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お役立ちとはいかないまでも、習ったことや気付いたことを書いていきます。

   月命日の法事の時、檀家のお婆さんがこんな事をお訊ねになられました。

「御院主さん、人に前世いうもん、おますんかいなぁ?」

   うちの宗派では前世のことはあまりいうことはありませんが、輪廻の有無や前世来世について訊かれる事が存外多いので、普段は、お訊ねの方には、このようにお答えする事が多いのです。

「輪廻転生とか、前世とかのことはようわかりません。世の中には、前世のことを細々と憶えてはる方もおますが、大概の方は前世は憶えておられまへんわなぁ。憶えてはれへんのやったら、仮に何度輪廻転生してても、一回きりの人生しかないのんとおんなじ事や思います」

    そのお婆さんにも同じ事を話しましたが、そんな言い訳めいた言い方も、聡明なこのお婆さんには納得していただかれる訳もなし、そこでお婆さんにこうお訊ねいたしました。

「お婆さん、何ぞその事で気にかかる事おましたんか?」

   お婆さんは、息子さんのお嫁さんのことをあまり良く思われていませんでした。兼業主婦と言いますか、お嫁さんは小学校の教員をされていました。家では家事は不得意、気は効かず、出勤中の育児の世話は、お姑さんとお舅さんに任せっきり。

「それで末の孫の面倒看てる時に、ついつい、お前のお母ちゃんはどうのこうのと嫁の愚痴を言うておりましたんや。そしたら孫が遊んでたおもちゃ横に置いて、

『おばあちゃん、ぼくお母ちゃんのこと悪いと思たことないけど、そんなに悪いとこあるんやったら、どこが悪いか、一つづつ言うてみ』

    はっとしたいうか、胸が冷えましたわ。

『お母よ、わし兄ィの嫁さんのこと悪いと思たことないけど、そんなに悪いとこあるんやったら、どこが悪いか、一つづつ言うてみ』

    戦死した息子が手すさびに細工物彫ってるときに、息子の兄嫁の愚痴を言うてましたんや。そしたら息子が細工物と道具横に置いて、……ほんまに胸が冷えましたんや。

    どうか変わってきて欲しいという思いだけで、戦死した息子の名前の一字を、当の親の意向御構いなしに私と爺さんの一存で言うんか名前につけた孫、その時孫が私に話した幼声、戦死した息子の声と重なって聞こえました。お恥ずかしい話してしまいました」

    あとなんとお答えして良いものやら、口から出た言葉は、

「そういえば戦死された息子さんが一本の木から分銅付きの鎖を彫り出しておられたのを見せていただいた事がありましたな。お孫さんがその手を持って生まれて来てはるのかどうか、もう私の年では確かめようもないですわ」

    余計な事を言ってしまったと後々慚愧懺悔、お恥ずかしい次第です。