テ・アゲロ  the movie ⑨ scene9 | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



「大野さん……てさ、何してる人?」

ベッドの上から動けない大野の脇に座り、ポテトチップを摘まむ二宮が視線を上げる。

「何って……ヒモ?」

大野が笑いながらそっと右眉の辺りを撫でる。

右瞼が腫れて、目が半分閉じている。

手についた軟膏をじっと見、その指を首筋に撫でつける。

「あ~あ、触っちゃダメだよ。薬が取れちゃう。」

「なんか、引っかかるんだよ、ここ。」

「引っかかるに決まってるじゃん、腫れてるんだから。」

大野は笑って二宮の持つポテトチップの袋に手を突っ込む。

「お前こそ何してんだ?」

「私?私は……。」

二宮はジャケットの内ポケットから箱入りのカードを取り出す。

箱から丁寧にカードを出すと、それを大野の前に広げ、一枚取れと顎で合図を送る。

大野は真ん中辺りの一枚を取ると、見ていいのかと目で合図を返す。

二宮は小さくうなずき、残ったカードを束にしてシャッフルする。

大野が取ったカードはハートの7。

「それ、適当にこの中に入れて。」

二宮に言われるまま、また真ん中辺りにカードを差し込む。

「好きなだけ切ってよ。」

二宮に渡されたカードを不器用な手つきでシャッフルする。

腕が動かないから、上手く切れなかったが、なんとか混ざったような気がする。

そのカードを二宮に返すと、二宮はニコッと笑って、一番上になったカードを捲る。

「大野さんの取ったカード、これでしょ?」

捲ったカードはハートの7。

「すげぇ!」

「ふふふ、私、マジシャンなんですよ。まだ一人前……と言えるかどうかわかんないけど。」

「マジシャンかぁ、どうりで……。」

「どうりで?」

二宮が首を傾げ、不思議そうに大野を見る。

「どうりで手の動きが繊細だと思ったんだ。

 シャツを脱がす時とか、ハサミの使い方とか。」

大野は感心したようにカードに見入る。

「これ、タネあんの?」

「タネはありますけど……カードは普通のカードですよ?」

二宮はもう一度カードを大野に差し出す。

「俺にも教えて。」

「怪我してるから無理です。」

「治ったら!」

「治ったらね。」

大野はカードを広げたり、膝の上で混ぜたりしながら、話し続ける。

「じゃ、ショーとか出んの?」

「ショーはアシスタントでたまに。今はバーでテーブルマジック見せたりしてます。」

トーマの経営するバーでする仕事。

簡単なマジックでも、客の驚く顔が間近で見え、

本来のマジックの楽しさを思い出させてくれる。

もう一つの仕事は……。

「いつからやってんの?」

大野が片手でカードをまとめようとして、なかなかまとまらないのを見かねて、

二宮がカードを揃える。

「高校卒業してすぐかな……。

 元々手先が器用だったのを、たまたまバイトしてたファミレスに師匠が来て……。」

「師匠?」

「Mr.ジャニーって知らない?結構有名なんだけど。」

「知んねぇな。俺、あんま日本にいなかったから。」

「え?海外にいたの?」

「ま、そんなとこ?だから、日本語ヘンでも気にすんなよ。」

「変じゃないけど……。」

「けど?」

大野が首を傾げる。

「言葉遣いが悪い。」

メッと親が子を叱るように目で叱る二宮を見て、大野が笑う。

「それはいいんだよ、それこそ気にすんな!」

笑いながらポテトチップの袋に手を突っ込む。

「今もシショーについて修行中?」

二宮は、ううんと首を振る。

「私がどんどん上手くなってくのが気に入らない兄弟子たちが、

 まぁ、いろいろしてくれたので、辞めました。

 師匠には悪かったけど、あのまま続けてたら師匠にも迷惑かかっただろうから。」

兄弟子たちが気に入らなかったのは、マジックの腕だけではない。

二宮の見た目、客に対するフレンドリーな対応、口の利き方、

とにかく何にでも文句を付けて来た。

最後は、師匠をベッドに誘いこみ、騙してるんだろうと言われ、啖呵を切って辞めてやった。

バイトでもなんでも仕事はできる。

力仕事以外なら、大抵のことは難なくこなせる。

よくなかったのは時期だ。

ちょうど音楽教師と疎遠になった頃だった。

初めて添い遂げた相手が、自分を遠ざけようとしてる。

仕事と恋人を同時に失う。

もう、頼れる親もいない。

それは二宮の心を頑なにした。

二宮の顔から表情を奪い、二宮の心を閉じ込めるに十分だった。

そんな時だった。

トーマと出会ったのは。

「どうした?黙って。」

大野がポテトチップをムシャムシャと頬張る。

口に入らない分のカスが、布団の上に落ちるのを、二宮がチマチマと拾っていく。

「思い出してたんです。恋人と出会った頃のこと……。」

「なんだ、もう寂しいのか?だったら帰れ。」

「いいえ……あなたが治るまでは……。」

治るまで一緒にいれば、本当のことがわかる。

本当に自分が夢遊病なのか……。

寝ている時に何もしてなかったとしても、

その間にまた事件が起きれば、自分は犯人じゃない……。

そうすれば、大手を振ってトーマの元に帰れる。

「ははは、お前も律儀な奴だな。」

「そうなんですよ。受けた恩は忘れません。そろそろ煙草買いに行ってきますね。

 銘柄は……。」

大野が中の煙草を取って、箱を二宮に投げる。

「これ、持ってけ。子供の使いと一緒だな。」

笑う大野に二宮が顎を上げる。

「子供はどっちですか?蒲団にお菓子こぼしながら食べる大人がいますかね?」

さっき拾ったお菓子をティッシュに包み、ゴミ箱に放ると、

煙草の箱を持ってドアへ向かう。

「他は?いいですか?」

「ああ、必要な物があったら、また行ってもらうさ。」

ムッとした二宮が頬を膨らませる。

「もう行きませんからね!」

「恩があんだろ?」

「それと甘やかすのとは別!」

ガシャンッと勢いよくドアを閉め、二宮が出て行く。

大野は、そのドアを見つめ、スマホを開くと画面をタップする。

「マジックか……。」

煙草を口に咥え、手探りでライターを探す。

「寝てる間……トラウマ?夢遊病?……何を心配してる?」

冷たい物に手が触れ、それを握る。

青い百円ライターで煙草に火を付けると、さらにスマホをタップする。

「とりあえず……さっきのマジックのタネ、ぜってぇ見つけ出してやる!」

スマホを勢いよくスクロールする。