Believe -9- | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



夜の仕事も続いている。

僕が開放されることはなく、毎晩あいつの寝所に行く。

ただ、隣で寝るだけの仕事。

あいつは僕をどうするつもりなのだろう?

縛りつけたいだけ?

僕がいつ、寝首を掻くかわからないのに。

それとも……。

隣に顔を向けると、いつものように、綺麗なあいつの寝顔が息と共に上下する。

長い睫毛が月明りで影を作る。

通った鼻筋のシルエットが、やけに儚げに見えて、思わず手を伸ばしかける。

グッと手の平を握り込み、自分の唇に当てる。

お前は何をしようとしている?

汚い大人になりたいのか?

こいつは聖職者でありながら、あんなことをしたんだぞ?

あんな……。

思い出して唇を噛みしめる。

あんな屈辱を……敵(かたき)であるこいつから受けたなんて……。

握り締めた手を広げ、上半身を起こすと、あいつに近づく。

あいつの首に両手を掛け、あいつの顔をじっと見て……ゆっくり指を伸ばしていく。

あいつはピクリとも動かない。

ただ、綺麗な顔が、安心したように寝息を立てている。

このまま、もう少し力を入れたら、敵を討てるんじゃないか?

父さんと母さんの……。

村の人達の……。

力を入れたいと思うのに、力の入らない指。

何を躊躇ってる?

こいつを生かしておく意味がどこにある?

あの焼野原を思い出せ。

立ち上る煙、転がる人々……。

全部こいつのせいだ。

こいつが……。

僕の指先にグッと力が入る。

あんなことまでされたんだぞ……あんなことまで……。

こいつは僕を辱め、侮辱した。

身分が低いから?

子供だから?

親がいないから?

そんな僕になら、何をしてもいいって言うのか!?

力を入れろ。

ほんの少しで全ては終わる。

父さんと母さんの敵が討てる……。

僕はじっとあいつの顔を見る。

何が起こっているのかこいつは知らない。

今、僕の指がこいつの生死を握ってるってことも。

全てが……、僕に委ねられている現実。

なのにこいつは何も知らず、何も気付かず、呑気に眠ってる……。

「……は、ははは…………。」

教皇の息子で枢機卿で。

贅沢な生活と、こいつを称える人々。

なんでも持ってるこいつが、今は僕の手の中だ。

僕の一存で、こいつは屍と化す……。

もう、永遠に綺麗な寝顔のまま、目を開けることもなく……。

「……どうした?……力を……入れないのか?」

僕は、ビクッと手を引きかける。

あいつの静かな声と同時に、瞼が開く。

真っ直ぐに僕を見る瞳。

グレーの瞳は、夜の闇の中で黒く光る。

「やればいい。お前にはその権利がある。」

あいつの手が僕の手首を掴み、グッと自分の首に押し付ける。

「うわっ。」

「ほら、力を入れろ。」

僕は慌てて、あいつの手を払い退ける。

同時に、首からも手が離れ……。

あいつは深い溜め息をつくと、上半身をゆっくり起こす。

「私の命、いつでもお前にくれてやる。

 やりたいと思った時にやれ。」

あいつは無表情なまま、じっと僕を見る。

蔑むでも、面白がるでもなく、ただじっと。

「ど、どうして……。」

僕は唾を飲んで、ぎゅっと手を握り締める。

「どうして、僕をここに置く?」

あいつは微かに笑って、体をベッドに戻す。

「どうしてだろうな……。私にもわからん。」

「わからんって……。」

あいつは両手を頭の下に入れ、天井を見据える。

「わからないものはわからない……。」

自分でも本当にわからないのか、クスッと笑う。

あいつの声……。

久しぶりに聞いた声は、やけに優しく聞こえて……。

僕の胸がぎゅっと締め付けられる。

そんな僕に気づいたのか、あいつが僕に視線を向ける。

「どうした?私に手を掛けたのはお前だぞ。

 なのに、どうしてお前がそんな顏をしている?」

「そんな顔って……?」

あいつはじっと僕を見たまま、静かに言う。

「泣き出す寸前の……子供みたいな顔だ……。」

あいつの手が僕に伸びる。

僕は……。

僕は、何も考えず……。

……その腕の中に……身を投げ出した。

あいつの首にしがみ付き、流れる涙もそのままに……。

あいつの手が僕を抱きしめ、背中を擦る。

僕は嗚咽を上げて泣いた。

なんで泣いてるのかわからない。

わからないけど……、涙が後から後から流れ出して、

自分ではどうすることもできなかった。

あいつの温もりが、余計に涙を溢れさせる。

「ショウ……。」

あいつが僕の名前を呼ぶ。

澄んだ声で、僕の名前を……。

あいつは僕が泣き止むまで、ずっと背中を擦り続けた。

僕は……泣くだけ泣いて、気付いたらあいつの腕の中で眠ってしまった。