その手を引かれ、櫻井君の上に沈む。
繋がった場所が離れ、腹、胸 が重なり合ってお互いの温もりを感じる。
さっきよりもっと 汗 ばんだ 肌。
もっと熱い体温。
ドクンドクンと、あばらが持ち上がるほどの大きな鼓動に耳を傾ける。
「あ……。」
櫻井君が小さくつぶやく。
その声が耳元から聞こえたから、燻る余韻にポッと火が灯る。
「……どうしたの?まだしたい?」
櫻井君がわずかに首を振る。
「大野さんが……。」
「おいらが?」
「……出ちゃ…う……。」
恥ずかしそうに頬を染めてそう言う櫻井君が、可愛すぎて。
これ以上おいらをどうしたいんだ!?
「あ、もうしたくないとか、そういうんじゃないんです……。」
慌てて、首を振ったことに補足する。
補足なんかしなくてもわかってるよ。
ほんと、可愛さの塊みたいだな。櫻井君は。
櫻井君のおでこに、チュッと 唇 を当てる。
「わかってる。シャワー、浴びに行こうか?」
おいらが笑うと、櫻井君が安心したように笑ってうなずく。
体を起こし、繋いだままの手を引き寄せて櫻井君を座らせる。
ベッドから足を下し、立ち上がる。
おいらを見つめる視線。
ベッドの上に座った、一糸 まとわぬ 櫻井君。
いつもとは違う、ちょっと気だるい空気を放つ櫻井君は綺麗で、
まるで外国の絵画のよう。
長い足が、クルッと回って、おいらの隣に降ろされる。
まだ若い筋肉は、汗を放ってキラっと光る。
そんな櫻井君の手を引いて立ち上がらせる。
立ち上がると、おいらより数センチ背が高い。
少し見上げる高さのイケメンに、チュッと 唇 を当てる。
嬉しそうに、チュッとし返して来る 唇。
「そう言えば、櫻井君、まだイッてなかったね?」
手を繋いでバスルームに向かう。
「い、いいです、僕は……。」
「どうして?」
「……後ろでイッたから……。」
「それとこれとはまた別!」
「別って……。」
櫻井君がクスッと笑う。
バスルームのドアを開いて、櫻井君を促す。
「好きなだけ イカ せてあげるよ。
どうしたい?どうされたい?」
おいらを見つめる櫻井君の顔が、どんどん赤くなっていく。
「ほんと……大野さん……意地悪だ。」
ん?
おいら、何か意地悪なことしたか?
シャワーをバスタブに入れ、蛇口をひねる。
「そんな顏でそんなこと言うなんて……。
僕をいったいどうする気ですか?」
「どうするって……、んっ。」
口 を塞がれ、それ以上言葉を続けられない。
ザァーと言うシャワーの音の中、櫻井君の キ ス は 濃 厚 で……。
櫻井君が後ろ手でドアを閉める。
おいらの若い恋人は、恥ずかしがり屋なくせに、
こうやっておいらを……。
ほら!おいらのがその気になってきた!
バスルームの中に湯気が充満していく。
また 肌 と 肌 が 密 着 してもつれあって……。
明日……ちゃんと仕事できるかな?
伊野尾の書類、チェックするの忘れそう……。
「大野さん……。」
櫻井君の手が、おいらの顔の向きを変える。
「僕のことだけ考えて……。」
櫻井君には全てお見通し。
その綺麗な瞳には、未来も見えてるの?
おいら達のずっと先の未来……。
いいや、よそう。
今日、今、この時。
櫻井君といられることを喜ぼう。
若い恋人は、おいらに飽きるかもしれない。
もっと若い恋人ができたり、女性の方がよくなったりするかもしれない。
そうなったら……黙って身を引こう。
それが大人ってやつだ。
「もし……ずっと、ずぅっと先……。」
櫻井君の 唇 が、おいらのこめかみを 這 う。
「僕が、50歳くらいになって、大野さんが定年退職して。」
櫻井君の 唇 は、そのままおいらの瞼へ。
シャワーの音が響く。
むせ返る湿度。
「その……あんまり僕達にスル気がなくなってきても……。」
唇 が、おいらの眉間を 甘 噛 みする。
甘ったるいくすぐったさ。
「それでも……一緒にシャワー浴びましょう。」
櫻井君の瞳が細くなって、唇 がおいらの鼻筋を撫でる。
「スル気がないのに?」
「スキンシップって大事でしょ?」
大事だけど……。
若い内は今が永遠みたいに感じるもの。
おいらだって20代の頃は……、そんな風に思ったこともあった。
でも、歳をとって、幾つかの恋愛を経験すると、ちょっと疑心暗鬼になってくる。
この時が、一生続くわけないって。
特に、おいらと櫻井君には、男同士と言う以上に15と言う歳の差があるし……。
「何を……心配してるんです?」
「心配?」
「ふふ、心配そうな顔してる。」
櫻井君の指が、おいらの眉毛を撫でる。
「いつまで櫻井君を満足させられるかなと思って。」
正直に言ってみる。
今のおいらは、今までになく 精 力 絶 倫!
こんな状態になったことは今までない。
それくらい……櫻井君と ヤ リ たいわけで……。
年甲斐もなく、若い恋人に嵌ってる、恥ずかしいおっさんで……。
そうなってくると、どうしてもそこを考えないわけにいかなくて……。
櫻井君はクスッと笑う。
「大丈夫ですよ。大野さんができなくなったら……僕がしてあげますから!」
……え?僕が?
櫻井君がニコッと笑っておいらの 尻 を握る。
え?うそだろ?
「その為にも……どういうのがいいか、今勉強中。」
チロッと 舌 を出して笑う可愛い 唇 が、おいらの耳元で囁く。
「だから、何も心配しないで……僕を愛してください。」
ちょっと横を向くと、おいらだけを映す綺麗な瞳が近づいて……唇 が重なる。
全て櫻井君に任せておけばいいってこと?
それも悪くない?
重なった 唇 が深くなっていく。
お互いを 抱 きしめる両手が、体を 密 着 させる。
うっすら目を開けて櫻井君を見ると、長い睫毛の下の大きな瞳が怪しく笑う。
またおいらを誘う?
妖 艶 な Secret Eyes。
あぁ、いつまでも、その瞳に映るのがおいらだけであればいい。
お願いだから、そんな瞳で他の人を見てくれるな。
口を大きく開けると、櫻井君も合わせて口を開く。
唇 同士を合わせながら、舌 を大きく出して 絡 め 合 う。
「大野さん……そんな目で……他の人、見ないでくださいね……。」
「そんな目……?」
「ほら、無意識だから心配です……。」
櫻井君の腕がおいらをギュッと 抱 きしめる。
「いつも……その目で誘うのは、大野さんですからね?」
櫻井君の、赤いイチゴが熱く熟しておいらを飲み込む。
ごめん、伊野尾。
お前の資料、ちゃんと見てやれないかも。
でも、仕方ない。
こんな瞳で見つめられたら……。
こんな 唇 で強請られたら……。
他のことなんか、どうでもよくなる。
「誘ってるのは櫻井君だよ?」
おいらの手が伸びる。
「まずは櫻井君を イカ せてあげないとな?」
頬を染めながら櫻井君が笑う。
先のことは……。
まぁいい。
今は櫻井君だけ見つめていよう。
それを君が望むから。
おいらのSecret Eyesは櫻井君のものだから。
END