いつか秒針のあう頃 ⑨ | TRIP 嵐 妄想小説

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嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



「上がれよ。」

玄関で立ち尽くす翔君にそう言って、部屋の明りを点ける。

翔君は何か考えるようにうつむいて靴を脱ぐ。

揺れる前髪越しの翔君は、付き合ってた頃と変わらない。

違うのは上げた時の顔。

嬉しそうににっこり笑って顔を上げてた翔君が、今は真剣な表情で俺を見る。

「何か飲む?」

「いや、いい。」

「じゃ、コーヒーでいいか。」

ポットに水を入れ、お湯を沸かす。

棚のインスタントを少し振ってみる。

人が来た時にしか使わないけど、ダメにはなってないだろ。

あの頃使ってたカップ。

一人暮らしを始めた時に、人が来たら使えって、

母ちゃんに押し付けられた5色セットのカップ。

翔君は決まって赤を使ってた。

俺は青。

二つ並べてコーヒーを淹れてると、何かがジワッと溢れてくる。

カップの中じゃなく、俺の中で。

キッチンカウンターから翔君を見ると、翔君はこっちを見ずに、じっとテレビを見つめてる。

点いてないテレビを。

ポットはすぐにお湯になり、コーヒーを持って翔君のいるリビングに向かう。

テーブルの前、ソファーを背もたれにする翔君から、少し離れてラグの上に胡坐をかく。

「はい。」

赤い方を翔君の前に置くと、今度はそれをじっと見つめる翔君。

「何も変わってないんだね。」

そう言いながらカップを手にする翔君が、やっと俺を見る。

ああ、そうだね。

俺と一緒で何も変わってない。

付き合ってる頃買ったカーテンも、少し大きくしたテレビも。

そうそう買い替えるものでもないしな。

「翔君ちは?変わった?」

「変わってないよ、何も……。」

そう言って、翔君はマグカップに口をつける。

「智がお土産って買ってきたクッションもまだある。」

「……取っといてくれたんだ。」

「何一つ、捨てられなかった……。全部思い出が詰まってるから。」

マグカップを置いた翔君が、俺に向き直る。

「聞かせてもらっていい?俺らが別れた理由。」

その真剣な瞳にドキッとして、目を合わせていられない。

視線を逸らした俺に、翔君が追い打ちをかける。

「智も……まだ俺のこと……忘れてないよね?

 この部屋を見ればわかるよ。なんにも変わってない。

 俺らが付き合ってた頃と。」

そうだよ。何も変わってない。

部屋も俺も翔君への気持ちも。

だから、今度はちゃんと聞かないと。

どうして翔君が俺に触れなくなったのか。

「先に聞いていい?」

「何を?」

俺は一息ついて翔君を見る。

「翔君が……俺に触れなくなった理由。」

翔君の目が一瞬見開かれて、すぐに視線を逸らされる。

「理由があるなら……聞きたい。」

理由がなかったとしたら、本当に俺に飽きたってことになる。

それなら、今度こそきっぱり諦められる。翔君のこと。

いや、諦めなきゃいけないだろ?

体が全てじゃないことはわかってる。

それでも、体の繋がりはやっぱり大事だ。

欲望も満足させてこそ恋愛。

俺達の体はまだその欲望を欲する年齢だ。

体だけの関係だからなんて、他の人と浮気されたら……あんまりにも惨めだ。

「智が……泣くから。」

翔君がつぶやくように言う。

「泣く……?」

泣いたことなんかあったか?

「苦しそうで……。」

苦しそう……?

いつ?

してる最中?

「ある日、気付いたんだ。それまでは自分の気持ち良さに……見えてなかった。

 イク寸前、智はいつも苦しそうに眉間に皺を寄せ、涙を流してた。

 聞けば必ず気持ちよかったって言ってくれたけど、優しい智だから……。」

「嘘突いてるって思ったってこと?」

翔君がコクリとうなずく。

「俺は……自分の快感の為に智に無理を強いてることに気付いたんだよ。

 そりゃそうだよね?その為の器官じゃないんだから。

 なのに、自分が気持ちいいからって、智に無理をさせてた。」

翔君は握った拳をもう片方の手で握り締める。

「Hする度に苦痛を強いるなら、しない方がいいんじゃないか。

 そう思って……触れないようにしてた。」

「翔君……。」

翔君が自嘲気味に笑う。

「恋愛って、気持ちでしょ?

 心が通じていれば、体の関係がなくたって……続けていける、そう思った。」

バカだ。

翔君は大バカだ!

「体の関係がなくなったら……続かなかったんだね。翔君の気持ちも。」

「続いてたよ、だから今、こんなに苦しいんじゃない!」

「でも……辛かった。

 だから、何も聞かず、別れを受け入れたんだよね。」

翔君がサッと目を逸らす。

そりゃそうだよ。

俺は……体の関係がないことで、翔君の愛を疑い始めたんだから。

俺に飽きた、男の体じゃ満足できない。

そう思われてるんじゃないかって。

「翔君は呆れるくらい大バカだ。」

俺は翔君に手を伸ばす。