サトシの寝顔をパチリ。
ついでに無理やり一緒にパチリ。
ちょっと強引すぎるツーショット。
でも一緒に撮りたくなっちゃうんだな、これが。
たとえこんなへにょへにょの顔でも。
ソファーで眠るサトシは本当に可愛くて。
閉じた睫毛の長さとか。
寝息の度に震える唇とか。
ちょっと重ねた指先とか。
可愛くて、可愛くて、可愛くて。
食べちゃいたくなるほど可愛くて。
お父さんとお母さんの気持ちが容易に想像できる。
こんな可愛い息子がいたら、心配でしょうがなくなっちゃうよな。
バカな女に騙されないかとか。
世間の荒波に、落ち込んじゃうんじゃないかとか。
どっかの誰かに盗まれちゃうんじゃないかとか。
とかとかとか。
俺みたいな、ばかな男に盗まれちゃったけど。
いやいや。
俺は盗んだりしちゃいないよ?
いつだって、サトシの実家になら顔を出すし、
いつ行ってもいいように、お父さんの好きな芋焼酎も用意してあるし。
サトシはいつでも愛に包まれてなきゃいけない。
こんだけ愛らしいんだから。
みんなを愛してやまないんだから。
ばかな俺はばかばかしい夢を見る。
サトシの愛が、全て俺に向いてる夢。
もちろん、俺の愛はサトシにだけ向いている。
でも、サトシは……アーティストのサトシは、俺を愛するのと同じように世界を愛してる。
俺と同じように人間を愛し、その辺の壁に芸術を感じ、その辺の草に愛を感じる。
俺には一生できない、感じることのできない感覚。
俺はそんなサトシを愛してる。
だから、我慢しなくちゃいけない。
例え、道端の石コロに心奪われても。
例え、美味しいチョコケーキに「これ、世界一好き!」って言われても。
例え、毎日庭に来るブサ猫を楽しみにしていても。
サトシはサトシだから、サトシの全てを受け入れて、愛して……。
難しいけど、頑張ってるよ、俺。
亭主関白全盛の頃が羨ましい。
言ってみたいものだ。
俺以外を見るな。
俺以外としゃべるな。
俺以外に笑顔を向けるな。
言えないけど。
羽ばたいていいよって言っちゃったからね。
そう思う。
そう思ってるんだよ。
羽ばたかせてあげたいって。
ほんとに。
ちょっと頑張ってるけど。
ちょっとじゃない、だいぶか?
でも、寝ているサトシは俺のもの。
俺だけのもの。
寝ているサトシを毎日見ていられる贅沢。
これは誰にも譲れない。
譲る気もない。
もちろん、サトシが俺のことを愛してくれてるのも知ってる。
人間の中で一番好きなのは俺。
それもわかってる。
それでも妬いちゃう俺の狭い心。
サトシを俺だけで満たしたい。
壁や草も見ないで欲しい。
すごいって感動した目を向けるのも俺だけにして欲しい。
そう思っちゃうのはなんでかね?
仕事だって好きだし、そこそこ遊んだし、そこそこ何でもやるのに。
サトシが関わるとこれが全部飛ぶ。
サトシだけが好きで、サトシだけが欲しくて、サトシだけを抱き締めていたくて。
仕方ないか。
こんなに可愛いサトシだから。
可愛いのに、結構考え方は男前だったりするんだけどね。
「ぅ、う~ん……。」
サトシが寝返りを打つ。
ムニャムニャ動く口が可愛い。
何か食べてる夢でも見てる?
でも、このままじゃ風邪引いちゃうから……。
「サトシ、ベッド行こ?」
声を掛けても起きないサトシ。
さっきもフラッシュたいても起きなかったな。
いつものことだけど。
仕方ないから、サトシの下に腕を入れる。
「ほら、首に腕回して。」
「ん、ん~。」
肩で促してやると、無意識のサトシが俺の首に腕を回す。
抱き上げて、俺の腕の中で丸くなるサトシを見下す。
長い睫毛も、キレイな鼻筋も、俺だけのもの。
俺だけのサトシ。
「さ、一緒にベッド行こうか。」
鼻の付け根に唇を落として、リビングを出る。
サトシはどんな夢を見てる?
できるなら……俺の夢を見てて欲しいな。
俺も、サトシの夢を見るよ。
俺だけを見るサトシの夢を。
起きてても……夢見てるようなもんだけど!
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