Listening Together……。
昔はずっとかけっぱなしだった音。
聞いてないと息ができないんじゃないかってほど聞いてた頃もあったね。
一緒に聞いて、一緒に成長した曲たち。
リンキン・パークもブルーノ・マーズも。
あの頃ほどかけることはなくなったけど、今でも時々かけるあなた。
ヒョイと俺の部屋のドアから顔を覗かせ、
「ちょっと何かかけていい?」
って小首を傾げれば、俺に断る権利はなくなる。
「いいよ、何かけるの?」
「ん~、上がるやつ?」
尻上がりの語尾でまた首を傾げてクスッと笑う。
ははは、笑うのは俺の方じゃない?
しばらくして漂う音は、アップテンポでノリノリの曲。
一緒に掃除機の音もしてる。
掃除機が……曲に乗ってる!
今度は俺がドアから顔を覗かせる。
んはは、曲に合わせて軽くステップ踏んでる!
口ずさんでるし!
まるで、ミュージカルだね。
掃除機かける姿がこれだけ画になる人っている?
いやいない。
間違いなく、世界一掃除姿が画になる男!(俺調べ)
某音楽サービスで俺ら、それぞれが選んだ5曲。
きっとあなたは歌詞の意味なんて考えちゃいない。
その歌詞が、どんなに切なさを含んでようが、今の状況と重ね合わされようが、
あなたが好きな曲だから選ぶ。
うん、あなたらしいよ。
決して自分に嘘が付けないあなた。
もちろん、周りに対しても。
嘘をつくことが……あなた自身を苦しめる。
わかってる。
そんなあなたに嘘をつかせ続けてること。
俺らの関係は公にはできない。
例え、休止になっても引退しても。
あなたを苦しめてるのは俺自身。
それでも……あなたをこの世界に留まらせたいと思ってる。
掃除機をかけるだけで踊るあなただよ?
この姿を消してしまうことなんてできないよ。
だから、最後の曲は俺からのアンサーソング。
One More Light。
あなたは気づかないと思うけど。
「翔く~ん、昼飯、何にする?」
振り返ったあなたが、ドアから覗く俺に気付いて、ふにゃっと笑う。
掃除機を止め、俺を見つめるあなたは、そんな姿だって輝いてる。
ヨレヨレのTシャツにくたびれたハーフパンツで、掃除機片手でも!
「なんでもいいよ、智君でも!」
「なんだ、それ?腹減ってないなら一人で食う。」
また掃除に戻ろうとするあなたに慌てて駆け寄る。
「最近、運動不足じゃない?」
「一人でラジオ体操してろ。」
掃除機を付ける手を上から押して、止める。
「こっちの運動不足。」
無理やり唇を奪うと、智君がわざと俺を睨む。
「不足してねぇだろ。昨日もやったじゃん。」
「でも、1回だし。」
「十分だろ!運動不足ならHappiness体操!」
「あれはアップ。その後は……。」
また唇を重ねると智君がニヤリと笑う。
「俺の筋トレも付き合えよ?」
「え~っ。」
明日は筋肉痛確定。
そんな筋肉痛だって心地いい……。
さて、どこが筋肉痛になるかな?