「おーちゃんっ!」
「相葉ちゃん!」
相葉ちゃんの溢れんばかりの笑顔に走って行って抱き着く。
「会いたかった~。」
「俺も~。」
力任せに抱き締める相葉ちゃんを、俺も力いっぱい抱きしめ返す。
「元気だった?」
「うん、なんとか。おーちゃんは?」
「俺も……なんとか。」
一年ぶりの相葉ちゃんの笑顔に、思わず、もう一度抱きしめ合う。
相葉ちゃんの肩に桜の花びらが舞い降りてくる。
「よかった……。」
抱きしめ合った耳元で相葉ちゃんの声がつぶやく。
心配……かけちゃったね。
ごめんね……。
そんな思いを込めて、ぎゅっと抱きしめると、後ろからニノの声。
「カンドーの再会はその辺で。でないとしょーちゃんがさらに仏頂面になるよ。」
「そんなことないよ。そこまで心狭くない!」
チラッとしょーちゃんを見ると、確かに仏頂面。
相葉ちゃんと顔を見合わせてクスっと笑う。
大阪に行った相葉ちゃんとは一年ぶり。
「じゃ、肉焼くよ。翔さん、みんなに飲み物配って。」
松潤が言うより前に、ニノがクーラーボックスを開ける。
しょーちゃんは皿と箸が風で飛ばないよう、各自に配って行く。
あの時、俺のせいでできなかったBBQ。
1年越しで再計画してくれたのは松潤とニノ。
「もう体は大丈夫なの?」
相葉ちゃんが俺に気を使って小声でしょーちゃんに聞いてる。
「全然。むしろエネルギー、有り余っちゃって。」
しょーちゃんがふざけた様子で力こぶを作り、チラッと俺を見る。
「あ~、それじゃおーちゃんが大変だから!」
「大丈夫。智も結構体力あるから。」
二人で俺を見て笑う。
俺はニノから渡されたビールを開け、飲もうとして止められる。
「まだ。まずは乾杯。」
ニノの睨みに、慌ててビールを下げる。
「潤君、乾杯しよ。大野さん、飲みたくて仕方ないみたい。」
あ、と気づいた松潤が、焼けた肉を各自の皿に乗せてビールを手にする。
「ごめんごめん。」
ビールを開け、胸くらいの高さで乾杯の音頭を待つ。
みんなで顔を見まわし合って……。
誰も口を開かないのを見て、しょーちゃんがビールを掲げる。
「久しぶりの再会に。」
「「「「かんぱ~い!」」」」
5本のビールの缶が、桜の下でキラキラ光る。
楽しそうな松潤の笑顔。
クルクル回る相葉ちゃんの瞳。
ニノの上がった口角。
しょーちゃんの楽しそうな声。
薄ピンクの花吹雪き。
それらを見ながら、ビールをゴクリと飲む。
あれから1年。
俺は、しょーちゃんのおかげで不起訴になった。
しょーちゃんが、自分でやったと頑として譲らなくて。
むしろ、助けようとしてくれてたんだって言ってくれて。
刺す所を見ていた人がいたわけじゃなかったから、証拠不十分?
監視カメラの映像もちゃんとは写ってなかったいみたいで。
きそゆーよってのになって。
入院したしょーちゃんも、命に別状はなかった。
あんなに血がいっぱい出てたのに。
人間ってすごいんだなって、改めて思った。
警察から釈放された後、どうしていいかわからなくて、
自分のしでかしたことが急に怖くなって、家に閉じこもっていたら、
しょーちゃんから電話があった。
悪いと思うなら毎日見舞いに来いと。
恋人なんだからって。
涙が……止まらなかった。
こんな俺を許してくれ、まだ恋人だと言ってくれるしょーちゃんに脱帽した。
俺なんて、しょーちゃんを一人占めしたいが為にしょーちゃんを刺したって言うのに。
大阪行きを聞いて……やっぱりそうなんだって思った。
相葉ちゃんと一緒に行くんだって。
二人は……そう言う仲なんだって。
相葉ちゃんが企画に異動になった時も、部がゴタゴタしてた時も、
しょーちゃんは親身になって相葉ちゃんを助けてた。
それを疑った俺。
相葉ちゃんとも俺とみたいに……。
ううん、俺とは遊びで本命は……。
ふざけてみんなの前で松潤とキスするくらいだったから、
自分に対するしょーちゃんの気持ちがわからなかった。
俺と付き合っても、他の女とも続いてると言い放つしょーちゃんだったし。
怖かった。
しょーちゃんを失うことが。
しょーちゃんを、どこにも行かせたくない。
ただそれだけ。
それだけだったのに、なんで刺すと言う行為に走ったのか、俺にもよくわからない。
死んじゃったら俺の前からもいなくなっちゃうのに。
いろいろ後付けで説明することはできるんだろうけど……。
説明なんてどうでもいい。
俺がしょーちゃんを刺した。
それが事実。
でも、しょーちゃんの命に別状がないと聞いた時……涙が溢れた。
その時になって、初めてしょーちゃんを失う本当の怖さを痛感した。
本当に恐ろしいことをしたんだって。
「智!」
顔を上げると、いつの間にか隣に来てたしょーちゃん。
「あんまり飲み過ぎないでね。」
「大丈夫。」
ビールを飲んでニコッと笑う。
「ほら、おーちゃん、野菜も食べないと。」
相葉ちゃんが皿にピーマンと玉ねぎを乗せてくれる。
「飲み物のお代わりは?何にする?」
松潤が甲斐甲斐しく動いてくれて。
「じゃ、チューハイ。」
松潤が取り出した缶を、ニノが持って来てくれる。
今日は気持ちよく酔えそう。
みんなはいるし、しょーちゃんも隣にいるし。
「あ~、智、それで終りね。それ以上飲んじゃダメ~。」
しょーちゃんの声に、みんなが笑った。
風は強いけど、最高のBBQ。
最高のお花見!
「しょーちゃ……。」
しょーちゃんの上に乗って、しょーちゃんの 腹 の傷を 舐 める。
腰骨の少し上、5㎝くらい横に伸びた傷跡。
しょーちゃんが笑う。
「俺を愛してる?」
「しょーちゃん……。」
舌 先 を、徐々にヘソの方へずらしていく。
指先は傷跡を 撫 でながら。
「俺を愛してる?」
「愛……してる……。」
立ち上がったしょーちゃんのに、跨 って……。
傷跡を触りながら、腰 を 揺 らす。
「はぁ……。」
「もっと強く、傷跡触って。」
「ん……。」
「あの痛みを思い出すように……。」
グッと凹むくらい強く撫でる。
思い出す、あの時の感触……。
柔らかく、温かいしょーちゃんの温もり……
「あぁ……そうだよ。もっともっと……。」
しょーちゃんの顔がコーコツとしてくる。
俺の中のしょーちゃんが大きくなって……。
「あぁ……。」
「智を……すっごく感じる。」
「んぁっ……俺も……。」
傷跡は、俺としょーちゃんの……愛の証。
ずっと感じ続ける罪の証。
こんな感じでいいかしら?
あとがきは夜かな~。