温かくて気持ちいぃ……。
ノアは頭の位置を変えたくて、体を横に向ける。
昨日、サトシとショウに拾われ、なんとか食べ物と寝床にありつけた。
皿に乗せられたグチャグチャの内臓みたいなものは、
食べたことはなかったが、匂いを嗅ぐと美味しそうに見える。
恐る恐る口にすると、これがとても美味しい。
もうこれ以上は食べられないと言うくらい食べ、後は疲れた体を休めた。
夜はショウの胸の上で丸くなった。
帝王様似の人間は、優しくノアの背を撫で、動かないようにしてくれる。
緩やかに上下する胸は、温かくて心地よく、丸くなるとすぐにまた眠りについた。
今は……。
ノアは目を開け、ゆっくりと左右を見回す。
右にサトシ、左にショウが寝ている。
二人の腕は、ノアの上を交差して、お互いの腰に回っている。
二人に挟まれたノアの周りは、寝返りを打つくらいのスペースしかない。
でも、二人の温もりが伝わってくる。
僅かに鼓動と寝息も感じる。
ノアは昔、ブランと一緒に帝王様と智の間で寝たことを思い出す。
ブランと一緒にベルゼバブから怖い話を聞かされた日だ。
ある日突然、消えてしまう悪魔の話。
悪魔も天使も死を恐れたりはしない。
死は浄化と再生であり、怖いものではない。
だが、消えてしまうということは死ではない。
浄化も再生もされず、どこに行ったのかわからない、それが消えるということだ。
そんな話を、ベルゼバブは情感たっぷりに二人に語って聞かせた。
もちろん、面白がって。
震えあがった二人が、夜、子供部屋で寝られるわけがない。
泣きながら、帝王様と智の部屋のドアを叩き、二人に抱き着いた。
帝王様と智は困ったように顔を見合わせ、二人をベッドに入れてくれる。
ベッドの真ん中で、抱き合う二人を、帝王様と智が挟む。
裸にシルクのガウンを羽織った智が、二人の体を優しく叩く。
裸のままの帝王様が、時々、二人の髪を撫で、
「何も恐れることはない。お前たちには俺様がいる。」
そう、低い声で囁き続けてくれる。
泣き疲れて眠った時のあの感覚。
安心できる場所。
それに近いものを感じ、ノアはまた目を閉じる。
ここで……ブランと一緒に……。
ブラン……どこにいるの……?
僕を……探してる?
ノアは鼻をショウの胸に押し付け、尻尾をクルッと回すとサトシに当たる。
僕が……絶対探し出してあげるから。
待っててね……ブラン!