テ・アゲロ  the movie ⑨ scene7 | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



大野の近くまで行くと、二宮は辺りを見回す。

先ほどの男達の姿はない。

頬と額に痣を作り、唇の端から血を流すその顔は、まさに先日会った大野だ。

「ね、大丈夫?生きてる?」

二宮はその場にしゃがみ込んで大野の肩に手を掛ける。

少し揺すると、大野の肩がビクッと動き、痛そうに体を震わせる。

生きてる……。

人間、あれだけ蹴られても動くんだ……。

妙なことに感心し、揺すっていた手を顔の方へ持って行く。

「大丈夫……なわけないよね……。」

指先が頬に触れると、大野の顔が、ビクッと歪む。

「……ってぇ……。」

薄目を開ける大野にホッとし、体中を見まわしてみる。

ボロボロに汚れてはいるが、血が出ている等、びどく怪我している所は見受けられない。

血は出てなくても骨は……折れてるかも?

「とりあえず、病院へ……。」

二宮は大野の右手を担ぎ、体を起こそうと踏ん張って見る。

「ってええええっ!」

大野が思いっきり顔を歪め、瞼の腫れてきた顔で二宮を睨む。

「仕方ないでしょ?病院……行かないの?」

「……いい、いいからっ!」

大野はグッと二宮の肩に乗せられた腕に力を込め、一気に立ち上がる。

「っつ……。」

痛みで顔を歪め、一瞬ズルッと体が落ちそうになったが、なんとか踏みとどまる。

「歩ける……?」

大野は腹を押さえながら、一歩前に足を出す。

びっこを引くが、なんとか歩けそうだ。

骨は大丈夫だったのか?

二宮はタクシーを捕まえようと、大通り目指してゆっくり大野を歩かせた。



「本当に病院……いいの?」

「ああ……。」

鏡を見ながら、顔に軟膏を塗る大野を、心配そうに二宮が見つめる。

この間の安ホテルだ。

病院へ行くことを拒んだ大野は、まだこのホテルにいたらしい。

あれから10日は過ぎている。

「っつ。」

痛そうに顔を歪め、こわごわ唇の端にも軟膏を塗る。

「それで直る?」

「直る。舐めたって直るんだ。一応薬塗ってるだけまし。」

大野は、口を開けると痛いのか、ボソボソと話す。

声が小さく、近づかなくては聞こえない。

顔に軟膏を塗り終えた大野は、シャツのボタンに手を掛ける。

うまくボタンが外せない。

見かねて二宮がボタンを外していく。

シャツを脱がせると、下着替わりに来ているのか、

元は白かったであろう薄汚れたTシャツが現れる。

「これも脱ぐ?」

「ああ。そこにハサミあるから、切ってくれ。」

腕が上がらない?

二宮は大野の体を確認しながら、ジョギジョギとハサミを入れていく。

Tシャツの下から現れた割れた腹筋にドキッとする。

日焼けしたその肌は、筋肉質で、力強い。

腹の辺りにうっすらのったぜい肉も、生命力を感じさせる。

トーマとは違った筋肉。

トーマの筋肉には無駄がない。

必要な分だけ作られ、維持されている。

こんなに日に焼けたりもしない。

トーマのは見せる為の筋肉。

店に来る客は見かけに対してもシビアだ。

ただ遊ぶだけじゃない。

セレブな客達は、そういう雰囲気に対しても金を出してくれる。

大野の筋肉は、見せる為のものじゃない?

見かけを売りにするヒモってわけじゃないのか?

傷も、肩に大きな痣ができている他は、腹と背中に一か所ずつあるだけで、

思ったより少ない。

もちろん、小さな擦り傷や痣はある。

「背中、塗ってくれ。」

軟膏を渡され、指先に取り出すと、そっと背中に塗る。

「つつつっ!優しくっ!」

「優しくやってるよ。」

「もっと優しくっ!」

「これ以上どうやるのよ。」

二宮はできるだけ優しく痣の上に軟膏を広げる。

ビクッとその手を避けるように体を丸める大野が怒鳴る。

「お前、怪我したことねぇのかよ!」

「こんな怪我、したことないよ!」

「男なら、これぐらいしろっ!」

「普通しないから、こんな怪我!」

ブツブツ言う大野が、だんだん面白くなってくる。

少しずつ、傷の中心に向かって軟膏を広げる。

「いてっ!」

「我慢っ!」

クルッと肩の傷の上に軟膏を広げると、大野の背が伸びる。

「おわっ!」

「動かないで!もう少し!」

中心部分にも軟膏を広げ、逆の肩をポンポンと叩く。

ビクッと大野が体を引く。

「背中は終り。ほら、腹も塗ってあげるから。」

「いいよ、腹は自分で塗れる。」

そろそろと自分の胸の傷に指を持って行き、チョンと突く。

「っつぅ~~~っ!」

「オーバーだなぁ。」

「じゃ、お前がなってみろ!いてぇから!」

「絶対やだっ!」

二宮は笑って、大野の胸に軟膏を広げる。

「動かないでよ。動くと余計痛いよ?」

大野はグッと目をつぶり、口を引き結ぶ。

大きな傷に塗り終え、小さな傷にちょこちょ塗り始めると、大野の目が開く。

塗り絵でもするように、次々軟膏を塗りたくって行く二宮を見て、大野が微笑む。

「元気そうだな。あのまま帰れたのか?」

二宮は返事せず、脇の下の傷を確認する。

「恋人、心配してただろ?」

二宮の指が止まる。

「寝ないで……待っててくれた……。」

「そうか……よかったな。」

そうだ。

心配して寝ないで待っててくれたトーマ。

そんなトーマに、心配も迷惑もかけたくない。

「お願いがあるんだけど……。」

二宮が大野を見上げる。

「んあ?」

大野の目が、怪訝そうに二宮を見返す。

「当分……ここに置いてくれないかな。」

「……どうして?恋人が待ってるぞ。」

二宮は首を振り、縋るように大野を見つめる。

「待ってるから……戻れない。」

「どういう意味だ?」

「お願い。」

二宮は大野の手を両手で握る。

「しばらくでいいんだ……しばらくの間……私を見張ってて欲しい。」

「……見張る?」

二宮は、言うのを躊躇うようにゆっくり首を振る。

「寝てる間の……私を見張ってて欲しい。」

「……寝てる間……?」

大野は訝しそうに首を捻り、二宮の瞳の奥を覗き込む。

薄茶の瞳が、潤んでユラユラと揺れる。