「俺さ、翔ちゃんのこと好きみたい。」
え?なんですと!?
「だから、翔ちゃんのこと好きみたいなんだ。」
相葉君が、照れ臭そうにポジポジとこめかみを掻く。
「え、あ……そうなんだ……。」
ふわっと笑った相葉君の顔にドキッとする。
「男同士だし、メンバーだし、どうこうしようなんて思ってないから、気にしないで。
ただ、言ってすっきりしたかっただけだから。」
言ってすっきり……するのか……?
俺なら絶対すっきりしない!
……しない、ような気がする……。
「それだけ!ごめん、呼び留めて。」
相葉君は爽やかな笑顔を残して行ってしまう。
その後ろ姿を見送りながら、羨ましいような、切ないような気持ちになる。
男が男を好き……あり……なのか?
いや!ありえないでしょ!
「ドラマ、お疲れさん!」
松本がニノの肩を叩く。
「これでやっとゲームに集中できる。」
ニノは、スマホからチラとも視線を上げず、答える。
松本も、気にする風もなく、いつもの席に座る。
「でもまだ映画の番宣あるじゃん。」
「それね。ま、番宣だけだから。」
いつもの風景、いつもの楽屋。
俺もいつも通り、新聞とスマホを交互に見る。
スマホのカラフルなアイコン。
その一つに指を乗せ、躊躇して離す。
アイコンは開かない。
見たい。
でも今はまずい。
後ろから覗かれたら大変だ。
変に思われるどころか……人格さえも疑われる。
もちろん、言い訳は考えてある。
だけど……。
もう一度アイコンを見つめ、小さく息をつく。
いやダメだ。
まずは新聞に目を通そう。
俺は新聞を持ち直し、続きの記事に視線を向ける。
「はよ。」
ドアが開いて、チラッと見ると、入ってきたのは相葉君で、
一瞬目が合って、ドキッとする。
相葉君は何もなかったような笑顔で、ニノに近づいて行く。
え?本当にすっきりしてるの!?
「ニノちゃん、お疲れさま~。」
「まだ仕事、始まってないけど?」
「違うよ、ドラマ~。」
相葉君の笑顔は曇り一つない。
マジか。
マジですっきりしちゃってるのか。
メンバーだし、男だし……と悶々とした俺はなんだったのか。
「翔ちゃん、翔ちゃん!ニノのドラマ、翔ちゃんも見てた?」
相葉君はフツーに話しかけてくる。
「あ、ごめん、全部は見れてないや。」
「ニノちゃんがべらぼーにカッコいいよね!
俺、絶対ケンカしないようにしようと思った!」
「なんで?」
聞いたのはニノ。
「あんなドスの利いた声で言われたら怖いじゃん。」
「少しは怖がれ!」
ニノがゲームしながら笑う
「でもきっと、ニノだから怖くない~。」
相葉君もニノのスマホを覗き込みながら笑う。
「それよりさ、あのドラマのカメラアングル!」
「カメラ……?」
「俺がニノ見てるアングル!」
「なんだそれ!」
二人は笑いながらニノのゲームの話に切り替わる。
昔からいつも一緒の二人。
一緒に頑張って、一緒に泣いて……。
でも、そんな相葉君は俺のことが好きだと言った……。
俺はテーブルに肘を付き、相葉君とニノを見つめる。
やっぱり相葉君は気にしてないように見える。
俺も……気にしなくていいのかな……?
そこへドアがガチャっと開いて、智君が入って来た。
「おはよ。」
眠そうな智君が、眠そうに笑う。
みんな、それぞれに挨拶を返す。
「おはよ。」
「珍しいね、一番最後。」
「昨日遅かったんでしょ。」
松本が、智君に寄って行く。
「お前と違って仕事な?」
智君がクスクス笑っていつもの席にドカッと座る。
「それより……マンション、バレたらしくって。」
智君の言葉に、みんな一斉に振り返る。
「バレタ?」
「今のマンション?」
「バレタって?」
「何かあったの?」
最後に俺が聞くと、智君が俺を見る。
「何かあったわけじゃないんだけど……そろそろ引っ越さなきゃかなぁと思って。」
智君は溜め息混じりにテーブルの上のペットボトルを掴む。
「張られてるっぽい。」
「張られてるって……なんか、心当たりあるの?」
ペットボトルの水をゴクゴクと飲み、視線だけ俺に向ける。
「ないよ、全然。でも居心地悪いじゃん?」
そりゃそうだ。
誰かに監視された生活なんて、居心地いいわけない。
「じゃ、すぐに引っ越し?」
「そうもできないから……ちょっとの間、ホテルにしようかな。」
「ホテル?」
「ほとぼり冷めたらいなくなるかもしんないし、様子見るのに。」
智君が、ペットボトルのキャップを閉め、トンとテーブルに置く。
「ホテルじゃ、いろいろ面倒じゃない?」
「そうでもないよ。寝に帰るだけなら……。」
皆に注目されて、智君がクスッと笑う。
「何もないから心配すんな。」
心配そうな三人が顔を見合わせ、微妙な顔をする。
そりゃ心配だよな。
何かあってからじゃ遅すぎる。
「じゃ、じゃあさ、ほとぼり冷めるまでなら……俺んち来る?」
思わず出た言葉に、自分でもびっくりする。
こういうのって、どうなの?
嫌だと思っても、断りづらかったりする?
誘うのって変?
一瞬の間に次々言葉が頭の中に溢れてくる。
「え?翔君ち?」
驚く智君に、うなずく。
智君も複雑そうな顔をする。
「なんか、不都合ある?俺は全然かまわないけど。」
言ってしまった手前、ちょっと押し気味の俺。
「え?でも……、迷惑じゃない?」
「全然!気にしなくていいから、来なよ。」
智君が三人を見回し、最後に俺を見て、申し訳なさそうに眉を下げる。
「いいの?」
「もちろん!」
そこへスタッフが入って来て、話は中断されたけど……。
智君が、俺の家に来る?
突然、リアル設定が書きたくなった!(笑)
ここんとこ、リアル設定で書いてないもんね。
ということで、短編の予定です。
おっさんずラブ、リアル設定バージョン。
リアル設定だから、あの通りには進まない~(笑)