バイトはなんとか終り、赤いママチャリに跨る。
今日は皿を割ることもなく。
いつも通り動けたかっていうと、まだだけど。
この体でここまでできれば上出来だろ?
店長には念入りに明日はゆっくりしろと言われた。
俺、相当げっそりしてる?
自転車を漕ぎながら、頬を撫でてみる。
触ったくらいじゃわかんねぇな。
ショウ、昨日の弁当、食ったかな?
あいつ、フィギュアだから飯食わなくても大丈夫なのか?
でもシャワーは浴びせないと。
あんだけやって汗だってかいてるし……。
明日はシーツ洗って蒲団干すか。
ここんとこ、布団敷きっぱなしだし……。
コンビニ寄って、適当に菓子パンやカップ麺を買って家に急ぐ。
一人にするとウジウジするからな~、あいつ。
朝、起こさず出てったから怒ってるか?
俺だって、寝てていいなら寝てたかったよ!
「ただいま~。」
できるだけ元気な声でドアを開ける。
なんだ!?この匂い!
「お帰りなさい。」
パタパタと音がして、ショウが玄関までやってくる。
「ぅえっ!?」
にっこり笑ったショウがエプロンをして立っている。
裸で!
いや、裸かどうかはわからない。
が!
少なくとも上半身には着ていない!
骨ばった筋肉質な肩が見えてる。
肩ひもが下がりそうな撫で肩!
母ちゃんに持たされたエプロンは、何の模様かわからない赤地に青の幾何学模様。
それが、胸から太腿の真ん中辺りまで隠してる。
エプロンの裾から下も、もちろん男の足!
筋肉!
筋!
骨!
細っ!
「な、何してんだ!?」
「こういうの好きなんでしょ?」
「好き!?俺が!?」
「だって棚の中にあったよ?
『新婚!エプロンの下は愛液で塗れた赤い花弁!』って。」
「何勝手に見てんだよ!」
靴を脱ぎ捨て、部屋の奥の本棚の下の引き出しを開ける。
奥の方に隠してあるDVD。
母ちゃんが突然来てもわかんないように。
「エプロンより白い制服の方がよかった?」
ナース服なっ!
制服って言うと誤解されるだろっ!
「探したんだけど、なくて。」
どこ探してんだよっ!
ウチにそんなもん、あるかっ!
「だから、似たようなので……。」
エプロンの裾を持ってクルッと回るショウ。
あ……やっぱり裸にエプロン……。
形のいい小尻がチラッと見える。
チラッじゃねぇな?
ズバッ!だな。
「どう?気に入った?」
気に入るか!?
そういう時に着るエプロンは白いフリフリっ!
間違ってもおばちゃんエプロンじゃないっ!
「ダメ~?」
俺の顔を見て、がっかりしたようにエプロンの裾をモミモミするショウを見て……。
なぜだろう。
なぜかしら?
可愛いなと思ってしまう。
「いや……。」
慰めたくなってくるのはなぜだ?
どう考えても、ギャグでしかないカッコなのに。
「いや……?」
ショウがうつむきがちな顔を上げる。
棚を元に戻し、立ち上がってショウに近づく。
俺を……楽しませようとしてくれたんだよな?
喜ぶと思ったんだよな?
「可愛いよ……。」
俺より高い位置にある、ショウの肩を撫でる。
「可愛い……?」
「ああ、可愛い……。」
「智……。」
自然と唇が重なって。
Hの為じゃない、優しいキスを交わす。
優しくお互いの唇をついばみ、小さな音をさせながら唇を合わせる。
「じゃ……してもいい?」
ショウがニヤッと笑う。
「え?」
一瞬の隙をつき、ショウの手が俺の背中に回り、ベッドに押し倒す。
「ま、待てっ。」
「待てないっ!ずっと待ってたんだよっ!」
ああ、そうだよな。
一日中、一人でいない俺を待って……。
外に出ることもできず、ずっと一人で……。
って、なるわけねぇだろ!
「うぉりゃあ~っ!」
「えっ?」
ショウを跳ね返し、玄関に置きっぱなしにしてあったビニール袋を持ってくる。
「まずは食え!そしてシャワーを浴びろっ!話はそれからだっ!」
「ちぇっ。」
ショウが舌打ちしてソッポを向く。
そう簡単にお前の手に乗るかっ!
「なんにも食べてないだろ?」
「昼に……弁当食ったよ。」
ソッポを向きながら答えるショウは、反抗期の子供だな。
裸にエプロンだけど。
「水分は!?」
「夕方、ビール飲んだ。」
「ビール!?」
ショウがチロッと俺を見る。
「あんなの見たら……。」
あんなの……?
あ、見たのか!?
俺の秘蔵DVD!
「ヤリたくなるし、智はあ~ゆ~のが好きなのかと思ったら……。」
あ~ゆ~の?
「細い肩とか……折れそうな腰とか……。」
ショウが自分の体を見て、またプイッとソッポを向く。
「小さくて可愛い顔とか……。」
反抗期の子供の顔のまま、自分の体を抱き締めるショウに、
胸の奥がキュッとする。
「バカだな……。」
頭いいはずなのに。
「バカってなんだよ。」
反抗期の子供が俺を睨む。
睨んでも……目の奥が不安で揺れてるのがわかる。
わかるんだよ、だって俺が作ったんだから。
「バカだからバカって言ったんだよ。」
「少なくとも智よりは頭いいはず!」
「裸でエプロンしてて、それ、説得力ねぇから。」
ハッとしたショウが、バツが悪そうにエプロンを外す。
裸のショウは……やっぱりカッコいい。
その腕が俺に伸びる。
俺の肩を掴み、グイッと引き寄せる。
広い胸で抱き締められ、俺もショウの背に腕を回す。
「ほんと、バカだよ、ショウは。」
「もう、バカって言うなよ。」
俺が側にいないと不安でいっぱいのショウ。
俺のことしか考えないショウ。
俺が作った、最高のフィギュア。
1週間しかいられない……俺の……。
「ずっと一緒にいるから。」
安心させるようにショウの背中を撫でる。
「ずっと?」
「ず~っと。」
「智……。」
俺をギュッと抱きしめるショウが可愛くて、ショウの背中をポンポン叩く。
「だから、安心しろ。何もしなくても……一緒にいるから。」
「うん……。」
大きな子供みたいなショウが、俺の首筋に顔を埋める。
「だから、まずは……。」
ご飯食べて、風呂入って……。
そう考えた時、俺の股間に固い物が当たる。
「えっ?」
体を離し、二人の間に目を走らせる。
大きな物が、ニョキッと立ち上がってる!
見上げると、照れ臭さをごまかすように、偉そぶったショウが言う。
「仕方ないじゃない。智の匂い嗅ぐとこうなっちゃうんだから。
これ、智仕様!」
「だからバカだって……えっ?」
抱き上げられ、ベッドの上に押し倒される。
「ば、待てっ!」
「待てないっ!」
覆いかぶさって来るショウの顔がアップで……。
でも、その瞳の奥の揺らめきは……少しおさまった?