愛してると言えない 29話 | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



電車の入口付近に寄りかかり、外を見つめる。

電車が走り出すと、ホームが流れ、明るい空が目に飛び込んで来る。

けれど、俺の心には、モヤモヤとした霧が立ちこめる。

なぜ大野は嘘をついた?

美咲はフラれていた。

付き合っていたわけではない。

ではなぜ大野はあんなに犯人を憎んでいる?

殺したいと思うまでに……。

電車がガタッと揺れる。

両足で踏ん張ったが、肘が窓に当たる。

軽く肘を撫で、先ほどの潤を思い出す。

憔悴し切った顔……。

最初に面会に行った時では、きっと話してくれなかったであろうことも、

今回素直に話してくれたのは、疲れ切っていたからだろう。

それは、潤が限界に来ているということ……。

急いであげないと。

急いで……真実を見つけ出して……。

最寄駅の名がアナウンスされる。

俺は帰りを急いだ。

大野にとって美咲は……。

……俺に隠していることを聞かなければ……。

俺達は一緒に犯人を捜すと約束したのだから。



アパートに戻ると、真っ直ぐ大野の部屋をノックする。

大野はすぐに顔を出す。

「行って来たか。」

コクリとうなずき、大野の部屋に入る。

「で、松本はなんて?」

大野が折り畳み式のテーブルの前で胡坐を掻く。

俺も大野のはす向かいに腰を下ろす。

「美咲さんと付き合っていたと……。」

「ほらな。」

大野は胡坐を掻いたまま手を後ろにつく。

「年明けに知り合って、付き合うことになって……、俺と付き合う少し前に別れたと。」

大野は目を細めて俺を見る。

「別れた原因は……潤は俺に告白する為……。」

そうだろ?やったのは松本だと言わんばかりに。

「美咲さんは……好きな人に告白する為に。」

「好きな人……。」

大野の顔から表情が消える。

その後は、俺の報告を終始無言で聞き続ける。

最後にメールの話をすると、大野の眉がピクッと上がる。

「自暴自棄?」

「はい……。もういい、潤君は幸せになってと……。」

「美咲……。」

大野がやっと俺を見る。

「大野さんですよね?告白の相手は。」

大野は何も言わず、ただ俺を見続ける。

「美咲さんのこと……断ったんですか?だったらどうして……。」

そんなに犯人を憎んでいる?

「俺じゃ美咲にもったいない。」

「そんな問題じゃないでしょう?美咲さんが好きなのはあなたなんですから!」

大野の目が寂しそうに歪む。

「イヤリングを貰って勇気が出たって相葉亭の店主も言ってました。

 親密になっていたんでしょう?」

大野は何か言い掛け、グッと胸元で拳を握り込む。

「店主の前で泣くほど悩んで……やっと告白したんです。

 たぶん、生まれて初めて……。」

視線が、俺に何かを求めるように揺れる。

「告白は……食堂ですね?

 美咲さんはあのイヤリングをして、大野さんに告白した……。」

大野の視線が下がる。

「二人に何があったかわからない。でも……イヤリングは落ちた。」

あの食堂で、落ちたのにも気づかないような出来事……。

それしか考えられない。

「あなたにとって美咲さんは何なんですか?

 恋人じゃなかった。でも、犯人を殺したいほど憎いと思うのは……。」

もう俺にはそうとしか思えなかった。

「美咲さんはあなたの……肉親?」

大野の肩がギクッとする。

大野は父親に育てられたと言っていた。

美咲は幼い頃に母を亡くしたと……。

「……そうだよ。美咲は俺の妹だ。両親の離婚でバラバラになった……。」

「…………!」

わかっていても息を飲む。

「美咲は知らない……。俺にも微かに記憶にある程度だ。

 ただ、親父はたまにこっそり様子を見に行っていたらしい。

 俺は、親父の遺品の中に美咲の写真を見つけて……成長した美咲を知っていた。」

大野は胡坐の膝に肘を付き、右手の甲を左手で撫でる。

「ここに……美咲が越して来た時はびっくりした。

 まさかと思った。

 一人っきりになった俺の為に、親父が寄越してくれたんだと思った……。」

大野はやけどや汚れの染みついた自分の手の甲を見つめる。

「でも、美咲には言えなかった。突然、俺が兄だって言われたらどうする?

 困んだろ?若い女と関わることなんてなかったからな……。

 戸惑っているうちに……言えなくなった。

 言わなくてもいいかと思った。

 美咲は兄がいることも知らないだろうし……。」

大野は拳を作り、それを覆うようにもう片方の手で握る。

戸惑いながらも、手助けしていた大野を想像する。

相葉亭の店主も可愛がっていたと言っていた。

それを美咲は……。

「美咲の態度が変わって来ていたことには気づいていた。

 でも、彼氏ができたからだろうと……。」

大野が軽く膝を叩く。