光  二帖 ― つなぐ side story ― | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



「……と言うわけで、今晩、浜に行かねばなりません。」

櫻井が、青菜のお浸しをそっと避けながら言う。

開けっ放しの障子から見える庭には、大人と子供の着物が並んで干してある。

日はまださほど高くはない。

温かな湯気の立つちゃぶ台の向こうから、雅紀が櫻井の青菜をじっと見ながら尋ねる。

「狐殿と一緒に行かれるのですか?」

背筋を正した雅紀は、14、5に見えるほどに成長した。

町を歩けば誰もが振り返るであろう整った面長の顔に、

まだ幼さの残るつぶらな瞳が、親しみやすさを感じさせるのだが、

今は、その瞳さえもキッと吊り上がり、厳しい表情を崩さない。

「ええ、そのつもりです。海が光るなど、初めて聞きますからね。

 狐殿が一緒に行ってくれれば心強い。」

雅紀は青菜から目を離さずさらに聞く。

「明日は帝居に伺う日ですが、朝までに帰って来られますか?」

「その予定です。が、もう少し遅くなるかもしれませんな。

 なにせ、光の正体がわかりませんから。」

櫻井の箸が味噌汁を掻き混ぜる。

それでも雅紀の視線は青菜に落ちたままだ。

「それではしばし、はるが一人になってしまいます。」

「大丈夫。一人でお留守番できます!

 はるも来年には10歳(とう)になるんだから!」

はるが元気よくご飯を口に入れる。

「ぬははははは、10歳など赤子も同然!」

智が米粒を頬に付けながら笑う。

櫻井は、その米粒を人差し指で拭うと、自分の口に入れる。

「狐殿から見れば赤子も同然でしょうが、留守番できないほど小さくもありません。」

雅紀が櫻井の青菜の小鉢をそっと櫻井の茶碗に寄せる。

「この間、一人で山に入って襲われかけたのをお忘れですか?

 逃げられたからよかったようなものの……。

 私は寿命が縮みました。」

櫻井が小鉢をチラッと見、ふぅと溜め息をつく。

「忘れてはいません。けれど、いつまでも赤子のようにもしていられないでしょう?

 はるも大きくなっています。

 雅紀さんだって、このくらいの頃には一人で留守番してたではありませんか。」

「それはそうですが……。」

言いよどむ雅紀を、はるが見上げる。

大きな瞳は櫻井ゆずりか。

下がった眉と唇の形は智に似ている。

「雅紀兄ちゃん、大丈夫。一人で留守番できるよ?」

話す度にチラチラ見える八重歯が、幼さと力強さを同時に感じさせるのは智の血だろう。

「できないと思ってるわけじゃないよ。

 でもね、はるはとっても可愛いから……心配なんだよ。」

雅紀の言葉に、はるが、ん?と首を傾げる。

「こんなに可愛かったら、誰だって攫いたくなっちゃうよ。

 それこそ、男も女も人間も妖も!」

雅紀がはるにぎゅっと抱き着く。

「雅紀兄ちゃん……?」

雅紀の頬がはるの頬をすりすりする。

「これこれ、食事中ですよ?」

櫻井に窘(たしな)まれ、雅紀がはるから離れると、

智の前に青菜の小鉢が2つ並んでいるのが目に入る。

雅紀はキッと目尻を吊り上げ、小鉢を一つ取り上げる。

「とにかく、はるを一人にするのは反対です!」

トンと櫻井の前に小鉢を置き、櫻井を睨みつける。

その勢いに圧倒され、櫻井が困った顔で智を見ると、智が、がははと笑う。

「連れて行くわけにも行くまい?

 できるだけ早く帰って来よう。

 だからはるも家でじっとしているんだぞ。

 洗濯も薬草取りもしなくていい。

 家から出ずに待っていろ。」

智の言葉に、雅紀とはるが顔を見合わせる。

「……わかりました。」

はるが答えると、雅紀がその頭を撫でる。

「私もできるだけギリギリに出るからね。

 洗濯は一緒に早めにやってしまおう。

 そしたら家から出ずに待ってられるよ。」

「うん。」

はるが嬉しそうに笑う。

その顔を見て、また雅紀がはるに抱き着く。

「はる~!本当にはるは賢い!」

「雅紀兄ちゃ……。」

力の強い雅紀の腕の中で、苦しそうなはるが櫻井に向かって手を伸ばす。

そんな二人を前に、櫻井と智が顔を見合わせ、クスクス笑う。

さりげなく、櫻井の前にある青菜の小鉢を智が取り上げる。

とたん、雅紀の動きが止まる。

「ダメです!翔さんに食べさせないと!」

雅紀はすばやく智の前の小鉢を取り上げ、櫻井の前に置く。

いたずらが見つかった子供のように、また顔を見合わせた二人が、

今度は大きな声を上げて笑う。

その声に驚いた小鳥たちが、庭から一斉に飛び立った。









 

 

次で終われるかな~(笑)

はるの歳は数え歳~。

来年10歳なので、今は8歳くらい。