最後にSHOさん達に挨拶に行こうと思って控室を探したら、
SHOさんも大部屋でびっくり。
5人組のアイドルのSHOさんは、グループで一部屋なんだって。
仲がいいって評判だもんね。
ドアをノックすると、中から「はい」って声がする。
「今日はよろしくお願いします。」
言いながら、中に入る。
中には、テーブルを囲むようにして座る5人。
今回の映画、出番の多少はあるけど、5人全員出るみたい。
まだ試写見てないから詳しくはわかんないんだけど。
「ああ、大野さん。」
SHOさんがすぐ気付いて立ち上がる。
相変わらずのアイドルスマイル。
でも、今日はこの間より顔が優しい気がする。
SHOさんがおいら達の隣に立って、紹介してくれる。
「大野さん、これがウチのメンバー。
左の手前からKAZU、MASAKI、JUN、こっちがSATOSHI。」
あ、最後の人のとこでSHOさんの目が和らいだ。
「「「「よろしくお願いしま~す。」」」」
4人が口々に挨拶してくれる。
「で、この人が大野さん。大野サトシさん。新進気鋭の画家さんだよ。
ほら、原作の挿絵も描いてる。」
「そ、そんなんじゃ全然……。」
おいらが顔の前で手を振ってるのに、ショウ君は満足そうにうなずいてる。
おいらが恥ずかしいから、そんな顔しないで~!
SHOさんは笑いながら、おいらの背に手を添えて、前へと促す。
「大野です。」
名前だけ言って頭を下げると、背中に添えられていた手が、ショウ君のに変わる。
「大野はあまりこういう場に出ることがありません。
慣れないものですから、ご迷惑をおかけするかもしれませんが……。」
そこまで言うと、左側の一番後ろ……JUNさん?が、ニヤニヤしながら声を上げる。
「SHOさんのお気に入り~、だよね?」
「JUN!」
JUNさんがおもしろそうに、自分の前に座るSATOSHIさんを見る。
「言ってたね~、一時期SHOちゃん。」
手前に座るMASAKIさんも、口を隠しながら、ぐふふと笑う。
「SHOさんはわかりやすいですからねぇ。」
KAZUさんは手元のゲームから目を離さず会話に参加する。
でも、一瞬チラッと視線を上げ、前に座るSATOSHIさんを見る。
SHOさんの相手って……SATOSHIさん?
そう言えば、メンバーは知ってるって言ってたっけ。
「原作読んでる時から、すげぇ、俺好きって!」
JUNさんが、ついた頬杖を徐々に崩しながらニヤニヤする。
頬が引っ張られて歪むのに……カッコいい……。
さすがアイドル。
おいらがJUNさんに見惚れていると、背中に添えられたショウ君の手が、
おいらの脇腹を摘まむ。
ビクッと体を曲げてショウ君を見ると、ショウ君が、ダメって顔で細かく顔を振る。
「そうそう、今日の映画、もう見たの?」
SHOさんが、話を変えてくれる。
よかった~。
「いえ、まだ……。」
「じゃ、この映画の主役、知らないんだ?」
「はい。配役はチラシを描いたから知ってるんですけど……。」
主役のSATOSHIさんを見ると、スマホを見たまま顔も上げない。
「ほら、SATOSHI……。」
SHOさんに促され、ん?と顔を上げるSATOSHIさん。
ショウ君がちょっとムッとする。
挨拶に来てるのに、顔も上げないなんて失礼なやつだなって、そんな顔。
「いいよ~、俺は~。」
「何言ってんの。この映画の主役でしょ?」
SHOさんが無理やり腕を引いて立ち上がらせようとする。
「あ、いいです。もう行きますから……。」
おいらが言うと、仏頂面のSATOSHIさんが、立ち上がっておいらの前に立つ。
「俺も……あんたの絵、好きだよ……。」
ぼそぼそ話すその顔は、すぐに背けられちゃったけど、なんか……照れ屋さん?
「おいらも、SATOSHIさんのダンスも歌も大好きです!
重力を感じさせない動きに、目が離せなくなります。」
椅子に戻ってスマホに視線を移してるけど、照れ隠し?
頬が赤くなってる。
なんだか……可愛い。
「SATOSHI!そういうのが誤解されるんだよ?」
「いいんだよ。俺は。」
「よくない。」
言い争うようなやりとりに、ショウ君が口を挟む。
「あ、大丈夫ですよSHOさん、たぶん、俺達、誤解してませんから。」
ショウ君がにっこり笑う。
ショウ君もおいらと同じように感じてる?
「SATOSHIさん、話すのあんまり得意ではないんでしょう?
ウチのサトシもそうです。自分の気持ちをうまく伝えようとして、
言葉が出てこなかったり。」
「ショウ君……。」
だから、いつもショウ君に助けられる。
小学生の時からずっと。
「それはたぶん、我々のせいもあるんでしょうね?」
SHOさんが眉間に皺を寄せる。
「我々が、先にしゃべっちゃうから。」
二人で顔を見合わせて笑ったけど、そんなことない。
ショウ君にはいつも助けられてるもん。
そう思って声をあげたら……。
「「そんなことない!」」
おいらと一緒にSATOSHIさんも声を上げた。
「SHOにはいつも助けられてる……。」
また小さな声でボソボソしゃべる。
しゃべりベタなSATOSHIさんのせいいっぱいの言葉。
シャイで照れ屋で、仏頂面で……。
おおよそアイドル向きじゃない人。
でもアイドルを続けてるのは……。
ああ、SHOさん愛されてるね!