テ・アゲロ  the twins ⑧ -1- | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



「母さん、そんなこと言われても……。

 うん、わかってるけど……。

 だったら、その叔父さん、探してさ……。」

点滅する信号。

男は周りを気にしながら、小走りに交差点を渡る。

「俺だって、そんなに簡単に仕事辞められないし……。

 そうだけど……、だから……。

 もういいよ。電話切るよ?

 ……わかったよ。俺が叔父さん探すから……。

 うん、うん……。

 見つかったら、俺、このまま仕事続けるからね?

 ……そんな!

 ……わかった。なんとしても見つけて、連れてくから。

 うん……じゃ……。」

男は携帯を切ると、深い溜め息をつく。

思案深げに首を振り、ポケットに携帯をしまう。

ポケットに手を入れたまま、細い路地を歩き、ふと顔を上げると、

目の前のビルの小さな看板が目に入る。

「なんでも屋……。」

汗ばむ陽気に首の周りを撫で、躊躇しながらビルを見上げ、

1階にある、喫茶店に入って行く。

カランと音がしてドアが開くと、中はひんやりとして涼しい。

カウンターにはこの古びた店には似つかわしくない、赤いランドセル。

「いらっしゃいませ~。」

カウンターの中の店員が、にこやかに笑顔を向ける。

「お一人様ですか?」

「……はい。」

「では、窓際のお席へどうぞ。」

男は店員の示す方を見る。

窓際のボックス席。

一人で考えるにはちょうどいい。

男はボックス席に腰かけると、メニューに目をやる。

「ご注文は……。」

カウンターの中の店員が、男の席までやってくる。

背の高い細身の店員は、さわやかな笑顔で男を見下す。

男も釣られて笑顔を向ける。

「アイスコーヒーで。」

「アイスコーヒーですね。かしこまりました。」

店員が行こうとするのを、男の声が遮る。

「赤いランドセル……、お子さんがいらっしゃるんですか?」

「ええ、まぁ。」

店員が照れたように頭を掻く。

「その若さで……。」

「いや、若く見られることが多いですけど、そんなに若くないんですよ。」

「え?おいくつなんですか?」

「今年で……35です。」

男は明らかに驚いた様子で店員を下から上へ見定めて行く。

どう見ても二十代後半……。

ヘタすると自分と同い年に見える……。

男は店員を見上げ、つぶやくように言う。

「それでも……小学生のお子さんがいるということは……若い内にご結婚されて……。」

「いや……まぁ、結婚は……。」

店員が口を濁す。

結婚せずに子供……?

ひどい女に掴まって子供だけ押し付けられたのか?

なんて不憫な……。

男は声には出さず、同情するような視線を向ける。

「あ、なんか、勘違いしてませんか?」

「いや……悪くすると俺も同じようなもんだから……。」

「同じような……って?」

「俺も……田舎に帰らなきゃいけないかもしれなくて……。

 田舎に帰れば、なんだかんだと結婚させられて、

 あのかび臭い家から一生出られない……。

 俺、そんな人生、絶対嫌なんです!」

「はぁ……?」

「本当に田舎なんですよ。

 若い者はすぐに都会に出ちゃって。

 残ってるのは爺さん婆さんばかり。」

店員は男の口調に圧倒され、ただ頷くことしかできない。

「今の自由な生活なんて、ひとっつもない!」

「それはお気の毒に……。」

「それこそ、携帯なんて持って行ったら、神の祟りが~とか言われそうなくらいのど田舎。」

「それはちょっと、ど田舎とも違うような……。」

「結婚相手だって、占いで決められちゃうんですよ?

 そんなの現代であると思いますか?」

「それはひどい……。」

「そうでしょ?」

男は、ふぅと溜め息をつき、店員を見つめる。

「それを阻止するためには……叔父さんを探さないといけないんです。」

「……叔父さん?」

「そう……父さんの生き別れになった双子の叔父さん……。」

「双子の……。」

男は店員の表情を見逃すまいとじっと見つめる。

「この上の……なんでも屋さん、仕事の評判はどうですか?」

店員はにっこり笑って男を見返す。

「仕事は、できると思いますよ。

 必ず成功させるなんでも屋だから。」

店員の笑顔に、男がホッと胸をなで下ろす。

「ただ……そこそこお金はかかるみたい。

 何せ、会計が守銭奴だから……。」

「しゅせん…ど?」

店員は、慌てた様子で顔の前で手を振る。

「ま、まぁ、必ず成功させるんだから、高くはないのかな?

 とりあえず、行ってみたら?すぐ上だから。」

店員はそそくさとカウンターの中に戻って行く。

男は窓の外に視線を移す。

いくらかかっても……、田舎に帰るよりは……。

少しして、出されたアイスコーヒーにストローを差し、一口飲む。

「…………!」

男の顔色が変わる。

カウンターの中の店員が心配そうに男を見つめる。

「あ、あの……。」

男が店員を見つけ、ニコッと笑う。

「これ、めっちゃ美味しいです!」

店員は満足そうにうなずいて、布巾を手にすると、カップを拭いていく。

「そう言って頂けると嬉しいです。

 なかなかその味がわかる人がいなくって……。」

店員のカップを拭く手が早くなる。

男がストローを口にする姿を、店員は涙ぐみながら見つめ続けた。