[Netflix映画]
よく見渡してみれば、
“同じ星の人” っているんだね
頭のネジ、飛んでないよ
ちひろさん。
空っぽなんかじゃない、
透明で清いってことだよ。
(ちひろ)
昔ね
お店に来たお客さんが言ってたの
“僕たちは みんな 人間っていう
箱に入った宇宙人なんだ” って
*
(寺尾)
“同じ人間だ” なんて
よく言うけどさ
一人ひとり みんな
やってきた星がばらばらなんだから
分かり合えないのが
当然なんだよ
(ちひろ)
家族でも?
恋人でも?
友達でも?
(寺尾)
そう
だって しょうがないじゃない
そもそも別の星の人なんだから
そう考えたほうが楽じゃない?
*
(べっちん)
期待しない
人にも自分にも期待しないって
決めたら
少しだけ楽になったんだ
とある漫画に書いてあった
だから ちょっと怖いよ
仲いい人とかできるの
また1人になった時に
寂しくなる
でもオカジと会えて
よかったよ
*
“他人も家族もないんだよ”
*
(ちひろ)
あ~
今 無理
水の底にいるから
(内海/店長)
フッ
しょうがねえなあ
じゃあま しばらく沈んどけ
人の体は浮くようにできてっから
(ちひろ)
フッ
それって死んだら
浮かぶって話?
(内海)
いや
生きてようが死んでようが
浮かぶでしょ
もがかなければ浮かぶんだよ
ジタバタするから沈むんだって
*
(ちひろ)
同じ星ではないの
うん
それは絶対 違う
でも私のことを好きでいてくれて
信頼してくれて
それでいて
体を求めてこない男
それって何なんだろうって
ずっと うまく言葉にできなくて
でも その答えがね
やっと見つかった気がするの
(内海)
え? えっえっ何 何の話?
(ちひろ)
店長って
私のお父さんだったんだね
*
(ちひろ)
ねえ
男女の間には
恋愛しかないの?
そんな単純なもの?
*
(内海)
店では
いろんな女 見たけど
あいつが いちばんくせ者だったな
つかみどころっつうもんが
全然ないんだ
何つうか 空(から)っぽっていうのかさ
まっ 変な言い方だけど
幽霊みたいな
初めて あいつが店に来た時
ま~ ずいぶん場違いなヤツが
来たなと思ったんだわ
だって
普通のおとなしい子だったから
ただな
足元 見たら
尋常じゃなく靴が汚れてるんだよ
もうボロッボロで
もし うちの店のドアを
ふらっと開けてなかったら
この子は もう
この世に
いなかったのかもしれないなって・・・
*
(ちひろ)
あの時ね
ああ この人は
私と同じ星の人なんだって思った
人生で2人目だったの
そう思えた人
*
(ちひろ)
もし多恵ちゃんが
私のお母さんだったら
私は どんな大人に
なってたんだろうなあ
(多恵)
そうねえ
でも
今より すてきな人には
なってないんじゃない?
私はね
今のあなたが とっても好きよ
*
(多恵)
どこか遠くに行こうかなって
思ってる?
もういいんじゃない?
どこにも行かなくても
あなたなら
どこにいたって
孤独を手放さずにいられるわ
じゃあ またあした
(ちひろ)
またあした
(映画『ちひろさん』より抜粋)