園で会った時からずっと変わらない。

戸籍上は兄弟になったとしても、この気持ちは家族に対するものとは違う。

そう、大事に大事に宝箱にしまって、鍵を掛けてきたんだから!

でもそれも限界。

宝箱の中だって、いっぱいに膨れ上がったら鍵だって壊れる。

そんなこと、小学生の時に水蒸気の実験で経験済み。

火災の時、水蒸気爆発の方が怖いって、専門家だって言ってる。

なのにこの歳になるまで気づかなかった俺は、本当にバカ。

もう、爆発寸前でどうにかなりそうで!

寝ている智に……キスして気付くなんて!

しかもリビングで!

そんな危ないこと、俺の性格上あり得ないのに!

危うくオヤジにバレそうになって。

いや、きっとバレてた。

オヤジは俺の気持ちに気付いてた。

そのオヤジが俺に与えてくれた大チャンス!

オヤジは俺の背中を押してくれた。

その優しさを、俺は絶対無碍(むげ)にはしない!

例え玉砕したってかまうもんか!

いや、玉砕なんてしたくない。

したくないけど……。

チラッと智を見ると、口が尖ってる。

真剣に、何かに集中してる時の智の顔。

竿の先がピクピクと動いてる。

「翔ちゃん、食った!」

「お、おぅ!」

俺もなぜか緊張して竿の先に集中する。

智は……俺のことは嫌いじゃないと思う。

どちらかと言えば好きなんじゃないかとも思う。

でもそれがどういう感情なのかは掴めてない。

俺らは男同士で兄弟で。

いろいろ言い訳できる素材がたくさんあるから。

智がリールを巻いていく。

波の間に黒い魚影が見え隠れする。

「お、いたっ!」

「翔ちゃん、タモ!タモ取って!」

たも?……ああ、タモ!

俺は智が用意した網を手に智の近くで待機する。

「あ~、元気だけど、小さいか。」

智が糸の先についた魚を揺らして自分の方へ寄せる。

元気に水しぶきを上げる姿はまだ小さい。

「これ、なんて魚?」

「ははは、翔ちゃんだって食べるじゃん、アジ!」

智は針から魚を取ると、そっと海に投げる。

「え?いいの?」

「だってまだ小さいし。大きくなったらまた釣ってやる!」

智は笑いながら、エサを針に着ける。

「翔ちゃんの、エサ付いてる?」

「あ、どうだろ?」

急いでリールを巻いて、針を見ると、キレイになくなってる。

「貸して。」

智が俺の針にもエサを付けてくれる。

ほらね?

智は優しい。

小さな魚にも俺にも。

たぶん、友達にも先生にもオヤジにも優しい。

誰にでも優しい智。

だから掴めない智の気持ち。

ねぇ?

俺に優しいのはなんで?

その優しさは他の人と同じ?

俺が弟だから優しいの?

違うよね?

ねぇ、俺のこと好き?

答えてよ、智!

頭の中の自分の言葉に顔が熱くなってくる。

想像しただけでこれじゃ……。

オヤジのくれたチャンス、本当にものにできるのか!?