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お役立ちとはいかないまでも、習ったことや気付いたことを書いていきます。

    先ほどふと思い出した、学生時代の計量経済史の先生の授業中のお話。

 その先生がヨーロッパから大学院に留学していた学生さん、かなり可愛いお嬢さんだったらしいですが、その方に頼まれて近畿地方の農村の見学に行ったそうで、はじめ、彼女は、小規模な区画の農地や、小さな耕運機やコンバインなどをみて、おもしろがっていたそうです。彼女の国の大規模な農地や大型農機具から比べて、あまりにも非効率に見えたようです。

    でもしばらくすると彼女は笑わなくなって、真剣に耕作地を見ています。そしてこんな質問をしたそうです。

「どの耕作地にも石が混じっていないのはどうしてですか?それに土が黒々としているのは何故ですか?」

それで先生は、

「新しい開墾地ならともかく、日本では千年、いや二千年近くの歳月をかけて、農家の人が耕作地から一つ一つ石を取り除いていったし、土壌も永い歳月をかけて土壌改良していって、今のような農地にしてきた歴史があるんですよ」

と答えたそうです。

   これを聴いたのは四十年前のお話です。千年二千年かけて耕し、石を取り除き黒々とした肥沃な耕作地を作り、均田法が施行された律令制時代の条里制の跡を残していたんですね。先にお話したように、先日縁あって北陸地方の田園を観て、何か懐かしくなったのです。 

 もう開発され尽くして失われてしまった我が故郷の昔の姿と情景が妙に重なり、当の故郷はたまさか帰っても里山は跡形もなく造成地となってしまい、いつ土砂崩れしても不思議でない脆い地盤に似たりよったりの危うげな家々が立ち並び、川はコンクリートで底まで固められ、巨大なドブ川と成り果てしまった有様は、個々の捉え方には差があるとして、わたしには既に喪失感だけが疼く異世界、産土神様には申し訳ないですが、地の縁が切れてしまったと思いました。

 その日は雪国ではありがたい小春日和に恵まれ、子供の頃見た近郷近在の景色と見紛う産土神の杜が、柔らかな日差しの中に蒼々と茂り、半世紀前の故郷を見せられたような気がしました。

 やがてはこの景色も変わっていくのでしょうか?

 存えてその有様を見ることがありませんようにと、心の中でそう願いました。