多摩動物公園(東京都)昆虫園飼育展示係の田畑邦衛さん(38)が、コオロギに
犬の芸「お手」を覚えさせることに成功した。

 訓練の様子を収めた動画が、同公園のホームページで公開されている。

 田畑さんは2012年、コオロギが好きな水滴をご褒美に訓練し、ミニチュアの垂
れ幕のひもを引く芸を覚えさせることに成功。同じ要領で、指先をコオロギに見せた後、ご褒美を与えることを繰り返した結果、ハイタッチのような「お手」をするよう
になった。

 コオロギは3~4日で芸を覚えるといい、「意外と知られていないコオロギの学習
能力の高さを通して、昆虫全体に興味を持ってもらえれば」と田畑さん。

(2014年3月14日07時03分 読売新聞)



アフリカゾウは、その大きな耳で人間の声を聞き分け危害を加える人間を識別し、危機を回避する能力を備えている-。こんな研究結果が12日までに、米科学アカデミー紀要で発表された。(SANKEI EXPRESS)

 ゾウを狩猟対象としてきたマサイ族の男性の声には反応を示し防御態勢に入る一方で、マサイ族の女性や子供、狩猟をしないカンバ族の男性の声を聞いても反応を示さなかった。高い知能を持つゾウがマサイ族との闘いの中で身に付けた生存能力だという。だが、その能力も、象牙を狙う自動小銃を持った現代の密猟者に対しては、「まったくの無力だ」と、科学者たちは嘆き悲しんでいる。


女性・別部族は無視


 「マサイ族とカンバ族の男性が、それぞれの言語で話した同じ意味の言葉を聞き分けたということは、ゾウが異なる言語を識別している可能性がある」

 研究論文の共同執筆者である米コロラド州立大学の行動生態学者、グレーム・シャノン博士は、驚きを隠さない
 「おい、あっちを見ろ。ゾウの群れがくるぞ」。フランス通信(AFP)などによ
ると、研究グループはケニアのアンボセリ国立公園で約2年間にわたり、こう話す人間の声をゾウに聞かせ続けた。47家族の数百頭を対象に毎日数時間、約50メートル離れた場所からスピーカーで声を流し反応を観察した。

 その結果、マサイ族の成人男性の声を聞くと、ゾウたちは一カ所に集まり、匂いを
嗅ぎながら子供を守るようにして遠ざかっていった。一方、マサイ族の成人女性や子供のほか、農耕民族のカンバ族の成人男性が異なる言語で話す声には反応を示さなかった。一度、手違いでシャノン博士のアイポッドに入っていた英ロックバンド、ダイアー・ストレイツの曲を流してしまったことがあったが、それにも全く無反応だったという。

 こうした反応の違いは統計的に明確で、「危害を加えるグループと、そうではない
グループを明確に区別している」と結論付けた。


抑揚などで判断?


 異なる言語を聞き分けたことについて、言葉を理解しているわけではなく、声の抑
揚や母音などから歌っているように聞こえるマサイ族の言葉と、そうではないカンバ族の言葉を区別しているのではと推測。
さらに声を聞くと、すぐに逃げ出すのではなく用心深く立ち去っていることから、
「マサイ族は狩りの時は静かにしており、話をしているときは狩りの最中ではないと
いうことまで理解している可能性がある」と指摘している。

 牛を放牧しながら移動して暮らすマサイ族は水場や放牧地をめぐり対立関係にあるゾウを狩猟の対象としてきた。シャノン博士は「予測できないマサイ族の行動に対応するために身に付けた能力だ」としている。

 ただ、高い危機回避能力を会得したアフリカゾウたちも、象牙を狙う現代の密猟者からは逃げられず、2012年には約2万2000頭が殺されたという。

 英サセックス大学の行動生態学者カレン・マッコーム博士は、米ナショナル・ジオ
グラフィック・ニュース(電子版)にこう言って嘆いた。

 「残念ながら、ゾウたちは自動小銃を使う密猟者のような危険な人々には順応できない」